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キーワードは『多様性』!~『効率』と『多様性』を備えたオフィスづくり(後編)~

建築家が考える、これからのオフィスVol.4

キーワードは『多様性』!~『効率』と『多様性』を備えたオフィスづくり(後編)~

2018年09月28日掲載(2024年04月12日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

建築家の成瀬友梨氏と猪熊純氏に、これからのオフィスデザインの在り方について伺うインタビュー連載4回目。
前回は、限られたスペースを『重ね使い』することや、利用する人を想定したうえで『効率化』を図ることの重要性について伺いました。
『効率と多様性を備えたオフィスづくり(後編)』となる今回のテーマは『多様性』。オフィス改革が注目を集める中、建築家のお二人は「オフィスに多様性を持たせることが、いま、最も盲点になっている」と語ります。オフィスの多様性とはどういったことなのか、具体的に伺ってみました。

成瀬・猪熊建築設計事務所の建築家:成瀬友梨氏(右)と猪熊純氏(左)
成瀬・猪熊建築設計事務所の建築家:成瀬友梨氏(右)と猪熊純氏(左)

目次

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複数人が"肩書きに関係なく"交流できる空間が知的創造性につながる

――(連載第1回目で)オフィスを変えるときのポイントとして『環境的多様性を確保すること』が大切とのことでした。具体的にどういったことなのか、教えていただけますか?

猪熊
環境の多様性とは『さまざまな質の場所』があることです。説明する際、よく用いているのが以下の図です。

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猪熊
縦軸が人数『ひとり/複数人』、横軸が空間『閉じる/開く』を示しています。4つのゾーンに分けられており、オフィスに限らずどんな建築・空間であっても、いずれかのゾーンに落とし込むことができます。ひとつの施設の中のさまざまな意味を持つスペースが、この図に"偏ることなく"点在している状況が、『多様性がある環境』であり、ひいては利用する方が居心地の良さや使い勝手の良さを感じることになります。

――まずは図の上部、すなわち『複数人』のゾーンだと、オフィスでは具体的にどんな空間が考えられますか?

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成瀬
『複数人/開く』が壁などの仕切りがないオープンな打合せスペースやイベントスペースのような場所。『複数人/閉じる』は、会議室やプロジェクト室などです。喫煙ルームもここに属しますね。
デンソーさんの場合は、大小さまざまな打合せ・会議スペースを完全にクローズドにできるものから、少し囲われているもの、完全にオープンなものと数種類用意しました。たとえば社外秘の情報を扱う会議であれば、クローズドの会議室を使う。落ち着いて話したいけれど情報のセキュリティレベルが高くない場合は少し囲われている打ち合わせスペースを使う。コーヒーを飲みながらカジュアルに話したい場合は丸テーブルを囲むスペースを利用するといったように、『複数人/閉じる』『複数人/開く』ゾーンは『閉じる度合い』『開く度合い』にバリエーションをもたせています。

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デンソー名古屋オフィス/カフェゾーン。コーヒーを飲みながら、窓際のボックス席や丸テーブルの席でリラックスできるスペース。

猪熊
壁で囲まれ、利用するたびに予約が必要な会議室しかない環境だと、ちょっとした話し合いをしたい際には面倒に感じるかもしれません。当初からデンソーさんが求めていた『ピットイン感覚で使える』というニーズからも少々離れてしまいます。その点、空いてさえいれば誰でも利用できる丸テーブルがあれば「いま、ちょっとだけ時間ある?」「少しならいいですよ」と手軽さもあり、コミュニケーションの機会も増えるといえます。そこでブレストのようなことをしていると、もしかすると近くにいる方や通りかかった人が何かアイデアをくれる可能性だって秘めています。

――気軽に使えるエリアがあることが、コミュニケーションの活性化につながるということですね。

成瀬
気軽に使えるようなカジュアルさは、働く場所であるオフィスとは相反すると思われがちですが、逆に大切だなと思っています。従来の会議室だと、社長はここ、役員はここ、部長はここ、と暗黙の了解で座る場所が決まっていたりしますよね。それは個々の肩書ありきの空間です。そうではなく、社内に"肩書きが外れる場所"があるべき。上司と部下の垣根が良い意味で外れる場所こそが、コミュニケーションを活性化させたり、上意下達のルーティンワークでは生まれない知的創造性の発端になると思うからです。かつては喫煙ルームも"肩書きが外れる場所"として機能する傾向がありましたが、喫煙というフックがなくても、オフィス内で確保すべきスペースだと思います。

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デンソー名古屋オフィス/セキュリティ内のオフィススペース。ホワイトボードの壁面の裏側は収納スペースとなっている。

オフィスづくりの盲点になりがちな『一人で集中できる空間』

――図の下部にあたる『ひとり』のゾーンも、オフィスづくりにおいて大切となりますか?

成瀬
はい。実はとても大切なのですが、昨今のオフィスデザイン改革においては"オープンであること"が是だという傾向が強く、要望を集めていくと、そのほとんどが『複数人/開く』ゾーンに属することばかり...という状況も少なくありません。そのままオフィスづくりを進めると、『複数人/開く』の空間ばかりになる。一人で黙々と集中して作業したいときには『ひとり/閉じる』ゾーンを求め、結局オフィスから抜け出してカフェに行ってしまう...といったことが起きてしまいがちです。

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猪熊
『ひとり/閉じる』は"こもれる場所"。一方で『ひとり/開く』は、いわゆる普通の執務空間です。開いているのに単独での業務で、あまり居心地は重視されていません。既存のオフィスは、こうした『ひとり/開く』ゾーンと、クローズドな会議室などの『複数人/閉じる』というゾーンのみで形成されていることがほとんどで『ひとり/閉じる』『複数人/開く』が足りていないと思います。

――デンソーさんのオフィスでは、具体的にどのようにして『ひとり/閉じる』を確保しましたか?

成瀬
『STUDY』と銘打った、パーテーションで囲まれた空間をつくりました。ここはオープンな執務エリアと隣接しているので、パーテーションの高さにこだわる必要がありました。(以下の写真を参照ください)これ以上高いとクローズド感覚が強まり、圧迫感が生じてしまう。逆に低いと、執務エリアからこちらへ移動する意味がなくなってしまう。執務エリアにいる人間にとっても「集中している人を邪魔してはいけない」という心理が働き、小さなストレスになってしまいます。

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デンソー名古屋オフィス/執務デスクのすぐ横には、一人で集中して仕事をしたり、くつろいだり、昼食を食べられるスペースなど複数の場所を用意した。

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デンソー名古屋オフィス/窓際の明るいスペース。サインで用途を示している。

猪熊
適切な間仕切り、囲いを使って空間の変化をつけることは、中小企業などスペースが限られている際に有効です。加えて意外と大切だと位置付けているのが、その場所のネーミングですね。

――『場所に与えられたネーミングが大切』とは、どういった意味でしょうか?

猪熊
デンソーさんの場合は、『STUDY』『LIVING』など、会社とは縁遠い言葉をあえて用いました。これまでのオフィスらしからぬ自由な空間で在り続けることで、自由な発想を促す知的創造空間になりうると感じているからです。
たとえば『コミュニケーションルーム』と名づけられた場所があったとします。これはオフィスに限らず、集合住宅などでもありがちですよね。ただ、よく利用されているかというと、逆なケースが多いと思います。名前がつくことによって「ここでコミュニケーションを取ってください」と命じられるニュアンスが生じるからです。「一人で休憩したらダメなの?コミュニケーション必須なの?」と躊躇する方もいるかもしれません。命じられることでイノベーションが生まれるかというと、そうではありませんよね。
働き方改革やイノベーションのためには、社員の方々が自発的かつ能動的に働ける環境があってこそ。名前に縛られていない、さまざまな質の空間がオフィス内にあること、すなわち環境の多様性を備えることが、オフィス改善においてはとても大切だと思います。

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