2022年1月から改正電子帳簿保存法が施行されました。各企業は要件を満たすシステムを導入した上で、電子帳簿保存法に対応せねばなりません。ここでは、電子帳簿保存法に適したシステムを導入しない場合の罰則や、適用対象の帳簿・書類、罰則を避けるための要件を解説します。電子帳簿保存法に違反しないための対応方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
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電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを導入しない場合の罰則
電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを導入しない場合に、企業に生じる恐れのある罰則を解説します。
1.青色申告承認取り消しの可能性
電子帳簿保存法に違反すると、青色申告の承認を取り消される恐れがあります。承認が取り消されると、最大65万円の特別控除が受けられなくなり、欠損金の繰り越しも認められません。加えて罰則ではありませんが、承認が取り消されると企業としての信頼が損なわれます。
ただし、国税庁が2021年7月に公表した資料には、「電子帳簿保存法に違反しても、直ちに青色申告の承認が取り消される訳ではない」との記載がありました。税務調査における説明や提出する資料、取引先から得られる情報などによっては、承認を取り消されない場合があります。
2.会社法による過料
電子帳簿保存法に違反すると、会社法に基づき100万円以下の過料を徴収される場合もあります。過料とは、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収する罰則です。
会社法第976条には、100万円以下の「過料に処すべき行為」がまとめられています。帳簿・書類が規定に則った方法で記録・保存されていない場合、虚偽の記帳や保存があった場合には、過料の対象となります。
3.追徴課税や推計課税
電子帳簿保存法に違反すると、追徴課税や推進課税も科される恐れがあります。追徴課税とは、本来の納税額との差額を支払うことです。推計課税は、税務調査に非協力的な納税者について適用されます。また、推計課税の額は、税務調査から推定されます。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法上の概要について、3つの区分に触れつつ解説します。タイムスタンプや電子取引の猶予期間についても理解しておきましょう。
電子帳簿保存法上の3つの区分
電子データによる保存は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分に分かれます。電子帳簿等保存は、パソコン(PC)で作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する際に適用されます。電子帳簿等保存の適用対象となる帳簿・書類の一例を、以下に示しました。
<電子帳簿保存>
・仕訳帳
・総勘定元帳
・経費帳
・売上帳
・仕入帳
・損益計算書
・貸借対照表
紙で受領した書類・自社にて紙ベースで作成した書類は、スキャナ保存で電子データ化します。スキャナ保存の適用対象となる書類の一例を、以下に示しました。
<スキャナ保存>
・見積書
・注文書
・契約書
・納品書
・検収書
・領収書
・請求書
電子取引とは、メールなどで電子的にやり取りした取引情報を電子データのまま保存することです。電子取引の適用対象となる書類の一例を、以下に示しました。
<電子取引>
・見積書
・契約書
・領収書
・請求書
基本的にタイムスタンプが必要
タイムスタンプとは、電子データが作成された日時を刻印する技術です。企業から見て第三者に当たる特定の事業者のみが発行できるタイムスタンプが刻印されることで、刻印された日時から現在まで内容が改ざんされていないことを証明する、信頼性の高い電子データとなります。
スキャナ保存や電子取引に関するデータには、基本的にタイムスタンプが必要です。ただし、2022年1月からの改正電子帳簿保存法では、タイムスタンプに関して要件緩和がなされました。電子データの訂正や削除履歴が残る、または訂正や削除ができないシステムを利用する場合は、タイムスタンプが不要となります。
2023年12月末までは電子取引の猶予期間がある
電子取引については猶予期間が設けられており、2023年12月末までは取引情報の紙への印刷・保存が認められます。ただし、業務フローの見直しには時間がかかるため、早急に電子帳簿保存法に対応したフローを検討しましょう。
取引情報は、経理部門だけではなく営業部門や製造部門など複数の部門が受け取ります。部門間をまたいで申請・承認がなされるため、業務フローを整理しないと混乱が起きると考えられます。
参考:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令要旨|財務省
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電子帳簿保存法に適したシステムの導入で注意すべき3つの要件
以下の要件を守らない企業は罰則を受ける恐れがあります。システムの導入時に注意すべき要件を解説します。
1.スキャナ保存の要件
スキャナで書類を読み取る際には、解像度が200dpi相当以上、赤色・緑色・青色の階調がそれぞれ256階調以上(24 ビットカラー)などの要件があります。ただし、書類区分で重要書類に当てはまらない「一般書類」は白黒階調(いわゆるグレースケール)での保存が認められています。具体的には、見積書・注文書・検収所など、資金や物資の流れに直結、連動しない書類がこれに該当します。スキャナ保存について、詳しくは以下のサイトを参考にしてください。
2.真実性の要件
電子帳簿保存法における「真実性」の確保とは、電子データが改ざんされないように対策した上で、オリジナルのデータを保存することです。真実性を確保するためには、以下の要件のいずれかを満たす必要があります。
・タイムスタンプが付与された書類を受け取る
・受け取った書類に、自社でタイムスタンプを付与して保存する
・電子データの訂正や削除履歴が残る、または訂正や削除ができないシステムを利用する
・電子データの訂正削除を防止するためのシステム関係書類を備え付ける
3.可視性の要件
電子帳簿保存法における「可視性」の確保とは、必要なときに即時表示、出力ができるよう、検索可能な状態で電子データを保存することです。かつ、表示や出力をした際に、解像度や階調が適切でなければなりません。可視性を確保するためには、以下の要件のすべてを守らなければならない、ということになります。
・PCのディスプレイのような見読可能装置を備え付ける
・電子データについて検索機能を確保する
自社で開発したシステムを使用する場合は、電子計算機処理システムの概要を記載した書類も備え付ける必要があります。
電子帳簿保存法に違反しないための対応方法
上述したように、電子帳簿保存法に違反した企業には罰則が科されます。ここでは、違反を避けるための対応方法を解説します。
1.電子データの保存方法を決める
電子帳簿等保存については、システム上でそのまま保存して構いません。一方、スキャナ保存や電子取引については、タイムスタンプの付与を検討した上で自社に適した保存方法を選ぶ必要があります。上述した内容と重複しますが、スキャナ保存や電子取引では以下の4つの保存方法から、選択することができます。
・タイムスタンプが付与された書類を受け取る
・受け取った書類に、自社でタイムスタンプを付与して保存する
・電子データの訂正や削除履歴が残る、または訂正や削除ができないシステムを利用する
・電子データの訂正削除を防止するためのシステム関係書類を備え付ける
2.電子データの保存場所を決める
電子データの保存場所は、「真実性」と「可視性」の要件を満たす必要があります。証憑の保存が可能なクラウドを活用したサービスやシステム、または自社サーバ内の専用フォルダに電子データを保存しましょう。なお、証憑とは、取引や契約が行われたことを証明する書類です。契約書や納品書、請求書などが証憑として挙げられます。
3.業務フローや導入する電子帳簿保存法に適したシステムを決める
紙で受け取っていた書類の申請・承認といったワークフローを決めましょう。紙のままでも申請・承認・保管は可能です。しかし、オンライン上で申請から承認まで実施できることで、紙よりも電子データの方が、フローがスムーズです。加えて、電子データ化すれば書類を探す手間が省けて、業務効率化にもつながります。電子帳簿保存法に適したシステムについては、のちほど詳しく解説します。
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電子帳簿保存法に適したシステムを導入する方法
電子取引だけではなく、電子帳簿等保存・スキャナ保存にも対応できるサービス / システムを導入してください。電子帳簿保存法上の3つの区分は、それぞれ要件が異なります。また、導入するシステムにより、取り扱える書類や帳簿も変わります。
「Microsoft 365 with KDDI」は、電子帳簿保存法に適したクラウドサービスです。例えば、真実性の要件については、SharePointのバージョン履歴や、コンプライアンスの監査機能などで対応できます。SharePointの検索機能を活用し、あらかじめプロパティに「取引年月日」「取引金額」「取引先」「書類種別」の項目を追加し、保存時はこの項目の情報を入力することで、可視性の要件も満たすことがでます。
まとめ
電子帳簿保存法に違反した企業には、青色申告承認の取り消しや、過料などの罰則が科されます。速やかに、電子帳簿保存法に適したサービスやシステムの導入を検討しましょう。
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