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ICT教育導入の成功へ 〜iPad活用方法を学ぶ〜|オンラインセミナーレポート

教育・ICT

ICT教育導入の成功へ 〜iPad活用方法を学ぶ〜|オンラインセミナーレポート

2021年02月25日

12月17日、中学校・高等学校向けに授業におけるiPadの活用事例を紹介するオンラインセミナー「授業におけるiPad活用事例のご紹介」が開催され、年末の忙しい時期にもかかわらず50校以上が参加した。

今回ご協力いただいたスピーカーは、こちらのお2人

フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役 為田 裕行氏

フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役 為田 裕行氏
東京都における教師への教材開発支援に関わり、現場への教育ICT導入の可能性を模索。
小学校~大学の教壇に立つと共に、学校向けの教育コンサルテーションを行っている。
共著『学校アップデート 情報化に対応した整備のための手引き』(2020年さくら社)

愛光中学・高等学校(学校法人 愛光学園) 進路部長 社会科教諭 和田 誠氏

愛光中学・高等学校(学校法人 愛光学園) 進路部長 社会科教諭 和田 誠氏
2017年度の中学1年生から1人1台のiPadを導入
ロイロ認定ティーチャー/シンキングツールアドバイザー/ロイロ超スクール校長
Google認定イノベーター/GEG Matsuyamaリーダー

※本記事は2020年12月17日時点の内容であり、現在の状況とは異なる可能性がありますのでご了承ください。

目次

前半パート「授業におけるiPad活用事例紹介」

最初に登場したフューチャーインスティテュート株式会社の為田裕行代表取締役は、教材の開発や学校向けのコンサルテーションを行っている。教員研修も数多くしている為田氏は、いつも教員に「教育×ICTは『魔法の杖』ではない」と最初に言っているという。それぞれの学校でICTをどう活用するかを見極め、ICTを使うところと使わないところを判断するという教員にしかできないことを考えてほしいと話した。

為田氏は、文部科学省が進めるGIGAスクール構想でICT教育に求めている「個別最適化」と「創造性を育む」という2点について、導入事例を用いてわかりやすくスピーチしてくれた。

個別最適化:デジタルドリルの活用による利点

為田氏は、教育ICTの導入事例として「デジタルドリル」と「紙のドリル」の違いを説明。AIを使ったデジタルドリルであるQubena(キュビナ)と、紙とデジタルを融合させた学習サービスLibry(リブリー)を取り上げ、デジタルドリルの利点を話した。紙のドリルは、全員が同じ問題を解くのに対し、デジタルドリルは、生徒一人ひとりがそれぞれのレベルに合った問題を解くことができる。回答を間違えると、類似の問題やレベルを下げた問題を、デジタルドリルが出してくるからだ。

教育ICT導入事 例学びの個別最適化

千代田区立麹町中学校などの数学の授業では、カフェテリアのような所に生徒が集まり、教員は「それぞれやるべきところをやってください」といった形でデジタルドリルを使った授業が行われるという。そして、ある予備校がAIを用いた学習システムを使用した結果、習得に掛かった時間が平均で5分の1程度に短縮できたという例を取り上げ、為田氏は、「余った時間を活用し、さらに発展させた学びが可能になる」と話した。また、デジタルドリルを利用すると、多くの生徒が間違ったところや、時間が掛かっていた問題などまでデータで把握することができるため、これまで以上に生徒に習得させるための対策を練ることが可能になるという。

創造性を育む:従来の教育でダメだったことも 未来の学びに

これまで教育現場では良くないとされていたことが、より良い学びにつながるという興味深い事例を、為田氏は示してくれた。

奈良女子大学附属中等教育学校では、教室で行われる国語の授業でも教員がチャットで出題することがあるという。オンラインで行われる授業の利点は、他の生徒の回答を見ることができるため、わからない生徒が答え合わせまで待っているようなことがなくなったり、間違えに早く気づくことができたりするため、これまでよりも生徒の手が動くようになるとのこと。他の生徒の回答を見るという行為は、これまでは「カンニング」とされるダメな行為だったが、全員の回答が見られるというオープンな状況は、学びには有効であるという。

教育ICT導入事 奈良女子大学付属中等教育学校

また、静岡県立掛川西高等学校では、世界史を英語の資料を読んで発表する際、Google翻訳を利用しているという。為田氏は、「最近の高校生はGoogle翻訳で調べるのが普通になっていて、うまく翻訳できていないところを、どうしてこのような日本語に翻訳されたのかを考えることも勉強になる」と話した。

教育ICT導入事 静岡県立掛川西高校

このような例から為田氏は、「社会ではこのようなデジタルの使い方が当然となっている。先生は、学校のなかでだけ使うスキルを身に付けさせたいのではないと思う」と話し、今の生徒たちが社会に出たときにデジタルに触れないことはないため、学校で経験させておくことが必要だとまとめた。

学校はICTを導入して目指すものを明確化することが必要

為田氏は、授業でのiPad活用例の他にも、「学校がICTを導入する上で重要なこととして、まず何のためにICTを導入するのかを明確にすることが重要」と話した。ICTを導入する理由を9つの型に分類し、「自分の学校のために、まずはこれに取り組もう」という考えを持つことが一番いいという。

教育ICTの利活用9類型

為田氏は、「最初から9つ全部やろうとしては失敗してしまう。私は2〜3個からスタートするのが一番いいと思う」と話し、自分たちの学校のために考えて決めるべきとした。これまでは、ICTは先生たちの授業支援という側面が強かったが、1人1台のタブレットの実現により児童・生徒がいつでも使用できる状況となり、表現や思考手段の拡張へと軸がシフトしているという。為田氏は、「授業支援だけで満足していては絶対にうまくいきません。子どもたちの表現や思考手段の拡充につなげていかなければいけない」と話した。

最後に為田氏は「デジタル」について、「メガネと一緒で、能力を拡張してくれるものだと思う」と話し、学校は子どもたちにアナログとデジタルの両方を体験させることが必要で、アナログの方がいいものはアナログで、デジタルの方がいいものはデジタルで学べるよう、生徒が選べる状況を作って欲しいと訴えた。

後半パート「愛光学園の教育ICTへの取り組み」

後半のスピーカーは、全国でも有数の進学校である愛媛県の愛光中学・高等学校の和田誠教諭。愛光中学・高等学校では、2017年度から中学1年生に1人1台のiPadを導入し、現在は中学生全員がiPad、高校1年生がChromebookを使って学習に取り組んでいる。和田教諭は、Googleの教育者向け「認定イノベーター」に認められ、授業支援クラウドのロイロノート・スクールを効果的に活用している「ロイロ認定ティーチャー」にも選ばれている。

和田教諭は、「参加された方々が、ICT教育やってみようかな、やれそうだなと、ちょっとした勇気を持てるようになればいいと思う」とし、学校にICTを導入するにあたり注意することとして、「学校ごとに文化や風土の違いがあるので、ICT先進校のマネをしても上手くいかない。私たちもそれでけっこう失敗したところもある」と話した。
ただ、多少の失敗でICTはダメだと考えるのでなく、自分たちにあった使い方を模索しリカバーすることが重要だという。そして、前半の為田氏とまったく同じ意見として、「ICTはあくまで手段であり、導入して授業で使うことが目的ではない」と、児童・生徒につけたい力をつけさせることが最大の目的であると話した。

ロイロノート・スクールの活用法

和田教諭は、GIGAスクール構想の目的をまとめると以下の6つになると説明。

GIGAスクール構想の目的

これらの目的を横断的に補えるツールとしてロイロノート・スクールを紹介し、参加者に実際に体験してもらいながら進行を始めた。
和田教諭が、カードに自己紹介を記入し全員に送信すると、参加者全員が見られる状態になる。提出箱機能を使えば、提出期限も設定でき、参加者が提出した自己紹介を共有すれば、全員がみんなの自己紹介を見ることができる。
この機能は、これまであまり発言しなかったような生徒がどのように考えているのかがわかるという効果もあるという。さらに、選択した数人の回答だけを表示し画面配信をすれば参加者の画面に強制的に見せることも可能だ。

ロイロノート・スクールは、これまで使っていたプリントなどもPDF化すれば使え、写真や音声ファイルも扱える。シンキングツールなども用意されているため、生徒が考えをまとめ提出や発表まで一貫してできる。最近は、アンケートツールも追加され、簡単に使うことができることや、テストツールもあり選択肢形式の問題などを作って出すこともできると教えてくれた。ロイロノート・スクールは、現在も機能が進化しているため使い方の幅も広がっているという。

また、ロイロノート・スクールは、教員の働き方改革にも効果があり、紙で配布していた教員の連絡事項を、ロイロノート・スクールでの共有に切り替えた学校もあるという。愛光中学・高等学校でも、連絡事項をデジタル化したため教員の朝の会の時間が大幅に短縮され、朝の会を廃止する方向で検討しているほど働き方の改善につながっている。和田教諭は、「ICT化により教員の働き方改革が進めば、教室で生徒と向き合う時間が増加し、教育の質の向上につながる」と話した。

これからの理想の教育にこそICTが必要

最後に、和田教諭は、一番言いたいこととして、「個人の理想として、教育は、子どもたちが自ら考え、必要な力を身につけ、自分で走っていくことが、最大のゴールになるのではないかと思っている」と話した。その理想に近づくと、教員の仕事は、自分で走っていく生徒をサポートすることへと変化していく。和田教諭は、「これからの理想の教育にとってICT教育がピッタリあてはまっている」と締めくくった。


<取材協力>
フューチャーインスティテュート株式会社
1999年設立。教室運営、クラス運営、教育監修、教育ICTコンサルティング、システム開発など、多岐にわたる教育支援を行っている。
東京都港区六本木7丁目18-18 住友不動産六本木通ビル
http://www.practica.jp/

学校法人愛光学園
私立/男女共学校/中高一貫教育
1953年に、ミッション・スクールとして創立。「輝く知性と曇りなき愛」「愛と光の使徒たらんこと」を教育理念とし、「世界的教養人」の輩出を目指している。 トップレベルの学力の育成に定評があり、また、ICT教育についても先進的な取り組みを行っている。
愛媛県松山市衣山5-1610-1
https://www.aiko.ed.jp/

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