介護業界で導入したいICTツールとは?活用事例や注意点を解説

人手不足や業務の複雑化といった介護現場が抱える課題は、日常のケアの質や、職員の負担に直結しています。そんな介護現場の課題を解決し、業務効率化とケアの質の向上を実現するカギは、「ICTツール」の導入です。チャットツールやインカム、記録の電子化、見守りシステムなど、現場のニーズに応じたさまざまなICTツールの活用が進められており、実際に導入した施設では伝達ミスの防止や業務時間の削減、事故の再発防止といった成果も報告されています。
当記事では、介護業界でICT導入が求められる理由や具体的な活用事例、導入時の注意点、補助金制度について紹介します。介護事業所の経営者や管理者の方は、ぜひご覧ください。
介護業界のコミュニケーション活性化、業務の効率化など
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1. 介護業界でICTツールの導入が求められる理由

介護業界で働く方ならご存じのとおり、少子高齢化の進行により介護ニーズが急速に増加する一方で、人材不足がますます深刻化しており、現場の負担が過重となるケースが増えています。人手不足を打開するためには、業務の効率化を実現し、生産性を向上させる必要があります。その強力な手段として「ICTツール」の導入が注目されています。ICTツールの活用により、介護記録やシフトの作成・管理、情報共有といった間接業務を効率化でき、限られた人員でも質の高いサービスを継続的に提供しやすくなります。
また、リアルタイムでの情報連携やデータの蓄積・活用によって、利用者さまへの直接的なケアの質向上や、ノウハウの継承も可能になります。これは、介護職員の業務負担を軽減し、精神的なストレスを和らげることにもつながります。介護職員の離職防止や定着促進を図る上でも、働きやすい環境づくりと生産性向上を実現するICTの導入は重要な施策の1つです。
出典:独立行政法人 福祉医療機構 WAM NET「福祉医療経営情報」
2. 介護業界のICTツール活用事例

ここからは、慢性的な人手不足や業務の煩雑化といった介護業界の抱える課題を、さまざまなICTツールの導入を進めることで解決に導いた代表的な事例を、5つ紹介していきます。情報共有や記録管理、見守りなどの場面で、具体的にどのようなツールが活用されていったのか、チェックしましょう。
2-1. チャットツール:チャット導入で伝達ミスを防止!スマホ活用で連絡・共有の精度が向上
チャットツールは、介護現場において職員同士の情報共有や連絡業務の迅速化を実現するための重要なICTツールです。従来、申し送りやケア内容の共有は手書きや口頭で行われていましたが、チャットツールを導入することで、リアルタイムかつ正確な情報の伝達が可能になりました。
社会福祉法人 信愛報恩では電話やFAXでは対応しきれなかった情報連携の課題に対し、職員にスマートフォンを配布し、チャット形式のコミュニケーションツールを導入しました。メッセージの既読確認や写真やメモなどの共有機能が好評で、連絡漏れの防止や業務のスピードアップにつながっています。
誰でも使いやすい操作性により、職員同士のやりとりが活発になり、雰囲気のよい職場づくりにも一役買っています。緊急時の連絡網やアンケートへの活用も進めており、今後のさらなる展開が期待されています。
出典:LINE WORK「脱電話・FAXは不可避のなか、LINE WORKSは医療・介護の業務効率化に活用されています。」
関連サービス | : | LINE WORKS with KDDI |
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2-2. インカム:月15~20時間の業務削減!スタッフの8割が業務改善を実感
インカムは、職員同士の連携を一層強化し、迅速な対応を可能にするICTツールの1つです。内線電話やPHSでの連絡は、緊急で支援が必要な場面でタイムロスが生じることが課題とされてきました。
株式会社ツクイでは、スマートフォン導入にあわせてインカムアプリ「Buddycom」を全18施設で計429台導入したことで、従来のPHSや内線による連絡遅延や情報の伝達漏れが大幅に改善されました。介護スタッフ1人あたり月15〜20時間の業務効率化を実現し、スタッフの約8割が「業務が改善した」と回答しています。リアルタイムでの一斉通話や迅速な情報共有によりケアの質が向上し、利用者対応のスピードや的確さにもつながっています。
2-3. 見守りシステム:不要な駆け付けを削減し事故の再発防止にも活用
見守りシステムは、介護現場で利用者の離床や徘徊などの行動をセンサーやカメラで検知し、遠隔から状態をリアルタイムに把握できるICTツールです。ベッドを離れた際に通知が届く仕組みにより、転倒事故や徘徊によるケガのリスクを未然に防ぐことができます。特に夜間のように職員が少ない時間帯でも、必要な場面だけ的確に対応できるため、不必要な巡回を減らしながら安全性と業務効率の両立が可能です。
長崎県の特別養護老人ホームでは、居室や共用部に見守りカメラと人感センサーを導入しました。これまでのセンサーでは、どの部屋で反応があったのか判断が難しく、不要な駆け付けが多く発生していました。
見守りシステム導入後は、スマートフォンに通知が届き、カメラ映像で状況を確認できるため、訪室の必要性を即座に判断できるようになりました。録画機能により、事故の経緯も把握できるようになり再発防止にも役立っています。
出典:システムファイブ株式会社「すいすいケア【導入事例ご紹介①】居室の見守り」
関連サービス | : | まとめてネットワークカメラ with Safie |
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2-4. 介護記録システム:申し送り時間が80分から2分に!記録の統一と紙コスト削減を実現
介護記録システムは、記録業務を効率化し、職員の負担を軽減するために介護現場で活用されているICTツールの1つです。パソコンに戻って記録を行う従来の方法では、ケア業務と記録業務が分断され、ケアが不十分になることもありました。
社会福祉法人 正和会 成華園では、情報共有が難しい手書き記録やバラバラな書式、LIFE(科学的介護情報システム)対応の効率化が課題となっていました。そこで、申し送りの時間を80分から2分に短縮することや、記録方法を統一することを目標に、新しいシステムを導入しました。
導入後は、アセスメントシートや入所申込書など複数の紙書類をデジタル化したことで、年間2,060枚以上の紙の削減に成功し、スケジュールや情報の一元管理もスムーズになりました。こうした業務の効率化の取り組みにより、当初立てた目標を達成し、さらに職員の残業も1人あたり平均で100分以上削減できました。
出典:週間CARE KARTE「成功する事業者が実施している介護ソフト導入の具体的方法とは?」
2-5. 勤怠管理システム:勤怠・給与を一本化し作業時間を半減!有給管理にも余裕が生まれた
勤怠管理システムは、訪問介護や訪問看護など移動の多い現場でも、職員の出退勤を正確かつ効率的に管理できるICTツールです。スマートフォンで出退勤打刻ができるため、事業所に戻らずに退勤登録が可能となり、職員の負担軽減につながります。
上記のような活用策に加え、社会福祉法人 備後の里では紙のタイムカードや給与明細による非効率な作業を改善するため、勤怠・人事労務・給与をまとめて管理できるクラウドシステムを導入しました。導入により、給与明細の配布作業が簡素化され、備品コストの削減にもつながっています。
勤怠集計や入力作業の時間も半分に減り、年5日の有給取得義務への対応も計画的に行えるようになりました。また、給与計算がワンクリックで完了するため、担当者の業務負担が大きく軽減されました。
出典:KING OF TIME「人事労務に勤怠、給与、年末調整まで。作業効率が格段に向上。」
3. 介護事業所がICTツールの導入をするときの注意点

介護現場にICTツールを導入するときは、単に最新の機器を取り入れることが目的にならないよう注意が必要です。現場で有効に活用し、継続的に運用していくためには、導入前後の準備や支援策の把握が大切です。以下では、導入時に押さえておきたいポイントを解説します。
3-1. ICTツールは方法であって目的ではない点に留意する
ICTツールは、介護事業所が抱える業務上の課題を解決するための「手段」であり、導入自体が目的ではありません。ツールを使って何を改善したいのかを明確にせずに導入を進めると、現場の職員に混乱が生じ、ツールの活用は定着せず、期待した効果を得られない可能性があります。
そのため、まずは職員たちの声を拾い上げるなどして、業務上の課題を洗い出し、どの業務にどのツールをどう活用するのかを具体的に計画した上で、導入を進めることが重要です。日々の介護業務には、わざわざ足を運んで様子を確認したり、情報共有のために業務を中断したりなど「人・時間・場所・方法」に関する制約が多く潜んでいます。ICTの活用は、こうした制約を取り払い、業務効率化と生産性向上を実現することで、人にしかできないケアに集中できる環境づくりにもつながります。
また、ICTの導入に伴い、セキュリティ対策や通信環境の整備といったインフラ面の見直しも並行して行う必要があります。
3-2. 導入にあたっては職員にリテラシー教育を行う
ICTツールは便利で効率的な反面、操作に慣れないうちはかえって生産性が低下するおそれもあります。また、従来の業務の進め方が急に変わることへの戸惑いや抵抗感から、現場でツールが活用されず、定着しないケースも見られます。
そのため、導入にあたっては、まず「なぜこのツールを導入するのか」「どのような課題をどう改善するためなのか」といった目的を職員に丁寧に伝え、納得を得ることが大切です。その上で、職員に対する丁寧な操作説明やリテラシーの底上げを行い、マニュアルを整備するなどの体制づくりを行いましょう。
現場で実際に使用する職員の声を反映し、操作しやすいツールを選定することも重要です。機能が充実していても、使い勝手が悪ければ現場で活用されにくくなります。導入後も問い合わせやトラブルに対応してくれる、サポート体制の整った業者を選ぶことで、継続的な運用がしやすくなります。
3-3. 補助金を活用する
ICTツールの導入には初期費用や運用コストがかかるため、国の補助金制度を活用するのが現実的な手段です。特に「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)」は、ICT機器を導入する事業者に対して、自治体ごとに異なる上限額で補助が行われています。
補助額は職員数や導入内容によって異なり、導入効果の報告や令和7年度より第三者による業務改善支援を受けることなどが要件に含まれます。たとえば、スマートフォンやインカム、介護ソフトなどのICTツールも補助対象となります。補助を受けるためには、生産性向上に資する明確な業務改善計画の提出、また一定期間、効果が確認できるまでの報告が必要です。事前に要件を十分確認し、信頼できる業者と連携して準備を進めましょう。
補助金の活用にあたっては、各自治体の窓口へご相談ください。また、KDDI まとめてオフィスでもICT導入に関する補助金や、課題の可視化から対応策についてのコンサルティング、最適なソリューションのご提案までをワンストップで行っています。ぜひお気軽にご相談ください。
関連ページ | : | 補助金サポート |
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出典:厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分))」
まとめ
介護業界では深刻な人手不足を背景に、業務効率化による生産性の向上実現が求められており、ICTツールの導入が、課題解決の重要な役割を果たしています。チャットツールやインカムによる情報共有の迅速化、記録業務の電子化による転記工数の削減、見守りシステムによる安全確保、勤怠管理システムの活用など、さまざまな事例で大幅な業務改善が実現されています。
課題解決の手段としてICTツールを導入する際は明確な目的を持ち、職員への丁寧な説明と、必要に応じてリテラシー教育を行うことが重要です。また、ICT導入時には各自治体ごとに出ている補助金を活用することで、限られた人員で質の高いサービスとケアを継続的に提供できる環境を作ることができます。
KDDI まとめてオフィスでは、KDDIが長年培ってきた高品質でセキュアな通信を軸に、介護業務の生産性向上実現の土台となるスマートフォンなどのスマートデバイスの手配から、チャットツール、インカム、見守り機器、そのほか、介護にまつわる豊富なラインアップをご用意し、ワンストップで提供しています。働きやすい介護現場に向けたコンサルティングも賜ります。ぜひお気軽にKDDIまとめてオフィスにご相談ください。
監修者

Meister株式会社
代表取締役 熊田 圭佑
【経歴】
医療法人で介護職員や事務長、法人本部経営企画等に従事。その後、大手プロフェッショナルファームの"デロイト トーマツ グループ"に入社。前職では、主に大手介護事業者の戦略立案及び経営改善、M&A支援、厚生労働省の調査研究事業等を経験し、2023年にMeister株式会社を設立。総務省の財務・経営マネジメント強化事業アドバイザーや複数の大学で非常勤講師としても活動している。
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