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教育におけるウェルビーイングとは?注目される背景や具体例を紹介!

教育におけるウェルビーイングとは?注目される背景や具体例を紹介!

2025年08月29日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
教育におけるウェルビーイングの注目される背景や具体例を紹介します

近年、注目を集める「ウェルビーイング」とは、単なる「健康」や「幸福」ではなく、身体的・精神的・社会的に調和の取れた満たされた状態を指す概念です。日本の教育現場でも、ウェルビーイングを子どもたちの成長や学びの指針として重視する動きが加速しています。

変化の激しい時代を生きる子どもたちが、自らの可能性を発揮し、他者とともに生きる力を育むためには、心身の健康や自己肯定感、安全な環境、そして社会とのつながりが不可欠です。当記事では、ウェルビーイングの定義や教育との関係性、さらにその実現に向けた実践例を分かりやすく解説します。

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1. ウェルビーイングとは?

「幸福」「健康」「満足」といった感情や状態を包括的に表す言葉

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を意味する概念で、「幸福」「健康」「満足」といった感情や状態を包括的に表す言葉です。語源は「well(良好)」と「being(存在・状態)」の組みあわせで、人間にとって理想的な満ち足りた状態を指します。個人の主観や文化的背景によって捉え方が異なるのも特徴で、経済的指標だけでは測れない、新しい幸福のものさしとして注目されています。

1-1. 世界中でウェルビーイングが注目される背景

近年、経済的な豊かさだけでなく、精神的な充実や健康、社会的つながりを含めた「幸福」や「生きがい」を重視する価値観が広がっています。従来のGDPのような経済指標だけでは測れない、多面的かつ持続可能な幸福を求める動きが強まっており、その中心にあるのがウェルビーイングという概念です。

OECDの「Learning Compass 2030」では、個人と社会のウェルビーイングが「私たちが望む未来(Future We Want)」と位置づけられており、教育を含むあらゆる活動の最終的な目的地として掲げられています。少子化や格差の固定化、新型コロナの影響による不登校や自殺率の増加といった深刻な社会課題も、子どもたちのウェルビーイングへの関心を高める要因となっています。こうした背景から、ウェルビーイングは現在、教育政策においても中心的なテーマとなっています。

出典:文部科学省「ウェルビーイングの向上について(次期教育振興基本計画における方向性)」

2. 教育とウェルビーイング

文部科学省は2023年に教育施策の柱として「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を明示しました

社会環境が大きく変化する中で、教育にも「ウェルビーイング」の視点が強く求められるようになっています。

文部科学省は2023年に「教育振興基本計画(第4期)」を策定し、教育施策の柱として「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を明示しました。教育を通じて、すべての子どもが心身ともに健やかに成長し、持続可能な社会の創り手となることが期待されています。

2-1. 教育振興基本計画でのウェルビーイングの位置づけ

教育振興基本計画とは、教育基本法に基づき政府が策定する、国の教育に関する中長期的な総合計画です。教育の目指すべき姿や施策の方向性、評価指標などが盛り込まれており、国の教育政策の基盤となっています。

2023年に閣議決定された第4期教育振興基本計画では、「持続可能な社会の創り手の育成」と並び、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が基本コンセプトとして掲げられました。これは、経済格差や不登校、いじめなど、子どもを取り巻く多様な社会課題に対応し、一人ひとりの子どもが幸福で充実した人生を歩めるようにするために、教育の在り方そのものを問い直す重要な方針となっています。

2-2. 日本発・日本社会に根差したウェルビーイングの向上とは

「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」とは、日本特有の社会的・文化的背景を踏まえた幸福のあり方を指します。

具体的には、「自己肯定感」や「自己実現」などの個人の成長に関わる獲得的要素に加え、「人とのつながり」「利他性」「社会貢献意識」などの協調的要素を両立させた上で、それらのバランスを保つことを重視する点に特徴があります。国際的には個人の達成や自立が幸福の指標とされる傾向が強いですが、日本では他者との関係性や調和を重視する価値観が根付いています。

こうした価値観を反映し、教育を通じて「調和と協調」に基づくウェルビーイングを育むことが、日本発のアプローチとして世界にも発信されています。

2-3. 教育におけるウェルビーイングの要素

教育振興基本計画(第4期)では、教育を通じて育むべきウェルビーイングの要素として、自己肯定感や自己実現、心身の健康、安全安心な環境、幸福感を含む、以下のような項目が示されています。

これらの要素は、子ども一人ひとりの持続的な幸福と、社会全体の健全な発展を支える重要な基盤とされています。

【教育に関連するウェルビーイングの要素】

  • 自己肯定感
  • 自己実現(達成感、キャリア意識など)
  • 心身の健康
  • 安全安心な環境
  • 幸福感(現在と将来、自分と周りの他者)
  • 多様性への理解
  • 協働性
  • 利他性
  • 社会貢献意識
  • サポートを受けられる環境
  • 学校・地域とのつながり

出典:ウェルビーイング学会「教育×ウェルビーイング」

3. ウェルビーイングを育むための教育実践の具体例

「個別最適な学び」と「協働的な学び」

教育におけるウェルビーイングを高めるためには、日々の教育活動の中に多様な工夫と取り組みを取り入れることが重要です。個々の学習スタイルや背景に応じた「個別最適な学び」と、他者と協働し社会性を育む「協働的な学び」のバランスを軸に、全国の教育現場ではさまざまな実践が進んでいます。

ここでは、ウェルビーイングの向上を目指すための手法を取り上げ、それぞれの取り組みが子どもたちの健やかな成長や社会的なつながりにどう結びついているかを解説します。

3-1. 児童生徒一人ひとりに合った学びや協働的な学びの提供

現代の教育では、児童生徒が自らのペースで学ぶ「個別最適な学び」と、他者とともに考え、協力する「協働的な学び」の両立が重視されています。

たとえば、習熟度に応じた少人数制授業を取り入れることで、学力や理解度に応じたきめ細かな指導が可能となり、生徒の自信や学習意欲の向上につながります。同時に、グループワークや探究的な学習では、協働性や利他性、社会貢献意識が自然と育まれます。

これらの教育活動は、個人の内面の充実と社会的つながりの両面を育むものであり、まさに教育におけるウェルビーイングの向上に直結する取り組みと言えるでしょう。

3-2. 多様な教育ニーズに応える共生社会を目指した学び

障害の有無、不登校、外国にルーツを持つ児童、特異な才能を持つ子など、学校には多様な背景やニーズを抱える子どもたちが在籍しています。こうした子ども一人ひとりに応じた個別最適な学びを提供するとともに、互いの違いを認め合い、ともに学ぶ「共生」の視点が教育には不可欠です。

たとえば、特別支援教育や日本語指導、学習支援の充実に加え、全員が参加できる協働的な学びの機会をつくることで、多様な子どもが自己肯定感を高め、能力を発揮しやすい環境が整います。自分とは異なる背景を持つ他者を理解し受け入れる経験は、利他性や社会的包摂意識を育む土壌となり、社会全体の寛容さを深めることにもつながります。

3-3. 地域・家庭と連携した学びの場の拡充

ウェルビーイングを育むためには、学校内の学びにとどまらず、地域や家庭と連携した学びの場を拡充することが重要です。コミュニティ・スクールのように、地域住民や保護者が学校運営に参画する体制があれば、学校が地域社会と密接に関わり、子どもたちの学びが実生活や社会と結びつきやすくなります。また、地域学校協働活動では、地域の専門家や企業と連携した体験学習や探究活動が行われ、子どもたちの視野を広げ、自分の役割や地域・社会への貢献について考える機会を提供します。

外部との関わりから子どもたちは自己有用感や地域との関わりを感じられるようになり、心の安定や安心感の醸成につながります。学校・家庭・地域が一体となることで、子どもたちのウェルビーイングはより強く、持続的に支えられていきます。

3-4. キャリア教育・職業教育による自立と自己実現の支援

児童生徒のウェルビーイングを支えるためには、将来を見据えた自立支援が欠かせません。キャリア教育や職業教育は、子どもたちが自分の将来像を主体的に描き、社会の中で自分らしく生きる力を育む教育活動です。

たとえば、小中高を通して継続的に記録・活用する「キャリア・パスポート」は、自分の成長や目標を振り返るツールとして有効です。また、地域社会や企業と連携した探究的学習や職場体験を通じて、実社会の課題に触れることで、社会貢献意識や達成感も育まれます。

キャリアに関する学びは、自己肯定感や自信の形成にも寄与し、自らの人生に対して前向きな姿勢を持つことにつながります。子どもたちの未来志向を支え、持続的なウェルビーイングの基盤を築く重要な手段です。

3-5. 心身の健やかな成長と安心できる学校づくり

ウェルビーイングの基本には、心身ともに健康であること、そして安心して過ごせる環境が必要です。学校教育では、道徳教育や自然体験、ボランティア活動といった実践を通じて、豊かな心や社会性を育んでいます。

また、定期健康診断や保健指導、メンタルヘルスケアなどの学校保健の取り組みも、児童生徒の身体的・精神的な健康を守る上で重要です。加えて、バリアフリー化や防災設備の整備、不審者対策など、安全で安心できる施設環境の整備も進められています。

安心できる学習環境は、子どもたちが自己の力を存分に発揮する土台であり、他者との関係性を築く上でも大切な要素です。心身の健やかな成長を支える教育環境こそが、ウェルビーイングの実現に直結します。

3-6. グローバル社会を見据えた国際交流の推進

多様性を尊重し、世界とつながる感覚を育てることも、現代教育におけるウェルビーイングの重要な要素です。海外留学や外国人留学生との交流など、国際交流の推進は、異文化理解や多様な価値観への寛容性を養う貴重な機会です。また、近年では地域社会そのものが国際化しており、学校と地域が連携して行う多文化共生の活動も注目されています。

たとえば、地域の外国人住民と交流するイベントや、多言語での学習支援などを通じて、子どもたちは多様な背景を持つ人々と出会い、相互理解を深めていきます。グローバルな視野を持ちながら、自らのルーツにも誇りを持てる教育は、持続可能なウェルビーイングの形成につながります。

まとめ

教育におけるウェルビーイングは、子どもたちの心と体、社会との関係すべてにかかわる重要な視点です。経済的な指標だけでは測れない「幸福」や「生きがい」を大切にする時代において、教育現場におけるウェルビーイングの向上は不可欠です。

日本社会に根差した価値観を踏まえつつ、多様な子どもたちが安心して学べる環境づくりや、自己肯定感を高めるためのキャリア教育、協働性や利他性を育む実践が求められています。今後の教育の柱として、ウェルビーイングの考え方はますます重要性を増していくでしょう。

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