
オフィスの移転や改装を進める際には、A工事・B工事・C工事という工事区分を理解しておく必要があります。これらは発注者や費用負担、業者の選定権限によって分かれ、同じ工事項目でもビルのルール次第で区分が異なる場合があります。区分を正しく把握することで、予算計画や工期管理の精度を高めることができ、これらはPM(プロジェクトマネージャー)の重要な役割でもあり、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
当記事では、それぞれの工事の特徴や違い、費用を抑えるコツ、注意点を解説します。オフィスの移転や改装を検討中の方は、ぜひお役立てください。
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1. A工事・B工事・C工事の工事内容とは?

A工事・B工事・C工事は、オフィスや商業施設を借りる際の内装や設備工事の区分を指します。法律で明確な定義はなく、業界の慣行やビルごとの賃貸借契約・管理規約によって定義が異なります。以下の表で役割の違いを簡潔に整理します。
【A工事・B工事・C工事の比較表】
| 項目 | A工事 | B工事 | C工事 |
|---|---|---|---|
| 発注者 | オーナー | テナント | テナント |
| 費用負担者 | オーナー | テナント | テナント |
| 工事業者の選定 | オーナーが選定 | オーナーが選定 | テナントが選定 |
| 工事内容の範囲 | 建物の共用部分・躯体 | 専有部分で建物全体に 影響を与える工事 |
専有部分で建物全体に 影響を与えない工事 |
| 工事内容の具体例 | 外装・外壁、エレベーター、共用トイレ、消防設備、給排水設備(共用)など | 空調、防災、防水設備、分電盤、給排水設備(専有)、厨房排気など | 内装仕上げ、間仕切り、看板、家具・什器、LAN配線工事など |
一般的には、建物の躯体や共用設備に影響する場合はB工事に該当することがあります。以下はその一例です。
- 例1(ビル全体に影響): 照明・コンセント増設はC工事ですが、幹線増設や分電盤増設など電力供給系に及ぶとB工事になります。
- 例2(法令・安全準拠): パーティション設置自体はC工事ですが、区画で消防設備の移設が必要になる場合はB工事になります。
1-1. A工事とは
A工事とは、建物オーナーが工事業者を選定し、発注から費用負担までを一括して担う工事を指します。対象となるのは建物の躯体や共用部分で、建物全体の安全性や機能維持に直結する領域です。
具体的には以下のような場所の工事が該当します。
- 外装
- 外壁
- 廊下
- 共用トイレ
- エレベーター
- 消防設備
- 共用部の給排水設備 など
これらはビル全体の利用者に影響を与えるため、オーナーが一括して管理・実施するのが特徴です。テナントが自由に関与できない領域であり、建物の維持管理上最も重要な工事区分と言えます。
1-2. B工事とは
B工事とは、建物のオーナーが工事業者を選定し、テナントが発注と費用負担を担う工事を指します。対象は専有部分であっても建物全体に影響を及ぼす領域で、具体的には以下のような場所の工事が該当します。
- 空調
- 電気
- 防災
- 防水設備 など
ビル全体のシステムに直結するため、業者の決定権はオーナーにありますが、費用はテナント負担となる点が特徴です。
一般的にテナントが入居する際に関わるのは、このB工事とC工事であり、契約内容や管理規約によって区分が変わる場合もあります。
1-3. C工事とは
C工事とは、工事業者の選定から発注・費用負担まですべてテナントが担う工事を指します。対象は専有部分のうち建物全体に影響を及ぼさない領域で、具体的には以下のような場所の工事が該当します。
- 内装仕上げ
- 間仕切り
- 家具や什器の設置
- 電話やLAN配線工事 など
テナントの裁量で進めやすく、コスト調整や業者選定の自由度が高い点が特徴です。
ただし、電気工事や間仕切り工事など、一見C工事に含まれる内容でも、ビルの規定によってはB工事に区分される場合があります。契約書や管理規約を事前に確認することが重要です。
2. A工事・B工事・C工事の違いを理解する重要性

A工事・B工事・C工事の違いを理解することは、オフィスづくりを成功させるために欠かせません。どの工事を誰が負担し、どの範囲を担当するのかを把握しておくことで、必要な費用を正しく見積もり、予算計画を立てやすくなります。その結果、計画段階での予算オーバーを防ぎ、スムーズな資金計画につながります。
さらに、A工事やB工事の範囲を理解しておけば、テナントが行うC工事をスムーズに進められます。どの工事を誰が担当するのかを明確にしておくことで、作業の順番やスケジュールを効率的に組み立てられ、オフィスを使い始めるまでの時間を短縮しやすくなります。
ただし、ビルごとに工事区分の基準は異なるため、契約前に必ず資料を確認し、オーナーとテナントの認識をあわせることが大切です。工事区分の違いを正しく理解しておけば、追加費用や工期遅延といったトラブルを避け、プロジェクト全体を円滑に進められます。これらの調整や管理は、PM(プロジェクトマネージャー)の重要な役割でもあります。
3. A工事・B工事・C工事の費用を抑えるコツ
オフィス工事の費用は、区分の判断や見積もりの取り方によって大きく変わります。B工事をA工事やC工事として扱えるかを確認したり、早めに見積もりを取得したりするなど、工夫次第でコストを抑えることが可能です。
ここでは、それぞれの工夫について詳しく解説します。
3-1. B工事をA工事として扱えるか相談する
B工事は通常テナントの負担となりますが、内容によってはA工事に該当する可能性があるため、オーナーや管理会社に相談してみることで費用を抑えられる場合があります。たとえば、専有部分の配電盤設置はB工事に分類されやすい一方で、共用部分に関連する電気系統や給排水設備の改修などは、A工事として扱える場合があります。
ただし、工事区分は法律で一律に定められているわけではなく、ビルごとに取り決めが異なる点に注意が必要です。交渉が必ず成功するわけではありませんが、事前に工事内容を精査し、オーナーに根拠を示すことで、一部費用を負担してもらえる可能性があります。
3-2. B工事をC工事として扱えるか調整を検討する
B工事の一部をC工事として扱えるか、オーナーや管理会社に相談してみるのも費用を抑える工夫の1つです。B工事はオーナーが業者を指定するため価格交渉が難しいですが、C工事に区分されればテナントが業者を選び、相見積もりを取ってコストを抑えられる可能性があります。
交渉が必ず成功するとは限りませんが、変更を検討する際は見積内容を確認し、責任の所在を含めて事前に調整しておくことが重要です。
3-3. C工事の見積もりを早めに取得する
C工事はテナントが業者を選び、発注や費用負担を担うため、早めに見積もりを依頼することが大切です。複数業者から見積もりを取れば比較検討ができ、コスト削減につながります。開業直前に依頼すると精査が間に合わず、割高な契約につながるリスクもあるため注意が必要です。
また、見積内容はオーナーに共有して承諾を得ておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。自社での確認が難しい場合は、外部の専門家に依頼するのも有効な手段です。
4. A工事・B工事・C工事の注意点は?

A工事・B工事・C工事には、それぞれ異なる費用負担や権限の範囲があります。オフィスづくりを進める際には、工事区分ごとの注意点を理解しておくことが重要です。ここでは、各工事で押さえておきたいポイントを解説します。
4-1. A工事の注意点
A工事はビルオーナーが責任を持つ工事ですが、テナント側も注意が必要です。専有部分であっても入居時から設置されている空調や照明などがA工事と判断され、テナント側で自由に改修できないケースがあります。事前に契約書を確認し、不明点はオーナーへ問い合わせることが大切です。
また、エレベーターや共用トイレなどの工事は事業活動に影響を与えるため、実施時期を把握し、従業員や来客への案内を行うとトラブルを防げます。
4-2. B工事の注意点
B工事はテナントが費用を負担しますが、工事業者はオーナー指定となるため、コスト面で不満が生じやすい点が特徴です。競争原理が働きにくく、費用が相場より高くなるケースも見られます。そのため、見積もり内容を精査し、必要に応じてオーナーに相談することが重要です。
また、見積取得や調整に時間がかかるため、工期が予定より遅れる可能性もあります。退去時の原状回復義務にB工事対象の設備が含まれる場合もあるため、契約書で範囲を確認しておきましょう。
4-3. C工事の注意点
C工事はテナントが業者を自由に選べ、複数社の見積もりを比較して費用を抑えやすいメリットがあります。しかし、工事内容によっては空調や防災設備などのB工事が同時に発生することもあるため、契約前には十分に範囲を確認しましょう。
また、大型ビルや商業施設では、管理上の理由から業者が指定される場合もあるため注意が必要です。退去時は原状回復義務を負うことが多いため、将来の費用も見据えて計画を立てましょう。
まとめ
A工事・B工事・C工事は、オフィスや商業施設を借りる際の内装・設備工事の区分で、発注者・費用負担者・業者選定の違いがあります。A工事は建物全体に関わる工事でオーナー負担、B工事は専有部分でも建物に影響する工事でテナント負担、C工事は専有部分のみでテナントが自由に進められる工事です。
区分を理解することで正確な予算計画や工期管理につながり、トラブル防止に役立ちます。ビルごとに基準は異なるため、契約前に必ず工事区分を確認しましょう。
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