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経営戦略としての働き方改革

セミナーレポート2 特別講演

経営戦略としての働き方改革

2020年01月29日掲載(2023年11月02日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

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特別講演には、日本における働き方改革推進のリーダーとも言える小室淑恵が登壇。「なぜいま、働き方改革が必要なのか?」「どんなメリットがあるのか?」など、多くの人が漠然と抱いている働き方改革の疑問に、"目から鱗"の明快な答えを披露。成功へ導くためのポイントも紹介していただきました。

<プロフィール>

株式会社 ワーク・ライフバランス
代表取締役社長
小室 淑恵

大学卒業後、資生堂勤務を経て、2006年に株式会社 ワーク・ライフバランスを創業。1,000社以上の企業・自治体に対して働き方改革などのコンサルティングを行うとともに、安倍内閣「産業競争力会議」民間議員を務め、「働き方改革関連法案」の参考人答弁も行うなど、複数の公務も兼任。長時間労働の是正による勝てる組織と充実した人生づくりをサポートしている。

目次

働き方を変えないと、国も企業も破綻してしまう

―― なぜいま、私たちは働き方改革を行わなくてはならないのでしょうか?

小室氏:
かつて、長時間労働でこそ大きな成果をあげた人にとって急に「残業を減らせ」「在宅ワークしろ」と言われても戸惑うのではないでしょうか?そんなことで利益があがるのか?国がなりたつのか?と。しかし、実はいま働き方を変えないと、企業も国も危機的な状況に陥る恐れがあるのです。その理由は、日本の人口・社会構造が大きな転換点を迎えていること。かつて日本は、生産年齢人口の比率が高い、いわゆる「人口ボーナス期」にあり、大量の安い労働力で爆発的な経済成長を遂げました。労働力は余っていて、体力勝負の仕事が多いので男性ばかりで働くのが適していました。人件費が安く、お客さまはまだ最初の冷蔵庫、最初の洗濯機を持っていないので、そこに先に届けた企業が勝ちますから、すなわち夜討ち朝駆けで長時間働くことでこそ、勝てた時代です。しかし現在の日本は、人件費が上昇し、労働人口が減り、少ない現役世代が何人もの高齢者を支える「人口オーナス期」に入っています。

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そうなるとむしろ、いかに短い時間で、多様な人材が無理なく働ける職場を作るかが勝てる戦略になってきます。なぜなら、人件費が高い中、イノベーションを起こして高付加価値型の商品サービスで勝負しなくてはならないのですが、イノベーションを起こすには「多様な人材がフラットに議論できるかどうか」がカギだからです。財政という面でも、膨らむ一方の社会保障費を賄うためには、今まで潜在労働力になってしまっていた、育児中や介護中などの「時間制約付き社員」を、労働市場からドロップアウトさせず、最後まで働き続けられる職場環境を整備することで、社会保障の払い手で居続けてもらうことが重要です。だからこそ、人口オーナス期の新たな成長軌道に乗るために不可欠なのが働き方改革です。長時間労働によるかつての成功体験から脱却し、新しい働き方にシフトしなければ、私たちに明るい未来はやって来ないのです。

長時間労働のできる人が主役になる働き方をやめる

―― 具体的に、どのように働き方を変えれば良いのでしょうか?

小室氏:
不足する労働力を補うために多様な人材が活躍しやすい職場環境をつくること。そのためには「働き方で門前払い」をしている、現状を変えていくことが最も重要です。今まで日本社会では、意思決定をする役職者ほど「責任ある立場の者は時間外労働も辞さないものでなくてはならない」という考えが根強くあり、重要なポジションには必ず、時間外労働が可能な人材が選ばれてきました。こうした、"時間外労働ができる人"が主役になる働き方が、生産性の向上や多様な人材活用を阻む大きな壁になっています。いまや生産性は職場全体で協力して上げていくものです。無理が頼める一部の人に業務が集中しているようでは、いつまで経っても生産性は上がりません。

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また、育児や介護などで労働時間に制約のある人を積極的に活用しようとしても、時間外労働のできる人が主役になっている職場では、どうしても肩身が狭くなってしまい労働意欲が高まりません。日本の女性就業率が低いのも、育児休業制度や短時間勤務制度を利用するとメインキャリアから外されてしまうからです。さらに最近は、男性も介護休業の取得に際して同じような境遇に陥る人が増えています。ある建設業では、育児で休む女性の数より介護で休む男性の数のほうが多いのです。そんな時代に、今までのような職場環境では、ダイバーシティどころか1億総モチベーションダウンになってしまいます。

華麗なパスまわしで連携して働けるチームワーク

―― 長時間労働を是正するにはどうしたら良いですか?

小室氏:
まず人事評価の基準を「時間あたり生産性」に変えましょう。月末や年度末までにどれだけ成果をあげるか、という「期間あたり生産性」では、限界まで時間をつぎ込んで成果を出そうとするので、長時間労働競争になってしまいます。よく人が足りないから残業になると言いますが、「その人しか知らない情報や、やり方がある」という仕事が属人化した職場では、どんなに人を追加しても特定の人に聞かないと進まない仕事がネックとなり、生産性があがりません。属人化している情報・スキルを、ITを利用することで、クラウドで見える化・共有化しましょう。

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仕事の肝となる情報がきちんとクラウド上におかれることで、在宅の人も、育児や介護で中抜けする人も、リモートワークで情報共有しながら、絶妙なパスまわしで連携して働けるワンチームになれるのです。「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」は、地続きではありません。今までの成功体験と決別し、思い切って飛び移る必要があります。働き方改革で、勝てる企業と充実した人生を作ることができます。すでに、私たちがサポートさせていただいた企業様からは「労働時間が減って、売上が伸びた」「有給消化が増えて社員数も増えた」「多様な人材が活発に議論したことで、サービスにイノベーションが起きた!」など喜びの声をたくさんいただいています。みなさんも豊かな未来へ向けてぜひチャレンジしてください。

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