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中堅企業A社の管理部門がテレワークを実現するために取り組んだこと

中堅企業A社の管理部門がテレワークを実現するために取り組んだこと

2023年03月14日掲載(2023年11月06日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

コロナ禍において初めて緊急事態宣言が発出された2020年4月7日から数年が経ち、最初は混乱の中で進められたテレワーク化や新しい勤務形態も、社内制度変更やツール導入などにより、多くの企業が自社に合う形を見つけつつあります。

そのような状況下で、声として上がってくるのが部署の違いによるテレワーク導入の難易度や不公平感です。工場勤務が必要な生産部門や、実際に物を動かす物流部門、加えて人事・総務・経理・法務などの管理部門もテレワークへの移行が難しいケースがあります。

生産や物流に直接関わりのない管理部門まで、テレワークの導入が難しくなっている要因は何でしょうか。代表的な要因は以下の3つです。
・セキュリティ
・紙文化
・ハンコ文化

今回は事例として、上場企業グループの中堅企業A社がどんな取り組みを行い、管理部門のテレワークを可能にしたのかをご紹介します。

目次

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経理と法務の課題はセキュリティと紙文化

A社の場合は、管理部門の中でも、抱えている課題が部署ごとに少しずつ違いました。A社の経理担当者と法務担当者のお話からは、セキュリティと紙文化が大きな課題であることが分かりました。

経理担当者「経理部門では、2018年に経費精算のクラウドシステムを導入しました。テレワークの推進というよりは、社内的にDXを進め、業務の効率化を目指す上での取り組みでした。導入以前は、営業など経費申請者各自がWebのシステムに経費を入力し、領収書をPDFで添付、その後紙の原本を経理に渡すというフローでした。このフローだと申請者は紙の提出の手間があり、経理も紙の領収書での処理が発生し、負担も大きかったのです。クラウドシステムの導入により、紙での作業が削減されたことで、業務が効率化された上に、出社して領収書処理をする必要がなくなりました。
また、2020年には新型コロナウイルス感染症への対応として、請求・支払いのフロー見直しも実施しました。見直し以前は支払先から紙の請求書原本をもらい、原本を確認し振り込みの対応をしていましたが、『電子帳簿保存法』に適応したフローに見直したことで、経費精算と同様に紙での作業がなくなりました。これらの見直しにより、私たち経理担当もテレワークがしやすくなりました」

法務担当者「法務では契約書が紙の文化であることに加え、機密情報レベルの高い契約書は社内環境でしか確認できないなどのセキュリティ面も課題でした。また、契約書審査の際に参照する大量の法律書も重くて持ち運びができず、テレワークの阻害要因になっていました。
それらを解消するために、セキュリティを担保しつつ、クラウド上で契約を交わせる電子署名・契約サービスと、法律書が電子書籍で読めるサービスを導入。電子署名・契約サービスの導入に際し、ツール検討のポイントとなったのが適切な承認経路の設定です。契約の際にさまざまな経路での承認が必要なケースが多く、どういう経路設定や階層設定が可能かはツール選定時の重要な要素となりました」

人事・労務と総務の課題は紙文化とハンコ文化

続いて、A社の人事・労務、総務の方々にもお話を伺いました。人事・労務、総務も経理、法務と同様に紙文化の課題を抱えており、そこに付随した押印もテレワークの阻害要因となっていたといいます。

人事・労務担当者「コロナ禍以前から、クラウドツールなどの導入の話は上がっていたのですが、人事システムが親会社のシステムとつながっていて、影響範囲が大きいためなかなか取り組めておらず、結果として紙の申請が数多く残っていました。しかし、コロナ禍をきっかけに『Google Workspace ™』とアドオンサービスを活用し、Webのフォームで申請が完結できるワークフローツールに切り替えました。これにより、紙の申請書を処理するための出社が不要になりました。ただ現状では、社内サーバーにリモートデスクトップを使用しアクセスしているため、全社でDXをすすめる際には見直しの必要があること、保育園申請のような行政書類がまだ紙で存在してしまっていることを考えると、まだまだ道半ばかもしれません」

総務担当者「総務もたとえば車両管理など、紙書類での申請が多く、その管理や押印がテレワークのネックとなっていました。人事同様、申請を『Google Workspace™』とアドオンサービスのワークフローツールに置き換えることで対応しています。これにより私たちもテレワークができるようになり、申請側の社員もハンコをもらうためわざわざ出社や郵送をする必要がなくなり、さらにスマートフォンでも申請が可能になりました。これらの取り組みにより会社全体で効率化した部分は大きいと思います。ただ、課題も残っています。ワークフローツールを社内でカスタマイズしていることで、そのノウハウが属人化してしまい、関連会社に横展開して自由に使うことが難しかったり、導入に時間がかかったりしているのです。ここは紙の申請を完全に無くしていくことと併せて今後取り組んでいく必要があります」

クラウド導入だけでなく、VPN接続も選択肢に

A社の事例を見ると、管理部門のテレワーク実現のための選択肢は必ずしも、クラウドツールだけではないことがわかります。VPNでの接続や社内にパソコンを置き、一度そのパソコンを経由して社内ネットワークにつなぐリモートデスクトップを活用する方法もあります。

重要なのは、制度やツール、システム環境を含めて、自社に適した環境を構築することです。しかし、すべてを同時に完成させることはたやすくありません。自社にとっての「理想の最終形」に向けて、チューニングを繰り返しながら、段階的に取り組みましょう。

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