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DXハイスクールとは?施策の概要や狙い・学校の取り組み事例を紹介

DXハイスクールとは?施策の概要や狙い・学校の取り組み事例を紹介

2025年03月26日掲載(2026年02月19日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
DXハイスクールの制度概要や目的、補助対象、採択校の取り組み事例を解説

高校教育において、情報や理数分野の学びをどのように高度化し、将来につながる教育環境を整えていくかは、多くの学校にとって重要なテーマです。こうした流れの中で注目されているのが、文部科学省が推進するDXハイスクール制度です。本制度は、情報IIをはじめとする情報・数学教育の充実や、ICTを活用した文理横断的・探究的な学びを後押しする補助事業として位置づけられています。

当記事では、DXハイスクールの制度概要や目的、補助対象、採択校の取り組み事例を解説します。制度の全体像を把握することで、自校にどのような活用の可能性があるのかを考えるための判断材料を得られるでしょう。

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1. DXハイスクールとは?

DXハイスクール:
文部科学省が推進する高校段階からデジタル人材の育成を進める為の補助事業

DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)とは、情報や数学などの教育を重視したカリキュラムの実施や、ICTを活用した文理横断的かつ探究的な学びに取り組む高等学校を対象に、文部科学省が支援を行う補助事業です。

大学においてデジタルや理数分野の学部設置や定員拡大が進む中、その政策効果を最大限に発揮するには、高校段階からデジタル人材を育成する体制整備が不可欠とされています。本事業では、専門的な外部人材の活用や大学などとの連携を通じて、実践的な学びを強化するための教育環境整備を支援します。

出典:文部科学省「令和8年度予算(案)のポイント」

1-1. DXハイスクールの補助対象・予算

本事業は令和5年度補正予算(2023年度)より開始され、令和8年度で実質的な運用の3年目を迎えます。
2026年度(令和8年度)の予算案によると、DXハイスクールの補助対象は、公立や私立を問わない高等学校などで、全国で1,300校程度が想定されています。

補助は定額制で、新規採択校は約100校を対象に、1校あたり上限1,000万円が交付されます。継続校については、2年目は約200校に対して上限500万円、3年目は約1,000校に対して上限300万円が設定されています。

さらに、必須要件に加えて特定のテーマ(グローバル・特色化/魅力化・プロフェッショナル)に基づく取り組みを重点的に実施する学校は「重点類型」とされ、2年目は最大700万円、3年目は最大500万円まで補助上限額が加算されます。重点類型は半導体重点枠を含め、約80校が想定されています。

出典:文部科学省「令和8年度予算(案)のポイント」

1-2. DXハイスクールの補助対象経費

DXハイスクールでは、事業の目的に沿った教育環境整備に必要な経費が補助対象となります。具体的には、ハイスペックパソコン(PC)や3Dプリンター、動画・画像生成ソフトなどのICT機器整備に加え、遠隔授業での活用を含む通信機器の整備が挙げられます。

また、数学や理科などの学習を高度化するための理数教育設備、専門高校における高度な実習設備の整備も対象です。さらに、外部の専門人材を活用するための人材派遣費や業務委託費も補助対象に含まれており、学校ごとの教育方針に応じた柔軟な環境整備を進められる点が特徴です。

出典:文部科学省「令和8年度予算(案)のポイント」

2. DXハイスクールの目的・狙い

デジタル人材育成と学力強化/文理横断型探究学習の推進/教育環境の格差是正

DXハイスクールは、高校段階からデジタル分野や理数教育を強化し、将来の社会を支える人材を育成することを目的とした施策です。ICTを活用した学びを通じて、教育内容の高度化と学習環境の充実を同時に進める狙いがあります。

2-1. デジタル人材育成と学力の強化

DXハイスクールにおける中核的な取り組みが、情報IIの履修推進によるデジタル人材育成と学力の強化です。2025年度時点で情報IIを開設している高等学校は842校、履修率は38.0%にとどまっていますが、文部科学省は2027年度までに63.2%へ引き上げる目標を掲げています。

あわせて、数学II・Bや数学III・Cの履修推進も位置づけられ、情報科と理数系科目を横断したカリキュラムの充実が進められています。情報Iは2022年度から共通必履修となった一方、情報IIは学習指導要領上は選択科目です。そのため、本事業では情報IIの開設や履修促進が要件として位置づけられており、補助金制度を通じて設置校の新規拡大や高校教育への定着を強力に後押ししています。

出典:文部科学省「「令和7年度高等学校 DX 加速化推進事業(DX ハイスクール)」の採択校をお知らせします。」

2-2. 教育環境の格差是正

DXハイスクールは、教育環境における地域格差の是正も重要な狙いの1つです。補助金制度を活用することで、これまで十分な整備が難しかった地方の高等学校や小規模校においても、ICT機器や高速通信環境の導入が進められるようになりました。

これにより、都市部と同様にデジタル教材やオンラインツールを活用した授業が可能となり、学習機会の差を縮小する効果が期待されています。教育環境の整備状況に左右されず、どの地域の生徒も質の高い学びに触れられる体制を整えることが、DXハイスクールを通じた全国的な教育水準の底上げにつながるでしょう。

2-3. 文理横断型・探究学習の推進

高校教育における探究的な学びの推進という点では、文部科学省が2002年から実施しているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)と共通する側面もあります。SSHは理科や数学を中心に、大学などと連携した先進的な理数教育の研究開発を行う先導校を指定する制度です。

一方、DXハイスクールは、情報や数学を重視しつつ、文系や理系の枠を超えた学びをより多くの学校に広げる点に特徴があります。データサイエンスなど汎用性の高い分野を軸に、探究的な学びの裾野を全国に拡大していくことが狙いです。

出典:文部科学省「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」

3. DXハイスクールに採択された学校

DXハイスクール
2025年度 採択結果:全国で1,642校が申請し、そのうち1,191校が採択

2025年度(令和7年度)のDXハイスクール採択実績(継続校を含む)は、全国で1,642校が申請し、そのうち1,191校が採択されました。内訳は公立871校、私立320校で、継続採択校が978校、新規採択校が213校となっています。

また、重点類型に指定された学校は計80校です。重点類型には、海外連携や外国語による授業を行うグローバル型、文理横断的な学びに重点を置く新しい普通科への転換を進める特色化・魅力化型、産業界と連携した高度な職業人材育成を行うプロフェッショナル型があります。これらの重点類型校には、先導的な取り組みを通じてモデルとなる教育実践を示し、全国の高等学校へ波及させていく役割が期待されています。

出典:文部科学省「「令和7年度高等学校 DX 加速化推進事業(DX ハイスクール)」の採択校をお知らせします。」

出典:文部科学省「令和8年度予算(案)のポイント」

4. DXハイスクールの取り組み事例

ここでは、文部科学省が公表しているDXハイスクールの事例をもとに、各高等学校で進められている具体的な取り組みを紹介します。

4-1. 東京都立小岩高等学校

東京都立小岩高等学校では、科目「情報II」においてプロジェクトベースの主体的な学びを実践しています。年間を通じて少人数グループによる探究活動を行い、前半では目標設定やガントチャートを用いた計画立案を行い、文化祭での発表を目指します。

後半はプロジェクトを発展させ、進路選択に結び付ける点が特徴です。ローカルLLMの構築やスポーツデータ分析、3Dモデリング、動画制作などの多様なテーマに取り組み、高性能パソコンやPython、3Dプリンターなどを活用しています。生成AIを相談相手として活用し、協働的に課題解決力や学び続ける力の育成を図っています。

出典:文部科学省「DXハイスクール 【東京都立小岩高等学校(令和6年度採択校) 】」

4-2. 日出学園高等学校

日出学園高等学校では、科目「情報II」において「探究×情報技術」を軸とした授業を展開しています。年間授業は前半と後半の二部構成で、前半では3Dプリンターや生成AI、データ分析などを扱うミニ探究を通じて「何ができるか」を体験的に学びます。

後半は卒業研究の制作として、個人または少人数で問題発見や解決に取り組みます。3Dプリンターやmicro:bitなどの機器を生徒自身が扱い、振り返りを重ねることで、情報技術を社会と関わるための「パートナー」として捉える力の育成を目指しています。

出典:文部科学省「DXハイスクール 【日出学園高等学校(令和6年度採択校)】」

4-3. 富士見丘中学高等学校

富士見丘中学高等学校では、「AI時代を主体的に生き抜く生徒の育成」を掲げ、DXハイスクールの取り組みとして情報IIを見据えた情報関連科目の充実と学習環境の整備を進めています。選択科目「Integrated Computer Science(IC)」では、生成AIやデータサイエンス、3Dプリンターを活用した実体験型の学びを導入し、先行的なカリキュラムモデルを構築しています。

また、教科横断型のカリキュラムマネジメントを強化し、数学や理科への理解も同時に深める設計が特徴です。大学などとの連携による探究活動も通じて、情報技術を社会課題の解決に活かす力を育成しています。

出典:文部科学省「DXハイスクール 【富士見丘中学高等学校(私立・普通科) 】」

5. デジタル活用が学習意欲・表現力の向上につながる事例

ここでは、DXハイスクールの取り組みや情報教育の考え方を踏まえ、学校現場で広く想定されるデジタル活用の一般的な事例を紹介します。DXハイスクールで整備が進むハイスペックPCや専門ソフトは、高度なプログラミングだけでなく、探究学習のアウトプットの質を高めるためにも活用されています。特定の学校の実践事例を示すものではありません。

研究発表におけるデータ分析と視覚化

生徒は研究活動の成果を、グループごとにプレゼンテーション形式で発表します。研究テーマは地域課題や環境問題など多岐にわたりますが、DXハイスクールで導入された高性能PCを用いることで、膨大なデータの統計処理や分析が可能になります。
さらに、分析結果をグラフやインフォグラフィックスとして視覚的に表現することで、説得力のある資料を作成します。こうした活動を通して、論理的思考力と視覚的なメッセージ伝達力を養い、社会問題への関心を高める学習活動となります。

地域課題解決に向けたマルチメディア発信

学校紹介や地域の魅力を伝える広報活動において、生徒自身がコンセプトの設計から取材、コンテンツ制作までを手掛けます。中学生や保護者、地域住民など、ターゲットを明確にし、コンセプトを設定し、動画やWebコンテンツなど適切な媒体を選択します。動画編集ソフトや画像生成ソフトを活用し、インタビュー映像の編集やナレーションの追加、効果的なテロップ挿入などを行うことで、創造力と表現力を総合的に磨きます。このような活動は、情報技術を社会との接点として活用する実践的な学びであり、「情報II」で扱うコンテンツ制作の領域とも親和性が高い取り組みです。

インターンシップの活動報告

インターンシップ(就業体験)後の振り返り学習では、生徒たちはグループで協力しながら、体験内容を報告するためのプレゼンテーション動画やスライドを制作します。単なる記録にとどまらず、体験から得た気づきや学びを言語化し、他者に分かりやすく伝える構成を練り上げます。ICTツールを活用して情報を再構成するプロセスを通じて、情報の整理・分析能力やプレゼンテーション能力を身につけていきます。

6. 動画・写真編集などのICTを活用した表現育成のポイント

DXハイスクールにおけるICT機器やデジタルツールの活用事例から、生徒の表現力を効果的に育成するための実践ポイントが見えてきます。

まず重要なのは、段階的な能力開発アプローチです。1年次は基本的なリテラシーやツールの操作方法の習得から始め、学年が上がるにつれて対外的な発表へと活動の幅を広げていきます。最初は生徒一人ひとりに教員が寄り添いながら丁寧にサポートすることで基礎を固め、徐々に生徒の自主性を重視したプロジェクト型学習へと移行することで、創造性と表現力を養い、情報を効率的かつ魅力的に伝える力を身につけていきます。

また、実体験に基づくコンテンツ制作も重要です。インターンシップ報告や実習記録、地域との連携プロジェクトなど、生徒自身が実際に経験した内容を題材にすることで、より深い理解と意欲的な制作につながります。グループ学習を入れることで、生徒たちは役割分担や意見調整といった協働的な学びが促進され、自然とチームワークやコミュニケーション能力が養われていきます。

最終的には、関係者への報告会やコンテストなど、社会に向けたアウトプットの場を設けることが成長を促進します。教員やほかの生徒、外部の専門家からのフィードバックを受けることで、実践的なプレゼンテーション経験を積み、客観的な視点や情報発信力を磨くことができます。技術習得にとどまらず、こうしたプロセス全体を通じて、デジタル社会で活躍できるコミュニケーション能力と創造性を持った人材の育成を目指すことが重要です。

まとめ

DXハイスクールは、情報IIをはじめとする情報や理数教育の強化、ICTを活用した文理横断的かつ探究的な学びを通じて、高校段階からデジタル人材の育成を進めるための補助事業です。補助金を活用することで、学校規模や地域を問わず教育環境の整備が可能となり、全国的な学習機会の底上げが期待されています。制度の概要や補助内容を正しく理解した上で、自校の教育方針や課題に照らし合わせて活用を検討することが、学校の魅力向上や将来を見据えた教育改革につながるでしょう。

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