ホームThink with magazineICT教育
「実践的なお金の話は中高生には早すぎる」は本当か?──神村学園が挑んだ"金融授業"

「実践的なお金の話は中高生には早すぎる」は本当か?──神村学園が挑んだ"金融授業"

2025年06月30日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
働きやすい職場にはどのような特徴がある?整えたい環境や制度を解説

神村学園高等部(鹿児島県)様では、年に10回程度、外部の講師を呼んで出前授業を行っている。「命の授業」や「性教育」、「薬物乱用」「スマホの使い方」など学生向けの定番の内容を行う一方で、これまでとは異なる切り口の取り組みとして「金融」に関わる出前授業も実施している。

この「金融授業」はKDDI まとめてオフィスが、同じKDDI グループのauじぶん銀行と連携して実現した。受講したのは、中学3年生と高校1年生の112人。

本コラムでは、「金融授業」の内容や狙い、受講した生徒の声を紹介する。

中学・高校生が学ぶ「金融授業」の内容とは

中学3年生と高校1年生を対象とした金融授業では、よくあるお金の貯め方や管理、使い方といった一般的な内容ではなく、もう一歩踏み込んだ以下の内容で実施された。

  1. 資産形成とは
  2. 資産形成の方法
  3. トラブル・事例
  4. 投資のポイント

中高生が受講するには少し難しいと思える内容で、例えば資産形成の章では、手取り=給与支給額ー(税金+社会保険料)というように、社会人になってはじめて知るような話を具体的な数字も合わせて説明した。

当日の授業で使用したスライド資料(auフィナンシャルホールディングス 共通教材)

さらには、一人暮らしで生活するには、食費・光熱費・被服費・医療費...と何にどのぐらいのお金がかかるかも具体的に伝えた。

当日の授業で使用したスライド資料(auフィナンシャルホールディングス 共通教材)

資産形成の方法の章でも、預金や株式の話に留まらず、債券や投資信託まで触れ、金利や配当金、投資の種類ごとのリスク・リターンなどについても説明している。ここまで来ると大人でも咄嗟には答えられない内容もある。

当日の授業で使用したスライド資料(auフィナンシャルホールディングス 共通教材)

実際に受講した生徒はどう受け取ったのだろうか。

金融教育が生徒にもたらした"気づき"

話を聞いたある生徒は、それまで「金融」にまったく興味を持っていなかったが、この授業により理解できたこともあったと話す。

生徒A「NISAなどニュースで耳にしたことはありましたが、ほとんど分かっていませんでした。金融授業を受けたことでそのあたりの理解が進みましたが、全てを理解できたとまでは行きませんでした。また、親にも投資の話を少ししてみたのですが、受け流されてしまいましたね」

授業後の感想を語る生徒Aさん

別の生徒は、働いたらその分を給料としてもらえると考えていたが、いろいろと引かれることに驚いたそうだ。ただ、投資には興味を持ったという。

生徒B「金融授業は、理解できた部分と、自分には少し早いなと思う部分がありました。それでも噛み砕いて説明してもらえてよかったです。印象に残っているのは"手取り"の話です。頑張って働いた分、全てをもらえるのが給料だと思っていたので、自由に使えるわけではないと気づきました。円安とか円高とかが資産に影響するという話も興味が湧いたので、少しでも投資にチャレンジしてみたいと思いました」

授業後の感想を語る生徒Bさん

実施後のアンケートには、「金融リテラシーを身につけることが生きていくうえで必要だと知った」や「投資詐欺などから身を守るためにも知識は必要だと思えた」などの意見が挙がっていた。

私立ならではの挑戦──担当教員の思い

神村学園で金融授業の実施に至った背景には、企画を担当した本田 教諭がもともと銀行で働いていたことにある。

本田 教諭「NISAのモデルになったイギリスのISAというものがあります。これは、資産形成を促進するために導入された税制優遇付きの制度でイギリス国民の40%以上が利用するとも言われています。加えて、イギリスでは中学生から金融を授業で学んだりしています。一方、日本ではお金の話はある種タブー視されていると感じていて、このままでよいのかと疑問を持っており、校長とそういう話をする中で、金融授業の話に広がりました」

金融授業実施に至った背景を語る本田 教諭

出前授業などで、私立であることの強みを活かし、特色を出す狙いもあったという。

本田 教諭「他校ではあまり行われていない取り組みでも、特色を出すことに意味があると思いました。校長に相談するなかで、ICT機器で取引のあったKDDI まとめてオフィスの名前が挙がり、相談して実現しました」

目に見えないお金が動き、経済が回っているという仕組みを知ってもらうこと。また、出前授業がその後に行われる公民や経済の授業にもつながることを念頭に、内容にもこだわったそうだ。

本田 教諭「債券市場や為替などの話は中高生には少し難しい内容だとは思います。それでも、金融の話に触れて、一人でも関心を持つ生徒がいたら、それだけでも出前授業としては成功だと考えています。金融に限らず、いろいろなカテゴリの専門的な出前授業を行えば生徒の進路検討にもつながる可能性がありますから」

実施にあたっては保護者からなどの反発を想定していたが、まったくなかったそうだ。

本田 教諭「よくも悪くも保護者からの反応は少なかったですね。もっと何らかの反応を期待していましたがそうはなりませんでした。ただ、保護者会や入学式の段階から『自分が学校に行く際にかかっているお金の話は把握してほしい』と金融に関する話をあらかじめしていたことも、保護者からの反応が少なかった一因かもしれません。予想でしかありませんが、金融授業を実施する際は、事前に保護者会などで金融教育の必要性を説明していないとトラブルに繋がると思います」

金融授業実施後の手ごたえや今後について語る本田 教諭

金融授業実施後は1週間程度、生徒たちに為替や株価のニュースをチェックしてもらうことでより興味を促進したそうだ。

本田 教諭「為替が◯円動きましたねとか、最近では『アメリカの大統領の発言で大きく株価が動いたのってこういうことですか?』と言ってくれる生徒もいました。少なくともそうした発言が出るだけでも収穫だとは思っています」

今後はマクロ経済の話だけでなく、地元鹿児島に目を向け、「なぜあの商店は潰れないのか?」などミクロ経済に関わる出前授業なども検討していくと本田 教諭は結んだ。

KDDI まとめてオフィスでは、学校の通信環境整備はもちろん、タブレット・PCなどの端末や教材導入、さらには出前授業や校外学習の企画支援まで、幅広くご支援しています。ICT導入や運用、生徒に啓蒙を行いたいが学校にノウハウがないなど、お悩みの方はお気軽にご相談ください。

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。