業務効率化や人手不足の解消が求められる現在、電話対応の自動化は多くの企業で注目されています。その中でも、電話自動応答システムは、顧客対応の基本的な品質を維持しながら業務の負荷を軽減できる手段として、導入が進んでいます。
当記事では、電話自動応答システムの種類や仕組み、導入することによるメリット・デメリット、実際の活用シーンや選定時のポイントなどを幅広く解説します。中小企業から大手企業まで、各社のニーズに合った電話自動応答システムの導入を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
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1. 電話自動応答システムの種類と仕組み
電話の自動応答システムには、大きく分けて3つの方式があります。各方式は対話性や対話の柔軟性、技術面、適した業務に違いがあるので、用途に応じた選定が重要です。
| IVR(音声自動応答システム) | ボイスボット | 音声ガイダンス | |
|---|---|---|---|
| 対話性 | かけた側の選択肢を反映した限定的な対話が可能 | 一定程度の自然な会話が可能 | 対話は不可能 |
| 対話の柔軟性 | 中程度 | 高い | 低い |
| 技術 | DTMF・音声認識 | AI・自然言語処理 | 録音音声 |
| 主な用途 | 定型的な電話窓口対応 | 問い合わせ対応・予約など柔軟性を求められる対応 | 一方的な情報案内 |
ここでは、それぞれの仕組みや特徴を詳しく紹介します。
1-1. IVR(音声自動応答システム)
IVR(Interactive Voice Response)は、電話を受けた際に自動音声で選択肢を案内し、発信者のプッシュ操作に応じて適切な情報を提供したり、担当部署へ接続したりするシステムです。「◯◯の方は1を、△△の方は2を押してください」といったガイダンスが代表的な例です。よくある問い合わせに対しては、オペレーターを介さずに自動音声のみで対応を完結できるよう設定することも可能です。
IVRは、発信者がスムーズに操作をすることで比較的短時間で目的の情報や部署につながるため、対応スピードの向上や業務効率化を図れます。また、「選択肢が分からない方はそのままお待ちください」といった分岐設定を行うと、オペレーターへの誘導もスムーズに行えます。
従来は専用機器の導入が必要でしたが、現在はクラウド型が主流となり、専用機器を導入する場合と比較してコストや導入の手間が軽減されています。
1-2. ボイスボット
ボイスボットは、AI技術を活用して電話対応を行う自動応答システムです。従来のIVRのようにプッシュ操作を必要とせず、発信者の発話を音声認識で理解し、AIが適切な応答を返します。会話形式で対応が進むため、自然なやり取りが可能となり、オペレーターによる対応に近いスムーズなコミュニケーションを実現します。
このシステムでは、発信者が「予約を取りたい」「商品の在庫を確認したい」と話しかけるだけで、AIが意図を推定し、必要な案内を行います。さらに、機械学習を活用し、実際の通話データなどから応答内容や対応精度を継続的に改善することも可能です。多様な問い合わせに対応できる柔軟性の高さから、カスタマーセンターや予約受付などでの導入が広がっています。
ただし、構築や運用には一定のコストがかかるため、業務規模や目的に応じた検討が必要な点には注意しましょう。
1-3. 音声ガイダンス
音声ガイダンスとは、着信時にあらかじめ録音された音声を自動で再生し、情報提供を行うシステムです。IVRやボイスボットとは異なり、発信者との対話や操作はともなわず、一方的に情報を案内する形式に特化しています。たとえば、「現在、営業時間外です。明日9時以降におかけ直しください」といった案内が代表的です。
このようなガイダンスは、電話の混雑時や定休日の対応、緊急連絡先の周知など、単純な情報提供に有効です。IVRと比べて機能がシンプルなケースが多く、比較的安価かつ短期間で導入できる点も魅力です。
ただし、対話ができないため、発信者の意図に合わせた対応はできません。中小企業や小規模店舗での活用に適した手法です。
2. 電話自動応答システムを導入するメリット
電話自動応答システムを導入することで、業務の効率化や対応品質の向上といった多くのメリットが期待できます。ここでは、導入によって得られる主な利点を詳しく解説します。
2-1. 電話対応業務を効率化できる
電話自動応答システムは、日々の電話対応業務の効率化に大きく貢献します。特に少人数で業務を行っている中小企業では、電話対応のたびに作業を中断しなければならず、業務効率が低下しやすい傾向にあります。
電話自動応答システムを導入すれば、担当者への取り次ぎや一次対応を自動化できるため、従業員が本来の業務に集中しやすくなります。
また、営業電話や間違い電話など、対応の必要がない着信を自動音声で振り分ければ、無駄な対応時間を削減できます。コールセンターにおいては、顧客の用件に応じて適切な担当部署へダイレクトにつなげることで、オペレーターの負担を軽減し、応対時間の短縮と対応の質の向上が期待できます。
このように、電話対応業務の効率化は、企業全体の生産性向上にもつながります。
2-2. 電話の取りこぼしを減らせる
電話が集中する時間帯や、担当者が不在の状況でも、電話自動応答システムを導入していれば着信に対して適切な初期対応を行えます。発信者がガイダンスに従って操作を行うことで、必要な情報を得られる仕組みを整えておけば、電話の取りこぼしによる機会損失を防げます。
さらに、ボイスボットやIVRのシステムでは、顧客からの問い合わせ内容を記録し、後ほど担当者が折り返すといった対応も可能です。「電話がつながらない」「何度かけても応答がない」といった顧客の不満を軽減できるため、結果的に顧客満足度向上や、企業の評価にもつながります。
2-3. 24時間365日対応が可能になる
電話自動応答システムを導入することで、企業の営業時間に関係なく、24時間365日の電話対応が可能となります。夜間や休日でも、自動音声によって案内や問い合わせ受付を行えるため、平日や日中に電話をかける時間が取れない顧客にとって、利便性が大きく上昇します。
また、時間外に受けた問い合わせについては、システムに記録された内容をもとに、後日担当者が対応する体制を整えることも可能です。電話に常時対応できる体制は、問い合わせの分散や業務負荷の平準化にもつながり、社内の働き方改善にも貢献します。
2-4. 電話対応業務に伴う負担を軽減できる
電話対応は、業務の中でも集中力を要する作業の1つです。突然の着信によって作業が中断されることや、時には対応が難しいお問い合わせを受けることもあり、従業員の業務効率や心理的な余裕に影響を及ぼす場合があります。
こうした状況において、電話自動応答システムを導入することで、対応の一部をシステムに任せることができ、従業員の負担を軽減し、より快適な業務環境づくりに寄与します。
たとえば、ボイスボットを活用すれば、簡単な問い合わせは自動で完結するので、オペレーターは複雑な案件に集中できます。また、IVRによって内容ごとに担当を振り分ければ、対応者にとって不慣れな問い合わせに応じる必要がなくなり、精神的な負担の軽減につながります。業務ストレスの軽減は、従業員の定着率向上や離職防止にも効果が期待できる重要なポイントです。
2-5. 顧客満足度が向上する
電話自動応答システムは、顧客満足度の向上にも大きく貢献します。たとえば、IVRを用いた的確な振り分けにより、担当外の部署を経由せずスムーズに適切な窓口にたどり着けるようになり、「たらい回し」による不満を防げます。
また、キャンペーン期間や繁忙期などで問い合わせが集中しても、ガイダンスで一次対応を自動化することで、「電話がつながらない」という不満も軽減できます。さらに、自動応答とSMSやWebフォームなどの外部ツールを連携させることで、顧客に複数の選択肢を提供でき、顧客にとっての利便性が高まります。こうした対応力の高さは、顧客からの信頼を得ることにつながり、企業のブランドイメージの向上にも寄与します。
3. 電話自動応答システムのデメリット・注意点
電話自動応答システムは業務効率化や顧客満足度の向上に役立つ一方で、運用にあたってはいくつかの注意点も存在します。ここでは、導入時に知っておきたいデメリットとその対策について解説します。
3-1. 発信者の意図に沿ってシナリオ設定が必要になる
電話自動応答システムを効果的に運用するためには、発信者がどのような目的で電話をかけてくるのかを事前に想定し、それに応じたシナリオを設計する必要があります。シナリオの分岐が不適切だった場合、発信者は目的の選択肢にたどり着けず、結果的にオペレーターへの問い合わせが増加し、業務負荷が高まる可能性があります。
電話自動応答システムの導入時は、過去の問い合わせ履歴や顧客のニーズを分析し、分かりやすく分類されたメニュー構成を心がけることが大切です。また、シナリオは導入時の設定で完結させるのではなく、運用中に見直しと改善を繰り返しましょう。定期的な見直しと改善のサイクルによって、よりスムーズな対応が可能となり、発信者とオペレーター双方の負担軽減につながります。
3-2. 複雑な問い合わせには対応が難しい
電話自動応答システムは、定型的な問い合わせには高い効果を発揮しますが、複雑またはイレギュラーな内容には対応が難しい傾向があります。たとえば、顧客が複数のサービスに関する質問を同時にした場合や、専門的な判断が求められる内容では、AIやIVRが適切な対応を返せず、誤った案内につながる可能性も否定できません。
このような事態を避けるには、自動応答の対応範囲をあらかじめ明確に定めることが重要です。複雑な用件に関しては、初期対応をシステムで行った後にオペレーターへ引き継げる体制を整えておくと安心です。
また、ボイスボットを導入する場合は、学習データの蓄積とチューニングを継続的に行い、対応精度を高めていくことが求められます。人とシステムの適切な分業体制が、電話自動応答システムを効果的に運用するためのポイントです。
4. 電話自動応答システムの活用シーン
電話自動応答システムは、受電対応だけでなく、予約受付や自動発信、SMS送信などさまざまな場面で活用できます。ここでは、代表的な活用シーンを6つ紹介しますので、自社の運用目的に合った活用方法を検討する際の参考にしてください。
4-1. 受電の一次対応
IVRやボイスボットは、顧客からの入電に対して一次対応を自動で行う仕組みとして活用されています。たとえば、電話をかけてきた相手に対して「○○については1を、△△については2を押してください」といったガイダンスを流すことで、用件別に適切な部署や担当者へスムーズに振り分けることが可能です。
また、混雑時には「ただいま電話が込み合っています」と自動で案内したり、折り返しの希望を受け付ける設定を行ったりできます。このような一次対応の自動化により、電話の取りこぼし防止と業務負荷の軽減を両立できます。
4-2. 受付・予約電話対応
IVRやボイスボットは、受付や予約といった電話対応の自動化にも高い効果を発揮します。顧客が電話で希望日時やサービス内容を伝えると、音声認識やプッシュ入力を通じて予約情報を受け取り、予約システムと自動で連携して手続きを完了させることが可能です。
これにより、オペレーターが逐一予約情報を確認・入力する手間がなくなるため、業務効率の向上と対応漏れの防止につながります。飲食店や病院、美容院、工事の日程調整など幅広い業種で活用されており、顧客側にとっても「いつでも予約・受付ができる」というメリットがあります。
4-3. よくある質問への対応
電話自動応答システムは、よくある質問への対応にも有効です。たとえば、「営業時間」「支払方法」「返品手続き」などの定型的な問い合わせについては、IVRによるプッシュ選択やボイスボットによる音声認識を活用することで、録音済みの音声やAIの返答で即座に対応できます。
これにより、顧客は待ち時間なく疑問を解消でき、オペレーターへの接続を希望する顧客の割合も抑えられます。また、SMS機能と連携し、該当するWebページのURLを送信することで、より詳細な情報を提供することも可能です。業務負荷を抑えつつ、顧客満足度の向上にも貢献する活用方法です。
4-4. ユーザーへの自動発信
IVRやボイスボットを用いた自動発信は、情報提供やリマインドを目的としたアウトバウンド業務でも活躍します。たとえば、商品の発送予定日や支払い期限、予約確認などを対象顧客に一斉送信し、電話に出た相手に対して自動音声で情報を案内できます。
さらに、つながらなかった相手に対しては、指定した間隔や回数でリダイヤル(再発信)する設定も可能です。自動発信機能を用いることで、重要な連絡の漏れを防ぎつつ、オペレーターの手間を削減できます。緊急時の一斉連絡やアンケート調査など、用途に応じて柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
4-5. SMS送信
電話自動応答システムとSMSを連携させることで、通話中に伝えきれない情報をテキストで補足する活用方法もあります。たとえば、問い合わせに対して「詳細は以下のURLをご覧ください」と案内し、そのURLをSMSで送信することで、顧客は必要な情報にすぐアクセスできます。
また、予約確認や支払い通知、キャンペーン情報などもSMSで送信することで、顧客との接点を維持しながら利便性を高められます。音声だけでは誤解が生じやすい内容も、テキストで補足すれば正確に伝わります。SMS送信はIVRやボイスボットと併用し、電話対応の質をさらに高める施策として有効です。
4-6. 多言語対応
多言語対応が求められるシーンでも、IVRやボイスボットを活用すれば柔軟に対応することが可能です。たとえば、初回のガイダンスで「日本語は1を、英語は2を」と案内し、選択に応じた言語のガイダンスやAIによる会話を提供できます。これは、観光業や在留外国人向けのサービスを展開する企業にとって非常に重要な機能です。
近年ではAIの音声認識や自然言語処理の精度も向上しており、より自然な対話による多言語応答が可能になっています。対応可能な言語の拡張や翻訳精度の向上によって、より多様な顧客に安心して利用してもらえる環境を構築できます。
5. 電話自動応答システムの選び方
電話自動応答システムを導入する際は、単に機能があるかどうかだけでなく、自社の業務内容や目的に合致しているかを慎重に判断する必要があります。ここでは、システム導入時にチェックしておきたいポイントについて解説します。
5-1. 自社に必要な機能があるか
電話自動応答システムには、IVR・ボイスボット・音声ガイダンスなど、それぞれ異なる特性を持つ複数の方式が存在します。さらに、通話内容の自動文字起こしや内容分析機能、SMS送信との連携といった付加機能が搭載されているサービスもあります。
業種や業務内容によって求められる機能は異なるため、導入前に自社の課題や利用シーンを明確にし、必要な機能が備わっているかを確認しましょう。不要な機能を省くことで、コストの最適化にもつながります。
5-2. 導入費用は高すぎないか、希望した時期までに導入できるか
電話自動応答システムの導入には、初期費用と月額費用が発生します。オンプレミス型では機器の設置や工事が必要になることもあり、導入までに時間がかかる傾向にあります。半面、社内環境に完全統合できることで、カスタマイズ性が高く、セキュリティ面でも自社のポリシーに沿った運用がしやすいという利点があります。厳格な情報管理を求められる業種では、有力な選択肢となります。
一方で近年主流のクラウド型サービスは、インターネット環境に依存するため、通信障害のリスクや、外部サービスにデータを預けるリスクは存在します。実績のある信頼性の高いサービスを選定することが肝要です。大きな利点は、工事不要で低コストかつ短期間での導入が可能なことです。申し込みから即日~1週間以内に利用開始できるケースもあり、スピード感を求める企業にはこちらが適しています。
費用と導入スケジュールの両面を検討し、無理のないサービスを選びましょう。
5-3. セキュリティポリシーと合致しているか
電話自動応答システムは、顧客の個人情報や企業内の機密情報を扱うことがあるため、自社のセキュリティポリシーと一致しているかの確認が欠かせません。特にボイスボットを導入する場合は、AIに学習用データを提供することになるので、提供したデータがどのように使用されるかや、二次利用の有無についても事前の確認が必要です。
クラウド型サービスを利用する場合は、外部サーバーにデータを保存することになるため、サーバーの設置場所、通信の暗号化、アクセス制限の仕組みなど、運用面での安全性をしっかり確認し、安心して利用できるものかを判断しましょう。
5-4. サポート体制は十分に整っているか
IVRやボイスボット、音声ガイダンスは、導入後の運用や設定変更においてつまずきやすい側面があります。そのため、トラブルや不明点に迅速に対応できるサポート体制が整っているかどうかは、サービス選定時の重要な判断基準となります。
具体的には、問い合わせ対応のスピード、ヘルプデスクの有無、マニュアルや導入支援の充実度などを確認しておきましょう。また、導入後の継続的な運用改善や機能追加も視野に入れ、長期的な伴走支援が可能なベンダーを選ぶことは、電話自動応答システムの選定において重要な要素です。
まとめ
電話自動応答システムは、業務の効率化と顧客対応の質を両立させるための有効な手段です。IVRやボイスボット、音声ガイダンスなど、各方式には異なる特徴があるので、目的や業種に応じて使い分けましょう。
導入によって得られるメリットは多く、業務の省力化、電話の取りこぼし防止、顧客満足度の向上などが期待できます。適切なシステムを導入し、電話対応の質を高めながら、企業全体の生産性向上と顧客満足度向上を目指しましょう。
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