【特別講演編】「まなびのミライ~学校交流会2025~」開催レポート
2025年8月1日、「まなびのミライ~学校交流会2025~」を開催した。第4回目の開催となる今年度は「未来をつなぐICTと学校づくり」をテーマに実施。全国から70校86名の教職員の皆さまにご参加いただき、大変盛況な会となった。
当日のコンテンツ内容から「特別講演」「生徒講演」「パネルディスカッション」を抜粋してお届けする。
~生徒講演編はこちら~
~パネルディスカッション編はこちら~
特別講演編では、主体性について「みんな自分でやりたい」をテーマに、学校法人堀井学園 理事、学校法人白馬インターナショナルスクール 理事を務める堀井 章子氏の講演内容を紹介する。
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特別講演:みんな自分でやりたい
 
<登壇者プロフィール>
学校法人堀井学園 理事
学校法人白馬インターナショナルスクール 理事
堀井 章子 氏
学校法人堀井学園 HP:
https://horii1940.ac.jp/
学校法人白馬インターナショナルスクール HP:
https://www.hakuba-is.jp/
堀井氏は、国内や外資系企業で経理を経験後、横浜翠陵中学・高校、横浜創英中学・高校で教員として勤務した。その後、学校法人堀井学園の法人事務局次長・総合企画室長を経て、2021年からは理事を務めている。また、長野県にある白馬インターナショナルスクールの立ち上げにも関わった。現在は、学校法人の運営や教育研究、人材育成など幅広い活動を行っている。
教員一人ひとりの幸せや、やりたいことの実現
当日使用されたスライド(何を自分でやりたいですか)の抜粋
堀井氏がまず話題に挙げたのは「教職員一人ひとりの幸せや、やりたいことの実現について」だ。一般企業から教員に転身した堀井氏は「企業には研究開発をする部門があるのに、当時の学校にはそういった部門がない」ことに気づく。
そこで、当時勤務していた学校で「ヒト・モノ・カネ、何の制限もなかったら、教員として何をしたいか」と教員に聞いて回ったという。しかし、多くの教員は「考えたこともなかった」といった反応で、すぐにその答えは返ってこなかった。
後日、考えを語ってくれた教員は何人もいたが、日々の業務をこなすことで精一杯になっている現実を目の当たりにしたという。
「教員自身がやりたいことをできていない」状態に危機感を抱いた堀井氏は、堀井学園の教員および職員6人で、研究開発チームを結成。
毎週水曜日を研究開発に充てる日とし、授業などの業務は一切入れず「教員として何がしたいか」ディスカッションを行い、時にはほかの学校へ視察に出かけた。その他、研究した内容を実際の授業で実践し、フィードバックをもとに改善したり、論文としてまとめたり、理事たちとディスカッションしたりと、さまざまな研究活動を行った。
堀井氏が「教員として何がしたいか」という問いをここまで大切にしたのは、「生徒を幸せにするためには、教員が幸せであるべき」という考えがあったからだ。
しかし、活動を続けていく中で堀井氏は「誰かに幸せにしてもらうのではなく、幸せでいられるかどうかは自分次第だ」と気づく。
つまり幸せは誰かに与えられるものではなく、大切なのは生徒・教員自身のあり方であり、幸せでいられる環境・システムを生徒とともに模索していくのが大切だと指摘する。
生徒がやりたいと思うには内発的動機が重要
「自分がやっている」という実感と主体性について語る堀井氏
ここで話題は、生徒の「自分でやりたい」に移り「PBL(Project Based Learning)」を例に挙げた。PBLとは、生徒が主体的に課題を発見し、解決策を検討・実行する学習方法であるが、堀井氏はそれを授業にうまく取り入れることは難しいと話す。
「例えば『学校周辺の地域の50年後の姿を考える』や『商店街の活性化』といったテーマは定番だが、『なんで私がそんなこと考えなきゃいけないの?』と思っている生徒もいる」と語り、生徒が「やりたい」と思うには、生徒自身の個人的な体験や感性から生まれる「問い」、つまり内発的動機こそが重要だと指摘した。
そして、この内発的動機を導くために重要なのが、SEL(Social Emotional Learning)だという。日本語では「社会性と情動の学び」と訳され、自己理解力、他者理解力、自己コントロール力、対人関係構築力、意思決定力の5つのスキルを育てることを目指す教育的な枠組みだ。
堀井氏は、SELが土台になければPBLはうまく機能しないと話す。しかし、「現状、先生たちにはSELにまで時間を割く余裕はない」と話し、別の考え方を提示した。
それが、「ディープエコロジー(Deep Ecology)」という、地球環境と生態系を考える学問を起源とする考え方だ。堀井氏は、この「ディープエコロジー」の一つの概念を教育視点で考えることが、内発的動機の発見につながるとした。
ディープエコロジーの概念を教育に応用し、新しいことを始めるための考え方
当日使用されたスライド(ディープエコロジーの概念)の抜粋
「ディープエコロジー」の概念には、「Deep Experience」「Deep Questioning」「Deep Commitment」という3つの要素がある。
これを堀井氏は「自分だけの経験」「自分だけの問い」「自分が突き動かされるもの」と解釈し、実際に堀井氏自身の経験や問い、行動について説明した。
そのうえで、「誰もが、自分だけの経験や問い、突き動かされるものを持っている。それを認識することが内発的動機につながる」と話した。認識するためには、文字に書き起こしたり、対話をしたりすることが重要で、「ぜひ生徒とともにやってみてほしい」と提案した。
最後に、堀井氏は本講演のお題に触れ「子どもたちに身につけてほしい力」について、「みんなが生き生きと過ごすためにも、みんなの価値観を大事にする、そんな世の中になってほしい」と話した。
一方で、「PBLやSELなどさまざまな考え方を紹介したが、実際に新しいことを始めるのは大変」だとし、そのような状況でも行動を続けるために変化を創り出すTwo Loopsモデルを紹介し、まずはDeep Commitmentではじめ、長期的な視点でそれを進めていくことを提案した。
実際に、堀井氏が率いていた研究開発チームの例を挙げ、「約6年間の活動の中で、当時のメンバーが研究開発部門の部長を務めたり、有志で研究を行ったりと、そのときにまいた種が成長していった」と紹介。
教員たちの日々の業務の大変さにも触れたうえで、堀井氏自身がやりたいことは「みんなが生き生きと生命をまっとうする」ことだとし、「先生方はヒト・モノ・カネ、何の制限もなかったら、教員として何をしたいか」問いかけて締めくくった。
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最後に
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