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【福岡開催】「地域をつなぐ まなびのミライ in Fukuoka」イベント開催レポート

【福岡開催】「地域をつなぐ まなびのミライ in Fukuoka」イベント開催レポート

2025年10月30日掲載(2025年10月29日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
【福岡開催】「地域をつなぐ まなびのミライ in Fukuoka」イベント開催レポート

全国5都市を巡り、延べ98校121名もの教職員の皆さまにご参加いただいた「地域をつなぐ まなびのミライ」。その第1回目を、2025年8月18日に福岡で開催した。
当日は「九州の未来をつなぐ DX時代の未来を拓く組織づくり」をテーマに、講演と実践事例紹介を実施。教育実践につながる新たな知見とネットワークが生まれる実りある会となった。

本記事では、イベント開催レポートとして、青翔開智中学校・高等学校 校長 織田澤 博樹氏、西南学院中学校・高等学校 情報科主任 甲斐 恭平氏にご登壇いただいた講演および実践事例紹介の様子を抜粋してお届けする。

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講演:学校づくりは「かたち」から

<登壇者プロフィール>

橋本知彦 教諭

青翔開智中学校・高等学校 校長
織田澤 博樹 氏

学校HP:https://seishokaichi.jp/

青翔開智中学校・高等学校は、探究、共成、飛躍を建学の精神とする中高一貫校。生徒数は中高で約300名が在籍し、昨年度には創立10周年を迎えた。

織田澤氏は、電気通信大学大学院で情報通信工学を修了後、日立製作所でシステム開発に従事。その後キャラクタービジネス業界を経て鳥取に移住し、同校の立ち上げに設立準備室室長として関わり、2020年度より現職を務める。

代謝建築論「か・た・ち」の思想になぞらえた学校運営論

織田澤氏による講演では、昨年度に創立10周年を迎えた青翔開智中学校・高等学校で実施されてきた取り組みや、未来を担う人材育成に対する自身の哲学、学校運営におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)、組織作りへの考えを語った。

「か・た・ち」の思想について説明する織田澤氏

まず、織田澤氏は青翔開智中学校・高等学校での取り組みを、九州国立博物館などの設計で知られる建築家の菊竹 清訓氏の「代謝建築論」における「か・た・ち」の思想※1になぞらえて紹介。

※1 菊竹氏の提唱するものづくりの方法論。構想が人の手により技術フレームとなり、そこにエネルギーが加わることで具体的な形になるというもの。

同校では「探究」「共成」「飛躍」、3つのワードを建学の精神として掲げ、生徒が自身に備わった能力(探究)、自主自律の基に他者と助け合える魅力(共成)を磨き、想像を超える新たな自分へ変身(飛躍)できるような環境づくりを進めてきたと語った。

このビジョンを実現するためのフレームとなるのは、生徒がどこからでも情報にアクセスし、探究できるようなアナログとデジタルを融合した校舎であり、中学1年生から高校3年生まで週2時間行われる探究の授業だという。

青翔開智では学年ごとに異なるテーマを扱うグループ探究、生徒一人ひとりが個人の研究テーマを定める課題研究と、段階的に探究の授業が行われており、同校の「全ての授業が探究につながる」という理念に基づく「探究スキルラーニング」や、「STEAM」「共成と飛躍(SEL)」の授業も取り入れられている。

織田澤氏は「探究」の授業を重要視する背景のひとつとして、「高校で学問の入口に触れることで、進学時のミスマッチ を防ぎ、将来の進路について早期段階から深く考える機会」を得られる重要性を説いた。
講演では同校での教育実践の結果にも言及されており、探究した学問領域と関連性の高い大学へ進学する生徒の多さや、鳥取県では珍しかった海外大学への進学が継続していることを紹介。
さらに、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール※2における生徒の自己評価アンケートでは独創性、問題発見力、解決力において特に大きな成長が示されたと報告した。

※2 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、文部科学省が2002年(平成14年度)から始めた教育事業で、将来の科学技術人材を育成するために、理数系教育を強化する高校を指定する制度。

学校DXと組織運営の哲学

青翔開智での取り組みについての紹介を終えた織田澤氏は、学校におけるDXや組織運営について自身の考えを述べた。

建学の精神における3つのワードについて話す織田澤氏

織田澤氏は日本とアメリカのITに対する期待値の比較データに触れ、日本では業務効率化やコスト削減といった「守りのIT活用」を志向する一方、アメリカはサービス開発強化やビジネスモデル変革といった「攻めのIT活用」を目指していると分析。

どちらも重要であるとしながらも、資料をもとに労働生産性の向上効果においては攻めの活用が守りに比べて大幅に高いことを示し、学校教育におけるICT活用も「攻め」が重要であると強調。そのうえで、授業におけるICTの積極的な活用こそが、学校教育の「攻めのICT活用」である、と説明した。

さらに、同校における攻めのICT活用の具体的な取組として、若い教員に、授業へのICT活用の方法を考えさせる、デジタル教材開発への挑戦を推奨する、といった環境を紹介した。

織田澤氏は続けて組織運営における決定権のあり方についても言及。青翔開智では企業経営でも用いられる「エンパワーメント※3」を組織運営に取り込んでいる。教員に決定権を与えることで、一人ひとりが独自性をもった授業や、ほかの教員と協働しながら教材開発に積極的に取り組める環境が構築されていると説明した。

※3 従業員一人ひとりが自律的に判断し行動できるよう、権限や責任、情報、機会を与えること。

また、教員と生徒の関係性についても言及し、両者には心理的に大きな格差があると指摘。

青翔開智ではこの格差を認識した上で、着座した際、物理的に生徒の目線が教員よりも高くなる家具配置や、生徒指導を生徒支援と言い換えるなど、言葉使いの工夫を通じて、真に対等な関係構築を意識していると語った。

最後に織田澤氏は未来の人材に必要とされる力に言及。
人間が操る道具としてのAIが普及する現代では、問いを設定できる生徒、つまり、「問い続けられる人」を育てることが求められてきたが、今後は自律的に判断できるようなAIやロボットの登場を見据え、問い続けられるだけでなく「AIなどと協働できる人間性」も育てるべきであるという考えを示し、講演を締めくくった。

実践事例紹介:生徒がイキイキする学校づくり

<登壇者プロフィール>

橋本知彦 教諭

西南学院中学校・高等学校
情報科主任 甲斐 恭平 氏

学校HP:https://hs.seinan.ed.jp/

西南学院中学校・高等学校は「キリストに忠実なれ」を建学の精神に掲げるキリスト教主義の学校。

甲斐氏は福岡雙葉中学校・高等学校の理科教員としてICT推進に携わり、その後フリースクールで不登校の生徒と関わる経験を経て現職に着任。3Dプリンター導入、大手コンサルティング企業と連携したデータサイエンスのワークショップ企画、ChatGPT活用の推進を行っている。教員の役割を、外部リソースやAIと生徒をつなぐ「コーディネーター」と捉え、生徒が生き生きする学校作りを目指す。

現場を巻き込む実践的施策

甲斐氏は講演で、教育業界での11年の経験を振り返り、コロナ禍における急速なICT導入の推進や、現職で実施する学校教育におけるICT活用の事例について語った。

自身の経歴について話す甲斐氏

まず、甲斐氏はコロナ禍で経験した福岡雙葉時代のICT推進の取組を振り返り、組織作りにおける重要なポイントを紹介した。
福岡雙葉ではコロナ禍における臨時休校期間中、子どもたちの学びを止めないよう早期からICTを活用したオンライン授業を実施した。
常勤・非常勤を問わず、全科目で60名以上の教員が動画を作成し、平日5日間、1日5コマ程度の授業配信を実現。2カ月で1,200本以上のコンテンツを公開し、この取組はメディアにも大きく取り上げられた。

甲斐氏はこの取組の成功を、協力的な同僚教員に恵まれ、全員が一丸となった結果だったと振り返りつつ、DX時代の組織作りには「リーダーの発信」「ICT環境の整備」「現場の巻き込み」という3つの要素が重要であると説く。
中でも現場の巻き込みは特に重要であり、一部の意欲的な教員でプロジェクトを進めるのは比較的容易だが、全職員に同じスケールで波及させるには高いハードルがあると指摘した。
続けて、現場を巻き込む施策として、臨時休校期間中の全教員による授業配信を行ったほか、継続的なICT研修や公開授業を通じた、スキルの水平展開が有効であったと語った。

具体的には、福岡雙葉では当時、ICTに関する研修を年間5回以上実施していた。その際、研修に参加する教職員の視点を変える工夫として、講師は役職者ではなく若手教員が務める形を採用していた。

また、2020年11月に同校で実施された公開授業では、新型コロナ対策として見学者の3密を避けるため、ICTを活用した「説明教室」が設置された。
この教室では、授業担当とは別の教員が説明役を務め、別室の授業の様子を中継しながら内容や意図を解説した。
担当の教員は、見学者に説明するために授業設計を深く理解する必要があり、その過程で授業担当者を中心としたチームが自然に形成された。
このチーム内での協働により、教員同士がお互いの授業への理解を深め、ICTスキルの水平展開を促進する仕組みになったと話す。

甲斐氏はこれを、3密回避という目的があったからこそ現場に納得してもらえた取組だったと振り返りながらも、この構図は今でも組織作りに有効な仕組みと考えている、と語った。

教育ICTと生成AIの活用事例

授業配信当時について振り返る甲斐氏

講演後半では教育におけるICT導入の理想と具体的な活用事例の話題に移った。

甲斐氏は教育ICTの理想を「生徒が文房具のように自由に使う」段階とし、ICT端末を活用した学習方法の変革を提唱。具体的なICTの活用事例として、従来の紙の問題集を解いて提出させる課題から、「単元の内容を3分動画にまとめて提出させる」課題に切り替えたことを紹介した。

この新たな課題形式では、生徒が自身の理解をもとに作成した動画を教員が確認することで、生徒一人ひとりの理解度をより正確に把握できるようになったと説明。
続けて、この経験から、生徒は「伝える側」に立つことで、授業の理解が深まり、学習効率の向上にもつながるのではないかと持論を述べた。

講演の終盤では近年急速に成長を見せる生成AIの活用についても言及。ChatGPTを用いて自身が作成した情報科の教材や、教員間で共有可能な時間割の調整支援ツールをGPTs ※4で自作した事例を紹介した。

※4 GPTs(カスタムGPTs)は、OpenAIのChatGPTに搭載された機能。特定の目的に合わせてカスタマイズされたAIアシスタントを自分で作成・利用できる仕組み。

甲斐氏はコーディング知識が不足していても生成AIを活用すれば教材やツールを効率的に生み出せる時代に入ったと説明し、続けてAIを積極的に活用して生徒との「有機的な時間」を創出すること、さらには生徒に対してAIとの「正しい出会い方」を示すことの重要性を強調した。

最後に、教員の役割は知識提供から「外部リソースやAIと生徒をつなぐコーディネーター」へと変化したと強調し、さまざまな取組を通じて「生徒がイキイキとする、そのような学校づくりに寄与したい」と締めくくった。

最後に

KDDI まとめてオフィスでは、KDDIが長年培ってきた高品質でセキュアな通信を軸に、教育現場で役立つ多様なソリューションを提供しています。通信環境の整備から、ICT教育に必要なタブレット・パソコンなどの端末や教材も、ワンストップでご提供可能です。
また、導入後の活用についての積極的なサポートや、教職員の皆さまを対象にしたセミナーや研修なども実施しております。ICTの導入や運用についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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