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【名古屋開催|講演編】「地域をつなぐ まなびのミライ ㏌ Nagoya」イベント開催レポート

【名古屋開催|講演編】「地域をつなぐ まなびのミライ ㏌ Nagoya」イベント開催レポート

2025年10月30日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

全国5都市を巡り、延べ98校121名もの教職員の皆さまにご参加いただいた「地域をつなぐ まなびのミライ」。その第4回目を、2025年8月21日に名古屋で開催した。
当日は「中部の未来をつなぐ 生徒の可能性を育む教育DX」をテーマに、講演とパネルディスカッションを実施。教育実践につながる新たな知見とネットワークが生まれる実りある会となった。

本記事ではイベント開催レポート前編として、樟蔭中学校・高等学校 指導教諭・中高ICT主幹 川浪 隆之氏にご登壇いただいた講演の様子を抜粋してお届けする。

~パネルディスカッション編はこちら~

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講演:中部の未来をつなぐ ~生徒の可能性を育む教育DX~

<登壇者プロフィール>

樟蔭中学校・高等学校
指導教諭・中高ICT主幹・情報科教諭
STEAM Lab.コーディネーター
大阪経済法科大学 非常勤講師
川浪 隆之 氏

学校HP: https://shoin-chuko.sakuraweb.com/jhs/

樟蔭中学校・高等学校は3Dプリンターやレーザーカッターを導入したSTEAM Lab. を2021年度に設置、令和6年度高等学校DX 加速化推進事業(DXハイスクール)に採択され、2025 年度から生徒と共にSTEAM Roomの空間デザインに取り組んでいる。

川浪氏は、樟蔭中学校・高等学校にて2018 年度よりICT主幹を務める。教職歴は24年で、現在は指導教諭も兼任。大阪経済法科大学ではデータサイエンス基礎・情報処理基礎の2講座を担当している。

樟蔭中学校・高等学校におけるSTEAM教育

STEAM教育に関する今までの取組について語る川浪氏

科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)を統合したSTEAM教育を実践する場として、2023年度より樟蔭高等学校はインテルのSTEAM Lab実証研究における協力校に選ばれた。

2021年の設置当初は間に合わせの機材も多かったが、この取組によって同校は、ゲーミングデスクトップPCがずらりと並ぶような高水準の環境を構築できたという。
川浪氏は全国的に情報教室が減りつつある現状に触れ、探究のためのデスクトップPCが置いてある環境が重要ではないかと自身の考えを語った。

そして、2025年度よりDXハイスクールの予算も活用したSTEAM Roomを運用開始。
川浪氏は「最上位モデルのものから触れ、自分に合うレベルのものを探していく」というモットーのもと、先述のハイエンドなデスクトップ PCに加え、ラップトップ PCはプレゼンなどに使用できるエントリーモデルや、グラフィックボードを積んだクリエイティブな活動に堪えうるモデル、そしてMacBook Air®など、自由にさまざまな経験ができるよう取り揃えていると説明。

そのほか情報の授業でも使用するマイクロビットや撮影系の機材など、最新テクノロジーに触れるような環境を整えていると語った。

これらの環境を利用した実際のものづくり事例としては、授業で行われた「デジタルものづくり」の入口に定めているキーホルダー作りが紹介された。3Dモデリングの授業を行ったのち、放課後にSTEAM Labでの実践を行う。

授業中に全員分のキーホルダーを完成させることは困難だとして、興味のある生徒をSTEAM LabやSTEAM Roomへ誘導する方針だ。
情報デザイン分野への入り口として、キーホルダーなどの身近な題材から基礎知識を身に着け、発展したものづくりにつなげていくこと、また、無理なくAdobe®などのソフト活用へと、パスをつなぐことが重要だと説いた。

制作事例・展示発表

多数の制作事例を紹介する川浪氏

講演の後半では、STEAM LabやSTEAM Roomを利用した活動事例が紹介された。プロトタイピング主義に則って、川浪氏からオファーした物を生徒主体で制作してもらうという。

取り組んだものはマイクのスタンドやメガネ、モップの取っ手、教室の札、ネームタグ、収納箱などさまざま。「ジャストサイズものづくり」と称して、身のまわりにあったら便利な小物を形にする宿題なども、夏休み期間を利用して取り組ませているとのことだった。

「ジャストサイズものづくり宿題」の造形物

そうした取組が、子どもたちにとっての発明の第一歩となる、と川浪氏は語った。突拍子もない発想や見たことのない対象を課題にしても戸惑ってしまうため、身近なものから少しだけ改善する、という視点が大切なのだという。

「3人家族なのに、歯ブラシ立ては4人用。本当は3人用が欲しいのではないか?と3人用の歯ブラシ立てをつくるのがジャストサイズものづくり」と例示を交えつつ説明した。

また、40本ほどのフィラメント※1を購入し、出力物に反映できるカラーの幅を20色以上に大きく広げたところ、生徒の活動が3倍、4倍と活発になったという。

※1 熱溶解積層方式の3Dプリンターで用いられる糸状の樹脂素材。3Dプリンターでは加熱したフィラメントを積み重ねることで立体物を造形する

最後に、EXPO2025 大阪・関西万博での展示発表の活動を紹介。マイクロビット教育財団のオファーを受けて、高校2年生2名と中学3年生3名、計5名のチームで行った探究活動の内容を説明した。
OODAループ※2を活用したタスク管理と、プロトタイピング思考による協働的で対話的な探究活動を通じて、チームの自信向上につながる成功体験を与えることができたと報告した。

※2 「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の4ステップからなる意思決定プロセス

EXPO2025 大阪・関西万博での展示発表の様子

川浪氏は過去にイギリスへ渡航した際、現地の教諭に「君の生徒はシャイなのではなく自信がないだけ」と指摘された経験があるという。そこから、自信がなくて動き出せない子たちには、プロトタイピング思考で共同的に作業させ、自信につなげていくアプローチが効果的だと結論づけた。

加えて、「探究学習では、考えるための技法を最初に身につけさせることが重要。生徒が主体的に学びを深めていくために、導くことが教員先生の仕事」と補足し、探究的な学習は本人の意思が重要だが、そこに至るまでの指導は教員の役割であることを強調した。

最後に川浪氏は、「修正ありきで物事を進行させる『プロトタイピング思考』の重要性を強調し、一貫してその価値を発信してきた。ぜひ今日の話しを思い出し、今後生徒と接する場面で、『何でもまずはやってみようよ』という姿勢を大切にしてもらえると嬉しい」と締めくくった。

~パネルディスカッション編はこちら~

最後に

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