【名古屋開催|パネルディスカッション編】「地域をつなぐ まなびのミライ in Nagoya」イベント開催レポート
全国5都市を巡り、延べ98校121名もの教職員の皆さまにご参加いただいた「地域をつなぐ まなびのミライ」。その第4回目を、2025年8月21日に名古屋で開催した。
当日は「中部の未来をつなぐ 生徒の可能性を育む教育DX」をテーマに、講演とパネルディスカッションを実施。教育実践につながる新たな知見とネットワークが生まれる実りある会となった。
本記事ではイベント開催レポート後編としてルーテル学院中学・高等学校 校長 鶴山 克郎 氏、広島国際学院中学校・高等学校 田中 満彦 氏、愛知教育大学附属名古屋中学校 児玉 和優 氏、樟蔭中学校・高等学校 川浪 隆之 氏にご登壇いただいたパネルディスカッションの様子を抜粋してお届けする。
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登壇者情報
<モデレータープロフィール>
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ルーテル学院中学・高等学校
校長
鶴山 克郎 氏
<パネリストプロフィール>
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広島国際学院中学校・高等学校
総務課ICT 担当
田中 満彦 氏 -
愛知教育大学附属名古屋中学校
社会科 教諭
児玉 和優 氏 -
樟蔭中学校・高等学校
指導教諭・中高ICT主幹
STEAM Lab.コーディネーター
川浪 隆之 氏
テーマ1:子供たちの可能性を育むための取組
パネリストの紹介を終えると話題はさっそく議論の本題、「子供たちの可能性を育むための取組」に突入。
パネリストに質問を投げかける鶴山氏
田中氏は広島国際学院中学校・高等学校が精力的に取り組んできたプログラミング教育を紹介。同校では中学校開校時の校舎全面建て替えの際に、東京大学大学院情報学環の教育研究棟を参考としたIoT実験室を設置。
IoT実験室はプログラミングによって照明や空調が制御できるようになっており、
生徒は「コードによって実際の機器が動作する」という体験を通じて、プログラミングの実践的な理解を深められるという
同校ではこの実験室を活用し、1年ではマイクロビットやブロック言語、2年ではPython、3年ではそれらを応用してスマートビルディングの仕組みや目的を学ぶといった、段階的なプログラミング教育を展開している。こうした取組は、情報1の必修化に先立つ7年前から実施してきたと語った。
FWラボ(Fuchu Well-being Labo)について語る児玉氏
続いて指名された児玉氏は愛知教育大学附属名古屋中学校で実施されるFuchu Well-being Labo(以降、FWラボ)を紹介。
FWラボは、「鮮やかなソリューションでウェルビーイングを実現させよう!」をテーマに、
「中学生でも社会を変えられる」という実感を得てもらうことを目的とした探究学習プログラムだ。
この取り組みは、中学2年生から3年生の期間にかけて実施され、総合的な学習の時間と宿泊行事を組み合わせることで、
生徒が自らの視点で課題に向き合い、解決のアイデアを生み出すことを目指している。
今年度の3年生向けに実施されたFWラボでは生徒の「好き」「得意」「興味」「強み」を軸に社会の課題とその解決策を探究させたのちに、修学旅行を利用して探究した内容とマッチする企業・団体に生徒が訪れ、アイデアの売り込みが行われたという。
FWラボでは生徒がAIなどを活用しつつ、課題の探究から企業の選定、訪問調整の連絡までを自ら行う。これに対し鶴山氏は「企業とコンタクトを取る際、期待通りの反応が得られないケースも想定されるが、すべてを生徒に任せることに不安はなかったか」と質問。
これに対し児玉氏は、「生徒相手でも厳しい対応を取られたケースもあった」としながらも、「大人の時間を使うには対価が求められる。子どもが相手でも双方にメリットがなければ時間を割いてはもらえないという現実を知ることも、探究学習とは異なる形の学びであり、貴重な社会経験になる」と回答した。
最後に指名された川浪氏は、講演で語った取組を振り返りつつ、自身が「デジタルものづくり」の実施に至った経緯を説明した。
~樟蔭中学校・高等学校における川浪氏の取組はこちら~
川浪氏は、SDGsのような大きな課題をテーマとした探究では、生徒たちが未来に目を向けても解決できないまま終わってしまうことが多く、度々残念さを感じていると指摘した。
続けて、スケールを調整し、解決するまでを目標に据えた児玉氏の取組が持つ意義に言及しつつ、自身の場合は「デジタルものづくり」が、身近な課題を手軽に解決できる手段であり、達成感を得られ自信にもつながる点が特徴であると語った。これは、川浪氏ならではの探究の在り方だと考えているという。
テーマ2:子供たちの変化、感じられたこと
後半に差し掛かると、取組を通じて見られた「子供たちの変化や感じられたこと」についてのディスカッションに突入し、鶴山氏は再び田中氏を指名した。
KDDI まとめてオフィスと連携した関西研修を振り返る田中氏
田中氏は「関西研修」を振り返り、この取組では、学校側が意図した「広島にない企業が世界でどう動いているのかを知る」という目的に加え、生徒の学習に対する考え方や向き合い方にも影響を与えた可能性があると指摘。
その背景として、研修に参加した生徒が学年においてトップ層の成績を残していることを挙げ、普段は触れる機会のない世界を知ったことで、前向きな取り組みや自主学習をするきっかけになったのではないかと分析した。
続けて田中氏は、今年大阪大学の1年生になった中学校の1期生から、「中学校のプログラミングが一番役に立っている」との連絡があったことを紹介。開校当時から精力的に取り組んできたプログラミング教育が、生徒の進路や学びに確かに役立っていることを実感したと語った。
次に児玉氏はFWラボの活動を振り返り、生徒から、「テーマの設定から訪問先の選定まで、すべて任せてもらえた」「自分達が持つ好きなことや興味のあることをしっかりと探究できたことがよかった」といった好意的な声が寄せられたことを紹介。
自身の視点からも、生徒の主体性が大いに発揮された取組で、子供たち自身もいろいろな成長を感じられた活動になったのではないか、と語った。
続いて指名された川浪氏は、マイクロビット教育財団のオファーを受け実施した、Expo2025 大阪・関西万博でのマイクロビットの魅力を伝える展示活動を振り返り、教員が生徒を導くことの重要性を強調した。
万博でのグループ活動で生徒に見られた変化を語る川浪氏
川浪氏は万博での活動中、チームで活動しているにもかかわらず、自分ひとりで全てを把握し、動かなければならないと思い込んでしまった生徒がいたと説明。
その生徒は投げ出してしまいそうになったものの、川浪氏がやるべきこと・やらなくていいことを具体的に示したところ、チーム活動の在り方を再認識し、生徒も自身の力を発揮できたという。
川浪氏はこの出来事を振り返り、教師がサーチライトのように適切なサポートができれば、生徒もしっかりと自信を持って一歩踏み込むことができると語った。
パネルディスカッション終盤、鶴山氏は最後のテーマとして、今回紹介された取組の中で、ICTやAIがどのように役立ったのか教えてほしいと、ICT活用の話題を展開。
話題を振られた田中氏は、KDDI まとめてオフィスと連携した関西研修を振り返り、ICTというものが社会でどのように活用されているか知ることで、知識から生徒の世界を広げることができたと説明。
プログラミング教育においてはライトのオン・オフなど、実際に変化を目にすることで、生徒たちに絵空事ではないリアルな学びが提供できたのではないかと語った。
続いて指名された児玉氏は、FWラボの活動から、AIを活用することで生徒の作業効率が向上したと評価。
その具体例として、生徒が東京の企業を知らなくてもAIを使ってテーマに合った企業をリストアップしたり、アイデアが行き詰ったときにAIを相手にした壁打ちでブラッシュアップしたり、生徒のアイデアを具体化する手助けになったと説明した。
なお、児玉氏は生徒のAI活用について、教師がAIの正しい使い方を教える必要があるとの考えを示しており、AIに頼りすぎて、生徒のアイデアからAIのアイデアにならないよう導かなくてはならないと強調した。
次に川浪氏は万博での活動から、ICTツールがタスク管理のようなシステム的な支援だけでなく、生徒のメンタルの部分でもいい影響を与えていたのではないかと分析した。
ICTの活用によりグループ活動のタスク管理や進捗の確認が容易になり、進行状況が見えづらいことへの不安が解消されたと説明。
アナログなタスク管理では不透明になりがちだった進行状況が可視化されたことで、生徒は安心して取り組むことができ、継続的なコミュニケーションも促進されたと語った。
パネルディスカッションの締めくくりに鶴山氏は、教育現場におけるICTやAIの有用性を再認識できたと総括。
急速な進化を見せる生成AIの今後に期待しつつも、生徒にAIの正しい使い方を教えるというパネリストの指摘を踏まえ、教育の現場ではやはり「人と人とのコミュニケーション」、特に「先生方と生徒とのコミュニケーション」が不可欠なものであると締めくくった。
最後に
KDDI まとめてオフィスでは、KDDIが長年培ってきた高品質でセキュアな通信を軸に、教育現場で役立つ多様なソリューションを提供しています。通信環境の整備から、ICT教育に必要なタブレット・パソコンなどの端末や教材も、ワンストップでご提供可能です。
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