「Starlink Business」と「情報連携ツール」が導く、医療DXにおける最新戦略を宮城県支部学術集会で発表。
2025年10月25日、仙台市中小企業活性化センターにて「日本医療マネジメント学会 第17回宮城県支部学術集会」が開催されました。医師、看護師、介護職、事務職などさまざまな職種の医療関係者が集結する中、KDDI まとめてオフィスは『医療DX』をテーマとするランチョンセミナーを共催。通信インフラから日常の業務改善まで、医療活動を幅広く支えるサービスとして多岐にわたる支援力をアピールしました。本記事では、KDDI まとめてオフィスの講演の様子をご紹介します。
「日本医療マネジメント学会 第17回宮城県支部学術集会」開催概要
本学会は、日本医療マネジメント学会宮城県支部が主催し、医療マネジメントに関する学術・研究の交流を目的として毎年開催されています。医師、看護師、薬剤師、介護職、事務職、医療系学校関係者など、地域医療を支える幅広い職種の参加者が集い、地域医療の発展を目指しています。
第17回となる今回は、「地域医療・介護・福祉連携の現実と今後~我々の業・技・知で、ひとのいのちを大切にできるか~」をメインテーマに掲げ、高齢化の進展と複雑化する在宅医療・介護連携の現実を踏まえ、地域完結型の医療・介護提供体制の構築に向けた議論が行われました。
特別講演・教育講演に加え、一般演題の発表などが開催され、地域社会における医療・介護・福祉の連携をどのように実現し、事業を継続していくかという喫緊の課題に対し、熱心に知見を共有する場となりました。
セミナー第1部:医療現場におけるスマートフォンの活用事例とDX推進の第一歩
本学会の中で、KDDI まとめてオフィスは約1時間のランチョンセミナーを開催。『医療DX』という大テーマの中で、田部智・松田向平が登壇。医療業界におけるDX推進について、スマートフォンの活用事例とともに取組を紹介しました。
KDDI まとめてオフィスと、Starlink Businessの有用性
まず最初に、東日本統括本部 東北支社長 田部智が登壇。KDDI まとめてオフィスの紹介とStarlink Businessの概要を説明しました。田部はStarlink Businessについて「通常、衛星通信は速度が遅いものですが、Starlinkは下りで350 Mbps・上りで40 Mbpsなど、非常に遅延が少ないサービスになっています。だからこそ、医療現場や災害拠点病院などでも活用できます。例えば、2024年の能登半島地震の際には、避難所に350機ほど設置したことで、通信環境を届けたという実績もあります」と実際の事例を交えながら、その特徴を伝えていきました。
最後に田部は「私たちは『はたらく未来を変えていく。』というブランドスローガンを掲げています。ぜひ東北の医療従事者の皆さまのDX推進で、働き方改革のお手伝いができればと思います」とその想いを語りました。
医療業界を取り巻く、働き方の現在地
続いて、プロジェクト営業統括本部 DXプロダクト推進本部DXコンサルティング1部 医療DXグループリーダー 松田向平が登壇。医療現場におけるスマートフォンの活用について紹介しました。まず初めに「スマートフォンが求められる背景」として、PHSからスマホへの移行の背景、医師の働き方改革や医療を取り巻く財政状況などを説明。
その上で、スマートフォン導入のメリットについて「スマートフォンは、単なるPHSの代替機ではなく、働き方を変えるためのプラットフォーム。コストや人的リソースが限られた中でもできることがたくさんあります」(松田)と語りました。
医療DXの成功の鍵は"優先順位"
さらに松田は、「いわき市医療センター」「済生会小樽病院」「松園病院介護医療院」といった実例で、さまざまな導入例を紹介。その中でもお客さまから選ばれた理由として「病院の数年後ありたい姿を共に描き、どの順番で、どんな組み合わせで投資をすれば、最小のコストで最大の効果が出るか病院全体を考えて視点で提案してくれた、という声をいただきました」と、他社との差別化となるKDDI まとめてオフィスの強みを話しました。
最後に、医療のDX化について「どの病院・医療機関も、予算が潤沢にあるわけではありません。だからこそ、各社からの提案のインプットの中で本当に成果の出るものが何か、その上で、それぞれの病院にとって何が最優先事項なのかを決めること。そして、現行設備やコスト削減の手法を見直していく。そうすると、意外と諦めていたことができたりする」と、その成功の鍵となる考え方を伝え、会場の関心を集めて締めくくりました。
セミナー第2部:在宅医療・介護連携を支えるICT基盤 「IIJ電子@連絡帳サービス」による現場の実装と可能性
さらに第2部では、株式会社インターネットイニシアティブ 喜多剛志氏が登壇。在宅医療・介護連携をITで支援する「IIJ電子@連絡帳サービス」の現場実装と可能性をテーマにお話ししました。このサービスは、名古屋大学附属病院との共同研究から開発されたもので、導入地域は全国に広がり、介護予防や教育連携、さらには平時だけでなく災害時や救急時の連携にまで活用範囲が拡大しています。
在宅医療の現場の課題を解決する「IIJ電子@連絡帳サービス」
喜多氏はまず、業界の課題を説明しました。在宅医療・介護の現場では、患者さんを中心に多岐にわたる専門職(医師、看護師、薬剤師、介護職、行政など)が連携します。しかし、各職種が異なる施設から訪問するため、情報連携には紙や電話、FAXなどのアナログな手法が用いられ、大きな課題となっていました。それを解決するためのサービスとして、「IIJ電子@連絡帳サービス」を紹介。喜多氏は「在宅医療の現場では、患者さまのベッドサイドに"連絡帳"と呼ばれる大学ノートがあり、専門職の方々が交換日記のような形で情報連携しています。これを手元のスマホや事務所のPCから見ることができるのがこのサービスです。別の医療従事者の方が、どんな処置をしたかを把握した上で効率的に訪問することができます」。さらに導入には、行政主導で行うことがポイントだと説明。「医師会や介護側が主導すると連携に偏りが出てしまいます。だからこそ、ここに行政の出番がある。また、行政予算で導入することで、専門職や行政の方の負担を極力減らすモデルを提案しています。導入においては、専門職が本来業務にしっかり注力出来ることも大事になります」(喜多氏)。
災害、救急、教育まで広がる「地域のプラットフォーム」
さらに喜多氏は、同サービスがコアな医療・介護業務支援に留まらず、地域にとって非常に重要な課題である災害時の要援護者支援、そして救急時の連携のプラットフォームへと活用範囲を拡大していると説明しました。
特に災害時の活用に対しては「要援護者台帳は、情報が古かったり、支援者が安否確認をしようとしても、確認が重複してしまったりといったことが頻繁に起きています。こうした情報伝達の遅延を防ぐためには、普段から使い慣れたツールを用いることが不可欠です。"IIJ電子@連絡帳サービス"であれば、専門職の方が担当の住民に訪問し、安否情報をスマホで送れば、支援メンバーや行政担当者など全員に通知されます。これにより、行政側や現場の業務を格段に減らすことができます」とその利点を伝えていました。
最後に「災害のときはこの道具、救急のときはこの道具と状況毎に道具が異なってくると、専門職の方はどの道具を使えばいいのかと迷ってしまう」と課題を総括。「1つの道具ツールで複雑な課題に対応していける」という点が、「IIJ電子@連絡帳サービス」の最大の強みであると結びました。
登壇後インタビュー
ランチョンセミナー後、発表者である松田にインタビューを実施。医療DXの現在の取組と状況について話を聞きました。
医療DXの波が業界全体に浸透。関心の高まりを捉えていく
「去年と比較すると、お客さまから『スマートフォンに変えたい』『より具体的な提案が欲しい』という声が増えているように感じます。それは、周囲の病院で導入事例が増えてきて、働き方の環境整備が人材獲得競争に影響し、自分たちも遅れをとってはならないという医療機関の危機感の現れも要因の一つにあるのではないかと感じています。とある病院では診察時にAIを導入し、診察時の会話を文字起こしして、医療用語もきちんと認識しながら必要な形式で電子カルテに自動転記するというシステムを導入していました。実際、看護師の方たちに対して同様の話をしたところ、『そんなことができるならすぐやりたい、こんなことはできないのか』と多くの質問を受けました。病院の中では、看護師の方の働き方や人材確保を大切に考えている院長も少なくないので、そうした病院に対して支持される医療DXを推進していきたいと考えています」(松田)
「前例」が大きな一歩に。医療DXを牽引する成功事例の獲得
「私たちは今年、新たに、京都岡本記念病院や北摂総合病院といった病院と医療DXのスタートラインとなるプロジェクトを共に開始することができました。医療業界では著名な病院で前例があることが大きな強みになるので、これは大きな一歩になったと考えています。KDDIgroupは、他社に比べると取組の開始が遅かった状態でしたが、後発だからこそお客様視点に立ち、お客様にとって有意義な差別化要素を積み重ねてきたことで、結果が出始めています。ただ、本当の意味での"働き方改革"はまだまだこれからです。スマートフォンを導入して、ナースコールと連携して、電子カルテを閲覧できる、というだけではお客様は満足しません。より病院で働く方々と同じ視点に立った病院の横断的な医療独自の設備や病院職員の皆様の様々な職種、業務を理解する必要があります。医療は、赤字財政・ほかの業界にはない機器との連携、医療独自のセキュリテイガイドラインの遵守、ITリテラシの問題など、難易度が高い業界です。
しかも、命に向き合っている人たちを相手にするので、あいまいな部分が許されず、現場で働く看護師の方や医者の方を見ていると身が引き締まり、患者さんのためにも少しでも役に立ちたいという思いが湧いてきます。自分たちの活動が医療機関や患者さんを良い方向に導くと信じて今後も活動していきたいです」(松田)
最後に
こうして、約1時間にわたって行われたKDDI まとめてオフィスのランチョンセミナーは、参加者の皆さまの熱心な関心と拍手で幕を閉じました。本セミナーでは、能登半島地震でも実績を残した「Starlink Business」の有用性、そして在宅医療・介護連携を災害時や救急時にも広げる「IIJ電子@連絡帳サービス」の活用事例をお伝えする機会となりました。
しかし、セミナーの中でもあったとおり、真の「働き方改革」はまだこれからです。
KDDI まとめてオフィスは、単なるデバイスやソリューションの提供だけに留まらず、お客さまに寄り添ったトータル的なコンサルティングから支援します。"はたらく未来を変えていく。"というコーポレートスローガンを旗印に、さらなる医療現場のDX推進を牽引してまいります。
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