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コスト削減とは?具体的な方法・手順や企業の成功事例も紹介

コスト削減とは?具体的な方法・手順や企業の成功事例も紹介

2025年12月24日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
コスト削減とは何か、その具体的な方法や手順、さらには企業の成功事例についてご紹介いたします。

企業経営において「コスト削減」「経費削減」は、経営基盤を強化し持続的な利益を確保するための戦略的な取り組みです。近年の急激な物価高や人件費、エネルギーコストの上昇は、企業利益を圧迫する大きな要因となっています。このような厳しい環境下で、いかに支出を適正化し、利益を最大化するかが、企業の持続的成長のカギとなります。

当記事では、企業活動における主なコストの種類や削減の進め方、具体的な実践方法、他業界の成功事例などを解説します。

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1. コスト削減・経費削減とは?

企業が利益率を高めるために支出を減らす施策

コスト削減とは、企業が利益を高めるために支出を抑える取り組みのことです。単に目先の経費を減らすというより、限られた資源を効率的に活用し、売上を維持・向上させながら利益を最大化することを目的としています。

会計上、コストは「売上原価」や「販売費及び一般管理費(販管費)」として分類され、材料費や人件費、家賃、通信費が含まれます。これらの「見えるコスト」に加え、会議や事務処理などにかかる「時間的コスト(非効率性)」も重要な削減対象です。経費削減は短期的な節約ではなく、持続的に利益構造を改善する経営戦略の核心と言えます。

1-1. コスト削減に取り組む目的

企業がコスト削減に取り組む最大の目的は、利益を最大化し、赤字を回避することです。売上が一定でも、支出を抑えると利益を増やせ、新規事業や設備投資、人材育成など、企業の成長につながる分野へ再投資できます。また、固定費の抑制はキャッシュフローが安定し、不測の事態に備えることが可能になります。

一方で、必要なコストまで削減してしまうと、業務の非効率化や社員のモチベーション低下、商品・サービスの品質低下につながる恐れがある点には注意が必要です。過度な削減は、たとえ短期的な利益をもたらしたとしても、長期的には企業価値を大きく損なう可能性があることを理解し、戦略的な判断が求められます。

2. 企業にかかるコストの種類

人件費・採用関連費、設備・オフィス関連費、仕入・外注・物流費、研究開発・広告宣伝費、税金・そのほか経費

企業にかかるすべてのコストを一度に見直すのは難しいため、まずは支出の大部分を占める主要項目から整理する必要があります。コスト削減戦略の基本は、売上に関わらず発生する「固定費」と、売上高に応じて変動する「変動費」の性質を理解することです。企業が計上するコストは、旅費交通費、支払手数料、消耗品費、支払保険料、修繕費、福利厚生費など多岐にわたりますが、ここでは企業活動において特に影響が大きい5分類に分けて解説します。

2-1. 人件費・採用関連費

人件費は、給与や賞与、社会保険料、退職金、福利厚生費などを含み、企業コストの中でも最も大きな割合を占める固定費です。さらに、新卒・中途採用にかかる求人広告費や人材紹介手数料、教育研修費なども企業にとって大切な支出です。

ただし、人件費は「削減が最も難しいコストの1つ」とされています。安易な給与カットや人員削減は、社員のモチベーション低下や離職率の上昇を招く上、労働基準法や労働組合法などの法令違反につながる恐れがあるためです。人件費削減は極めて慎重に行う必要がある領域なので、単に経費削減を目的として行うのではなく、業務効率化や人材配置の最適化などの観点から取り組むことが求められます。

2-2. 設備・オフィス関連費

設備・オフィス関連費には、建物やオフィスの賃料、水道光熱費、修繕費、設備の購入・リース費用が含まれます。近年では、IT機器の導入や維持に伴うコスト(購入費、ソフトウェア利用料、システム保守費、クラウド利用料など)も増加しています。

特に通信費は、契約プランや回線数を見直すことで削減効果が出やすい項目です。設備関連コストは企業運営の基盤を支える経費であり、単純な削減ではなく「効率的な運用」と「将来への投資」のバランスが求められます。

2-3. 仕入・外注・物流費

仕入費用や外注費、物流費は、製造業・小売業をはじめ多くの業種で変動費として大きな割合を占めます。仕入費は商品や原材料の調達・製造にかかるコストであり、取引先との価格交渉やロットの最適化により削減が可能です。

外注費は業務委託や専門サービスへの依頼に伴う支出を指し、必要性を定期的に見直すことでコスト効率を改善できます。物流費については、輸送ルートの見直しや共同配送の活用、在庫管理システムの導入などが効果的です。

ただし、過度なコスト削減は品質低下や納期遅延を招く可能性があるため、コスト削減とサービス品質の両立を意識したサプライチェーン全体の最適化が重要です。

2-4. 研究開発・広告宣伝費

研究開発費は、新製品や新技術を生み出すための投資的コストであり、企業の長期的な成長を支える支出です。研究開発を削減しすぎると、将来的な競争力の低下や技術革新の停滞を招きかねません。

一方、広告宣伝費は、テレビCMやWeb広告、販促イベントなどを通じて顧客に認知を広げるための費用です。KPIを定め効果測定を行い、費用対効果の高い媒体や施策へ集中投資することが肝要です。

研究開発・広告宣伝費はいずれも「将来の収益を生み出すための投資」であり、短期的な削減よりも中長期的な成果を見据えた戦略的な配分が必要です。

2-5. 税金・その他経費

税金には法人税や法人住民税、消費税などがあります。法人税は利益に応じて課税されますが、法人住民税の「均等割」は赤字であっても支払い義務が生じる税負担です。税金の削減は「節税対策」という特殊なアプローチであり、通常の経費削減とは異なります。ただし、適切な会計処理や制度活用によって一定の節税効果を得ることは可能です。

また、「その他経費」には雑費や交際費などが含まれます。内容不明のまま多額に計上されている場合、無駄な支出が潜んでいる可能性があるため、特に精査が必要です。

★税金に関する内容は一般的な情報提供を目的としており、弊社は税務の専門家ではありません。詳細な節税対策については、税理士などの専門家にご相談ください。

3. コスト削減の具体的な方法

コスト削減を行うときは、主要領域で優先順位を付け、短期で効く施策と中長期の構造改革を組み合わせます。品質や社員の満足度を損なわない線引きを明確にし、効果測定を前提に段階的に実施しましょう。
ここでは、コスト削減のための具体的な方法を解説します。

3-1. 人件費の見直し

人件費を見直すときは、主に業務効率化と交通費の削減を目指すとよいでしょう。

業務効率化のためには、業務フローの仕組み化とマニュアル化で属人化を減らし、残業時間や新人の育成期間を短縮します。フレックスタイム制や勤怠の可視化で時間外労働を抑制し、繁閑に応じたシフト最適化で生産性を高める方法もあります。また、評価制度を成果連動へチューニングし、教育投資を重点化して「少数精鋭でも成果が出る体制」をつくります。

交通費の観点では、出張のWeb会議置き換えで抑制し、定期券・都度精算の見直しや出社基準の明確化でムダを削ることが可能です。

3-2. 採用手法の見直し

採用・育成のコストは、採用単価(イニシャルコスト)と早期離職による採用コスト(ランニングコスト)によって増幅します。求人媒体のみに頼る採用から転換し、社員紹介によるリファラル採用や、企業から候補者に直接働きかけるダイレクトリクルーティングも活用すると、母集団の質を上げつつ費用を抑えられます。自社サイトの採用ページ強化、選考のオンライン化、面接回数の最適化も有効です。

また、入社後の定着率向上は、採用費・教育費の回収に直結します。オンボーディング(育成プロセス)の標準化、メンター制度、早期の目標合意とフィードバックの運用で離職リスクを下げ、採用や再教育の再発コストを抑制しましょう。

3-3. 外部委託の活用

コア以外の業務を外部委託すると、固定的人件費や設備の維持管理費を抑え、固定費を変動費に近づけられます。たとえば、経理の記帳・支払、カスタマーサポート、倉庫・出荷、IT保守、法務・労務の一部などは候補になりやすい領域です。

外部委託を行うときは、業務を標準化し、手順書とデータ連携の方式を整えると、切替コストと運用リスクを下げられます。ベンダーは複数社を比較し、単価だけでなく可用性・冗長化・セキュリティ要件を確認します。

外部委託を活用し、社内人材を直接的に価値を生むコア業務へ集中させると、総合的な付加価値を高められます。

3-4. 経費・オフィスコストの削減

経費は小さな改善の積み上げが大きく効いてきます。

ペーパーレス化はコピー用紙・インク・リース・保管スペースに加え、郵送代の削減にも有効です。請求書や稟議の電子化を導入し、承認リードタイム短縮と誤入力防止で間接コストを下げましょう。

法人カード活用やインターネットバンクのまとめ振込で振込手数料を削減したり、エコドライブの徹底やルート最適化による車両費・燃料費の圧縮をしたりするのも1つの手です。

3-5. 仕入・購買プロセスの見直し

売上原価に直結するため、材料費・商品仕入の改善は利益への波及が大きい領域です。

仕入先は集約と多様化のバランスを取り、価格だけでなくリードタイム短縮や欠品率の改善についても交渉しましょう。不採算商品の停止・仕様見直し、代替材の検討、共同購買の活用も有効です。

需要予測と生産・販売計画を連携させ、過剰在庫や欠品の発生を抑えることでトータルコストを削減できます。

4. コスト削減を進める場合の基本手順

コスト削減を成功させるには、感覚や思いつきではなく、段階的なプロセスに基づいて進めることが大切です。ここでは、コスト削減を進める際の具体的な手順について解説します。

4-1. 現状のコストを把握する

コスト削減の第一歩は、会社全体の支出構造を正確に把握することです。人件費、設備費、仕入費、広告費などを項目ごとに整理し、どの費用が大きな割合を占めているかを明確にします。この「費用の可視化」が、削減の方向性を見極める基盤になります。

特に大切なのが、過去3~5年分のデータを比較し、推移や増減の傾向を分析することです。エクセルなどで「勘定科目別・年度別」の一覧を作成すると、無駄が見える化しやすくなります。感覚的な判断ではなく、数値に基づいたコスト構造の分析が、的確な削減策を立てる出発点です。

4-2. 削減可能な項目を洗い出す

コスト構造を把握したら、次に削減できる項目を具体的に洗い出します。この段階では、「不要な支出」だけでなく、「代替手段で削減できるコスト」や「業務改善により中長期的に削減できるコスト」も検討対象に含めます。

既存の慣習にとらわれず、聖域を設けない「ゼロベース思考」で見直すよう心がけましょう。長年契約しているサービスや外注先でも、条件を見直すことでコスト削減の余地が生まれる場合があります。

また、削減の検討では、短期的な支出だけでなく、メンテナンス費や更新料などの「将来の固定費」も考慮することが必要です。全社的に項目を洗い出すことで、見落としや偏りを防ぎ、実効性のある改善計画を立てられます。

4-3. 削減目標と計画を設定する

削減対象が明確になったら、次に「いつまでに、どの程度、どの方法で削減するか」という目標と実行計画を策定します。目標設定には、SMARTモデル(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限を定める)を活用すると効果的です。

ただし、無理な削減目標は社員のモチベーションを損ない、生産性や品質低下を招くリスクがあります。そのため、短期での即効施策と中長期の改善策を分け、優先順位を明確にして実行しましょう。また、コスト削減によってどの程度の利益改善が期待できるかを数値化し、部門ごとの責任範囲を明示することで、実現性の高い計画を立てられます。

4-4. 削減施策を社内に共有する

計画を立てた後は、全社員への周知が欠かせません。コスト削減は経理部門だけでは実現できず、全社的な意識と協力体制が必要です。経営陣が率先して姿勢を示し、「なぜコスト削減が必要なのか」「削減によってどのような効果が得られるのか」を明確に伝えましょう。単なるトップダウンの命令ではなく、各部署に具体的な目標を落とし込み、社員自身が改善に関わる仕組みを整えることが重要です。

また、削減が進むことで賞与や福利厚生など、社員にもプラスの影響があることを説明すれば、協力を得やすくなります。共有は定例会議や社内報、イントラネットなどを活用し、継続的に進捗を確認する体制を整えると効果的です。

4-5. 削減施策を実行し検証改善を行う

PDCAサイクルを継続的に回し、削減・最適化することが重要

施策を実行した後は、その効果を検証し、改善を繰り返すプロセスが重要です。単に「削減を実施して終わり」ではなく、PDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルを継続的に回し、削減の定着と最適化を図ります。

また、コスト削減は一度成功しても、事業拡大や外部環境の変化により再び非効率が生じる可能性があります。定期的なモニタリングとフィードバックを行い、常に最適なコスト構造を維持する仕組みを確立することが、持続的な経営改善につながります。

5. コスト削減の成功事例

コスト削減は、単なる経費の圧縮ではなく、経営体質の強化や業務効率化を実現するための戦略的施策です。実際、多くの企業が創意工夫によってコストを抑えながら、生産性やサービス品質の向上にも成功しています。

ここでは、建設・流通・航空・医療といった異なる業界で成果を上げた4社の事例を取り上げ、各企業が人件費、変動費、固定費などの主要コストを、ICT活用やサプライチェーンの最適化といった取り組みを通じて、どのように削減し、経営改善と両立させたのかを具体的に紹介します。

5-1. 馬淵建設

関東・東海エリアで建設・インフラ事業を手がける馬淵建設様は、ICT導入による働き方改革と通話コスト削減の両立を実現した事例です。従来は社員の私用携帯を業務に使用していましたが、通話料の補助管理や情報漏えいリスクに課題がありました。

そこで全社員に「auスマートフォン」を貸与し、さらに「Cisco Webex with KDDI」を導入して社内の固定電話をほぼ廃止。クラウドベースの音声環境を整備した結果、社員は電話取次から解放され、従来比で通話料を約96%削減しました。加えて、共有電話帳アプリ「PHONE APPLI PEOPLE」によって、協力会社を含む関係者との連絡も迅速化しました。

現場では、3DスキャンやCCUSカード(建設キャリアアップシステム)読み取りなどの施工管理用アプリケーションを活用し、測量や人員管理の効率化が実現。ICTを軸にした取り組みは、通話コスト(通信費=固定費)の削減にとどまらず、建設現場全体の生産性向上と業務改革へと発展しています。

5-2. セブン-イレブン

株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、店舗会計システムの電子化によって環境配慮とコスト削減を同時に実現しました。

2005年10月から、全国の店舗において伝票・帳票類の大半を紙運用から電子データ運用へ移行したことにより、発注から承認、報告までを各店舗がオンライン上で完結し、印刷や本部への紙帳票提出を廃止。完全なペーパーレス化を進めました。

この改革によって、年間約2億2,000万枚、全体の約9割に相当する伝票・帳票を削減。印刷用紙や保管スペース、人件費などを含め、加盟店・取引先・本部の合計で年間約14億円のコスト削減を達成しました。さらに、紙資源の大幅削減により環境負荷の低減にも貢献しました。

出典:株式会社セブン-イレブン・ジャパン「店舗会計システム変更による 伝票・帳票のペーパーレス化について」

5-3. 日本航空

日本航空(JAL)は1990年代後半以降、定期昇給や諸手当、退職金制度の見直しなど、他社に先駆けて人件費抑制策を導入してきましたが、2000年代後半にはさらに踏み込んだ施策を断行。グループ全体で年間500億円規模の人件費(固定費)削減を実施しました。

具体的には、業務内容や人員配置を抜本的に見直し、2009年度末までにグループ人員を4,300人削減し、人的生産性を10%向上。運航・客室・空港・予約部門など各領域でトヨタ生産方式を取り入れ、業務の効率化を図りました。

さらに、燃費効率の改善による燃油費削減(2010年度までに14%効率化)にも成功。機材のダウンサイジング、機内搭載品の軽量化、エンジン洗浄などの地道な工夫を重ね、燃油費の年間削減額は最大で約180億円に達しました。

出典:JAPAN AIRLINES「JAL グループコスト削減策詳細」

5-4. 湘南鎌倉総合病院

湘南鎌倉総合病院は、医業原価と経費の徹底管理によって大幅なコスト削減を実現した医療機関の代表例です。事務部主導でコスト構造を可視化し、「医業原価、経費の管理は事務部の責任」という明確な方針のもと、全院的な削減体制を構築しました。

まず、薬剤業務では院外処方への切り替えを実施。薬剤師の負担軽減や患者の待ち時間短縮に加え、診療報酬改定や薬価変動に対応した適正な原価管理を実現しました。これらの医業原価(変動費)と経費(間接固定費)の削減、さらに各部署が主体的に交渉を行い、合計で約6億8,700万円の経費削減も達成しています。

その他、清掃や燃料の契約単価見直し、事務用品の購入先変更など地道な取り組みの積み重ねにより、経費削減と同時に医療の質と安全性を維持した経営改善を実現しました。

出典:徳洲会グループ「コスト削減の成功例 湘南鎌倉総合病院が報告」

まとめ

コスト削減は、支出を単純に削る作業ではなく、業務の効率化や経営資源の再配分を通じて企業の生産性を高めるプロセスです。人件費や設備費、仕入費など各領域の特性を踏まえた上で、短期施策と中長期的な改善策を組み合わせることが大切です。

「削減=我慢」ではなく、「効率=成長」へとつなげる発想こそが、持続的な経営改善の鍵です。自社の現状を正確に把握し、戦略的な視点でコスト構造を最適化することで、競争力の高い企業体質を築けるでしょう。

KDDI まとめてオフィスでは各種デバイスの手配や通信・通話環境の構築/見直し、クラウドサービス、セキュリティ対策、オフィスの移転やリニューアルまで、豊富なサービスとソリューションを用意し、お客さま課題の解決に向けた最適な提案を行っています。コスト見直しの際には、ぜひお気軽にご相談ください。

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