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紙の検査表・指示書を"やめる"だけで現場がまわる──タブレット×クラウドのスモールDX

紙の検査表・指示書を"やめる"だけで現場がまわる──タブレット×クラウドのスモールDX

2026年02月26日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

工場の検査表や作業指示書を紙で運用していませんか?紙への記入、転記、共有という一連の流れには、見えないロスが潜んでいます。実は、毎日使う帳票をタブレット×クラウドに切り替えるだけで、転記作業が消え、情報共有がスピードアップし、品質トラブルのリスクも減らせるのです。本記事では、小さく始めて確実に成果を出す「スモールDX」の進め方を解説します。

「紙のムダ」は時間のロスだけでなく"ミスの温床"に

紙の帳票運用は、時間のロスだけでなく、品質リスクを生む原因となり得ます。

製造現場で毎日のように使われる検査表や作業指示書。記入→転記→共有という流れの中で、「探す時間」「二重入力」「記録漏れ」といった問題が日常的に発生しています。

ある食品工場では、食品製造に関わるさまざまな品質管理を紙の帳票で行っており、その数は約40種類におよび、1ヵ月間に使用する帳票の枚数も2万枚を超えていました。

さらに深刻なのは、紙での運用が招く「品質リスク」です。紙での運用では、手書きでの記入や回覧の際に、水やアルコールで内容が判読できなくなって確認が必要となるケースや、転記の際の記入漏れなども発生してしまいます。この確認や転記作業は単に時間のムダだけでなく、トラブルの原因となり得ます。

また、クレームが発生した際には、定常作業を止めて、紙の書類探しに時間を割かねばならず、トレーサビリティの観点からも問題があります。

つまり、紙運用は「見えないコスト」と「品質リスク」の二重の負担を現場に強いているのです。

最初にデジタル化すべき3つの帳票

工場のペーパーレス化は、効果が出やすい帳票から着手することが成功の秘訣です。

すべての帳票を一度にデジタル化しようとすると、現場の混乱を招きかねません。まずは「毎日使う」「回覧が多い」「数字が多い」という特徴を持つ帳票から始めると効果を実感しやすくなります。

具体的には、「検査表」「作業指示書」「在庫伝票」の3つが最優先です。食品製造に関わるオイシス様は、一つの工場でタブレット導入と帳票のデジタル化をしました。記入漏れのアラートや入力データの自動集計を活用したことで、月間約100時間の削減につながっています。

ここで重要なのは、単に紙をスキャンして保存するなど形だけのデジタル化だけでは不十分だという点です。真のペーパーレス化とは、「入力〜共有」までの業務プロセス全体をデジタルに置き換え、最適なプロセスに見直すことです。製造現場のペーパーレス化で失敗するケースの多くは、「とりあえずペーパーレス化して、データ活用は後で考える」という段階的アプローチをとった場合です。

目的を明確にし、課題解決につながるデータ収集を最初から設計することが、ペーパーレス化成功への近道です。

壊れにくい端末+クラウドで「現場で完結」させる

製造現場でタブレットを活用するなら、現場環境に耐えられる端末選びとクラウド連携が必須です。

一般的なタブレットは、粉塵や湿気、振動の多い工場環境で活用するには故障のリスクが伴います。一方、製造現場での使用を想定した「高耐久タブレット」は、耐衝撃や防塵・防滴といった性能を備えています。ノートパソコンとは異なり、立ったままでも操作できるため、現場を移動しながら作業記録を入力できる点が大きなメリットです。

耐久性の高い端末を使用し、現場でデータ入力、クラウドに即座に同期することで、「事務所に戻ってパソコンで入力する」という工程を完全になくすことができます。

クラウドシステムとの組み合わせにより、リアルタイムで生産状況を把握でき、進捗の遅延をすぐに察知できるようになります。マネージャーは事務所にいながら全工程の状況を確認でき、現場に確認に行く時間も削減できます。

現場で入力、クラウドで即共有──この仕組みが、情報のタイムラグをゼロにし、業務スピードを劇的に向上させます。

小さく始める──対象を絞ったPoCと横展開

工場のペーパーレス化は、「小さく早く回す」ことが鉄則です。

決して「全部を一度に」やる必要はありません。むしろ、小さく始めて確実に成果を出し、段階的に広げていくアプローチが成功への道です。

まずは対象帳票を絞り、1つのラインや1つの工程でPoC(概念実証)を実施しましょう。たとえば、最も記入頻度が高い検査表だけをタブレット化し、1ヵ月間試験運用するといった形です。この期間に、現場作業者の使い勝手や実際の効果を検証します。前述のオイシス様の場合は、1工場で、帳票の1/4をデジタル化することから始めています。

次に重要なのが、現場ルールの整備です。具体的には、ファイルの命名規則(例:日付_ライン名_製品コード)、データの保管場所とフォルダ構成、閲覧・編集の権限設定などです。これらを明確にしておかないと、せっかくデジタル化しても「どこに保存したかわからない」「誰が編集できるのか不明」といった新たな混乱を生みます。

PoCで成果が確認できたら、他のラインや工程にも横展開します。この際、最初のラインで得た知見を活かし、さらに改善を重ねることで、全社展開時のトラブルを最小限に抑えられます。

大規模なシステム導入で失敗するよりも、確実に成果を積み重ねていくスモールステップが、現場の信頼を勝ち取り、工場全体のIT化を加速させます。

まとめ

紙の検査表・指示書をやめてタブレット×クラウドに切り替えることは、決して大がかりなプロジェクトではありません。

毎日使う帳票から着手し、現場で完結できる仕組みを作り、小さく始めて横展開する──このステップを踏むだけで、現場の生産性は確実に向上します。転記作業のムダが消え、情報共有がスピードアップし、品質トラブルのリスクも減らせます。

「いつかやろう」ではなく、今日から一歩を踏み出す。その一歩が、工場の未来を変えることにつながります。

お客さまがその1歩を安心して踏み出せるよう、KDDI まとめてオフィスがお手伝いいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。