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清掃・運搬が最初に取り組めるロボット化。少量多品種工場で効く"地味だけど強い"省人化

清掃・運搬が最初に取り組めるロボット化。少量多品種工場で効く"地味だけど強い"省人化

2026年02月26日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

少量多品種の製造現場では、清掃や運搬といった「段取り外」の仕事が熟練者の時間を奪っています。実は、作業工程そのものを変えずに効果が出やすいのが、清掃・運搬ロボットの導入です。設備改造が少なく「置くだけ・走らせるだけ」から始められるこの領域こそ、最初に取り組むべきロボット導入による省人化です。本記事では、成功のポイントと費用対効果の考え方をお伝えします。

少量多品種工場ほど「段取り外」の仕事が多い

少量多品種の製造現場では、製造品目の切り替えが頻繁に発生するため、「段取り替え」に多くの時間が取られます。しかし、それ以上に見落とされがちなのが、熟練者の生産性を下げる、「段取り外」の仕事です。

清掃、運搬、探し物、移動などの製造に付随する周辺作業が、熟練作業者の時間を奪っているのです。工場によっては、熟練者が本来の組立作業以外に、資材の運搬や工具探し、作業エリアの清掃に、1日あたり1〜2時間を費やすようなケースもあります。

これらの周辺作業を削減できれば、熟練者は技能を活かした"本業"に集中でき、品質向上や納期短縮といった、顧客満足度に直結する成果につながります。

導入しやすい2領域は清掃と運搬

工場のロボット化で最も導入しやすく効果が出やすいのは、「清掃」と「運搬」の2領域です。

工場のロボット化というと、ロボットアームを駆使した複雑な組立作業や溶接作業を想像しがちですが、実は清掃と運搬こそが、工程そのものを変えずに効果が出やすい領域なのです。設備への影響が少ない「置くだけ・走らせるだけ」から始められるため、導入ハードルが低いのが特徴です。

清掃ロボットの導入メリット

業務用清掃ロボットは、プログラムやAI制御に従って一定のルートと方法で清掃を行うため、人手による清掃に比べてムラがありません。清掃の質が一貫し、特に広範囲や複数フロアを持つ施設でその効果がより顕著に発揮されます。

清掃ロボットは24時間いつでも稼働できます。人がいない時間帯に清掃を済ませておけるため、日中の業務を妨げることなく、効率的に現場をきれいに保てます。また、家庭用に比べて長時間運転や大容量のごみ収集が可能で、業務用途に特化した設計となっています。

運搬ロボットの導入メリット

従来人手で行われてきた工場内での資材・部品の運搬も、無人搬送車(AGV)や自律走行搬送ロボット(AMR)の登場により、自動化が進んでいます。

AGVは、製造ライン上の工程間や倉庫と製造ラインの間をつなぎ、モノの搬送を自動化することで現場を支援します。モノの搬送を人手で行っている現場では、本来の業務を中断して移動に時間を割くことが、製造ライン全体の生産性を低下させる要因となっているケースが少なくありません。

AMRは従来のAGVから進化し、ラインテープなしでも自律走行できる協働ロボットです。センサーを使って周囲の状況を把握し、障害物や人がいる場合には迂回・停止する機能を備えているため、既存の製造ラインにもレイアウト変更なしで導入できます。

ある企業では、複数棟にAMRを配備して搬送を自動化したことで、作業者の負担を大幅に軽減できました。清掃と運搬のロボット化は、工程変更が不要で、すぐに効果が見える「スモールスタート」に最適な領域なのです。

成功条件は「通信・安全・現場ルール」

清掃・運搬ロボットの導入成功には、「通信環境」「安全性」「現場ルール」の3つが不可欠です。

1. 通信環境の整備

ロボットの導入には、Wi-Fiなどの通信環境が必須です。AMRは制御システムと常に通信し、最適経路を判断しながら走行します。また、清掃ロボットも稼働状況の確認やリモート管理のために、4G/LTEまたはWi-Fi接続が必要です。

工場のデジタル化は段階的に進めるのが現実的です。まずペーパーレス化でタブレットとWi-Fiを導入し、その通信インフラを活用してロボットを導入するという流れが、投資を無駄にしない賢い方法です。

2. 安全性の確保

ロボットが人と同じ空間で動くためには、安全対策も不可欠です。AMRは、障害物や人を検知して停止・迂回する機能を備えていますが、それでも現場のルール整備が必要です。

例えば、ロボットの走行経路に物を置かない、ロボットが稼働する時間帯のルール、緊急停止ボタンの設置と使用方法の周知といったルールを明確にし、現場作業者に浸透させることが、安全な運用の前提となります。

3. 運用設計と現場ルール

ロボット導入後の運用設計も重要です。清掃ロボットであれば、清掃ルートの設定、充電タイミング、メンテナンススケジュールなどを事前に決めておく必要があります。

運搬ロボットの場合は、運搬の優先順位、待機場所、複数台運用時の制御などを設計します。

また、導入前にトライアルサービスを利用して、実際の現場で試運転することも重要です。場合によっては、段差をなくすなど導入箇所のレイアウトの見直しを実施する必要もあります。

通信・安全・ルールの3つを整えることで、ロボットは「導入して終わり」ではなく、「現場に定着して成果を出し続ける」存在になります。

費用対効果は人件費"だけ"で計算しない

ロボット導入の費用対効果は、人件費削減だけでなく、時間創出・品質向上・安全性向上まで含めて評価すべきです。

ロボット導入の費用対効果を考える際、「何人分の人件費が削減できるか」という視点だけで判断しがちですが、それだけでは真の価値を見逃してしまいます。

時間の創出

清掃や運搬をロボットに任せることで、熟練作業者が本来の業務に集中できる時間が増えます。この「創出された時間」を、品質改善や技術開発、新人教育といった付加価値の高い活動に充てることができれば、その効果は人件費削減以上のものとなります。

品質の向上

プログラム通りに動く清掃ロボットは、作業のムラがなく安定した品質を提供します。人手による清掃では、担当者によって品質に差が出ることもありますが、ロボットなら一貫した清掃品質を維持できます。

また、運搬ロボットも±5mmレベルの位置精度を実現しており、精密部品の搬送においても高い品質を保てます。

安全性の向上(労災のリスク低減)

重量物の運搬は、腰痛や転倒といった労災リスクを伴います。運搬ロボットを導入することで、こうしたリスクを低減し、作業者の安全を確保できます。人身事故を未然に防ぐことができれば、それ自体が大きな価値です。

総合的な評価

初期投資には、ロボット本体の購入費用、設置費用、運用コスト(メンテナンス、消耗品交換)などが含まれますが、長期的には人件費削減や作業効率向上により、コスト削減効果が期待できます。導入前に詳細な費用対効果分析を行い、初期投資の回収期間を算出することで、適切な投資判断が可能になります。

人件費だけでなく、時間・品質・安全という3つの無形資産を加えて評価することで、ロボット導入の真の価値が見えてきます。

まとめ

清掃・運搬ロボットの導入は、製造現場の「地味だけど強い省人化」の第一歩です。工程そのものを変えずに効果が出やすく、設備改造が少ない「置くだけ・走らせるだけ」から始められます。

成功のためには、通信環境の整備、安全性の確保、現場ルールの策定が不可欠です。そして費用対効果は、人件費削減だけでなく、時間の創出、品質向上、安全性向上まで含めて総合的に評価しましょう。

少量多品種工場こそ、熟練者の時間を本業に集中させることが競争力の源泉です。清掃・運搬ロボットで周辺作業を自動化し、工場のIT化を次のステージへ進めませんか。

KDDI まとめてオフィスでは、現場の省人化に寄与する搬送・清掃ロボットのご提供はもちろん、走行の生命線となるネットワーク構築にも力を入れています。導入計画の最初の一歩から、安定稼働を支える環境づくりをお手伝いいたします。まずは一度、ご相談ください。

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。