ホームThink with magazine働き方改革
働き方改革で残業(時間外労働)はどう変わる?法改正の内容や残業手当の計算方法を解説

働き方改革で残業(時間外労働)はどう変わる?法改正の内容や残業手当の計算方法を解説

2021年01月29日掲載(2023年11月02日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

時計で労働時間を示している写真

働き方改革で打ち出された残業の上限規制によって、企業にどのような影響が出るのでしょうか。この記事では、働き方改革における残業規制の具体的な内容や中小規模の企業に求められる取り組みについて解説します。働き方改革による残業規制について理解を深め、自社で適切な対応を取りましょう。

目次

柔軟な働き方を実現するなら、KDDI まとめてオフィスにおまかせください

そもそも残業とは法定労働時間を超える労働のこと

一般的に、定時を超えた場合を「残業」と呼ぶケースが多いですが、実際には、残業にどのような定義があるのでしょうか。

労働基準法では、1日8時間、週40時間の労働時間を「法定労働時間」と定めています。これにより、法定労働時間を超えた分の労働時間は、すべて残業と定義できます。残業が発生した場合、企業は従業員に対して残業代を支払わなければなりません。

働き方改革では残業時間が上限規制されてい

働き方改革の推進により、企業における残業時間に上限が設けられます。ここでは、働き方改革の前後で残業時間に対する規制がどのように変化したのかについて解説します。

改革前は法律で残業時間が規制されていなかった

働き方改革が行われる前から、「残業は月45時間まで」「年360時間まで」と目安となる上限が設けられています。しかし、罰則が設けられていませんでした。そのため、ブラック企業などに行政指導が入ることはなく、仮に入ったとしても法的な措置に踏み切れない状況でした。

つまり、働き方改革が実施される前は、法律上で残業時間が規制されていないに等しい状況だったと言えます。

改革後は法的な罰則規定が設けられる

従来の問題点を踏まえ、働き方改革後は残業時間に明確な上限が設定され、規定から反する企業を厳しく罰せられるようになりました。

残業時間には、「所定時間外労働」と「法定時間外労働」が存在します。改革後に設けられた罰則規定の対象になる企業は、法定時間外労働を超過した場合です。繁忙期など、いかなる理由があっても、法定時間外労働を超えれば、企業は罰せられることになります。

所定時間外労働と法定時間外労働の違いは、以下で解説します。

所定時間外労働とは?

所定時間外労働とは、企業の就業規則や雇用契約などで決められた所定時間外の残業を指します。たとえば、所定時間が10時~18時で、19時まで仕事した場合、18時以降の1時間が所定時間外労働に該当する仕組みです。

法定時間外労働とは?

法定時間外労働とは、労働基準法に定められている労働時間を超えた残業のことです。1日8時間、週40時間を超えた残業時間が法定時間外労働としてみなされます。企業は、従業員が法定時間外労働を超えないように労働管理をする義務があると理解すると良いでしょう。

改革に伴って36協定の内容が一部変更された

36協定とは、労働基準法の第36条に記されている条項です。企業は36協定を締結した上で労働基準監督署に届出しなければ、社員に残業させられません。働き方改革に伴い、36協定も一部改訂されており、特別条項の上限も修正されました。詳細については、後ほど解説します。

法改正で残業が規制された理由とは?

そもそも働き方改革で残業時間が見直された背景には、どのような理由があったのでしょう。残業が規制された背景には、さまざまな理由があります。代表的な理由は、長時間労働による精神疾患患者の増加や過労死、自殺などが挙げられます。

会社に長時間労働を強いられた社員の中には、心身の健康を害して亡くなるケースが少なくありません。そこで政府は、労働者の健康面への配慮やワークライフバランスを確立する目的で、残業時間の上限や罰則による規制に本格的に乗り出しました。

中小企業は2020年4月から残業の上限規制が適用された

2019年4月から、すべての企業を対象に規制が実施されています。ただし、中小企業では労働環境の整備に一定の時間が必要と判断されたため、2020年3月までの猶予期間が設けられました。

したがって、中小企業に該当する企業では、翌月の4月1日から規制が適用されています。

規制後の残業時間の上限を確認

規制後の残業時間の上限は、改革前から決められている月45時間、年360時間がそのまま適用されています。企業が規制を守らなかった場合は、法に基づいて罰せられます。36協定で特別条項を結んでいる場合でも、規制後は以下の項目を前提に残業時間を管理しなければなりません。

以下の3項目は、規制後に適用された残業時間の上限ルールです。

・月45時間の超過が認められる期間は、1年で最大6カ月までとする

・時間外労働は1年で720時間以下とする

・時間外労働と休日労働の合計は、1カ月で100時間未満、2~6カ月平均で80時間以下とする

業種ごとに中小企業の定義が異なる

一般的に、中小企業は社員数や資本金などの規模により定義されますが、業種によって中小企業の定義が異なる場合があります。資本金の額や出資の総額もしくは常勤の社員数のどちらかが該当する場合は、中小企業として定義づけられます。

業種

資本金の額・出資の総額

常勤の社員数

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他(製造業・建設業・運輸業など)

3億円以下

300人以下

※参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

上限規制が適用除外・猶予される職種・事業もある

上限規制の除外または猶予が認められている職種や事業があります。具体的には、自動車運転に関する業務・建設業・医師・鹿児島県や沖縄県の砂糖製造業です。この章では、上限規制が適用除外・猶予されている職種・事業の猶予期間中や猶予後の対応について解説します。

規制除外・猶予される職種・業種1:自動車運転に関する業務

運送業やタクシー業などの自動車運転に関する業務は、上限規制が適用されるまで5年間(2024年3月31日まで)の猶予が認められています。特別条項付き36協定を結んでいる場合でも、時間外労働の上限は1年で最大960時間です。ただし、「時間外労働と休日労働の合計」や「時間外労働」に関する2項目については適用されません。

規制除外・猶予される職種・業種2:建設業

建設業は、規制が適用されるまでに5年間の猶予が設けられています。猶予後は、災害の復旧・復興事業を除き、すべての規制が適用されます。ただし、「時間外労働と休日労働の合計」の項目については適用されません。

規制除外・猶予される職種・業種3:医師

医師は、5年間の猶予が認められています。猶予後は、原則としてすべての規制が適用されますが、人命にかかわる特殊性の高い職種のため、具体的な上限時間については今後検討され、省令で定められる予定です。

規制除外・猶予される職種・業種4:鹿児島・沖縄県での砂糖製造業

鹿児島県や沖縄県の砂糖製造業は5年間の猶予が定められていますが、該当する規制は時間外労働と休日労働の合計に関する項目のみです。猶予後は、すべての上限規制が適用となります。

残業規制が除外・猶予される理由とは?

特定の職種や業種において残業規制が除外・猶予される理由は、業務の特殊性が関係しています。

飲食業や介護業、IT産業、教職員などは長時間労働が慢性化している状況です。長時間労働が慢性化している要因は、人手不足や深夜勤務、365日24時間稼働などです。長時間労働を解決するためには、時間をかけて労働環境の改善を行う必要があります。

したがって、先述した職種や業種は、長時間労働や労働災害が発生しやすい可能性が高い重点業種と判断され、残業規制の除外・猶予が行われることになりました。

働き方改革のために中小企業が取り組むべきこととは?

中小企業において、働き方改革を推進するためには、勤怠管理の見直しや残業時間の短縮するための制度作りが不可欠です。この章では、中小企業が働き方改革を行うために有効な手段を紹介します。

勤怠管理の見直し

長時間労働を減らすためには、勤怠管理の見直しが欠かせません。

具体的には、残業を希望する社員が申請し、会社に認められた場合にのみ残業ができる残業申請制を導入したり、残業時間数を人事評価に反映させたりする方法があります。また、週1回ノー残業デーを実施するなどの方法も良いでしょう。

勤怠管理システムの導入がおすすめ

勤怠管理を効率良く行う方法として、勤怠管理システムの導入がおすすめです。時間外労働の上限規制を守るためには、日頃から社員の労働時間を確認するための作業が欠かせません。勤怠管理システムであれば、社員が出退勤を打刻すると同時にシステム上で自動集計されるため、常に最新の労働時間を把握できます。

また、残業時間や有給休暇の取得日数・残日数などの管理も容易に行えるのでとても便利です。

残業時間短縮のための制度作り

残業時間を短縮させるためには、適切な制度を設ける必要があります。たとえば、マニュアルや標準作業書などを作成して手順や方法などを明確にすれば、誰が作業しても同じ時間内で終えられるようになるでしょう。

また、定時に仕事を終えた社員が退社しやすくなる環境整備も重要です。チームや部署内でタスクを共有すれば、業務の偏りを防げます。

残業代の上限規制で発生する問題とは?

企業にとって、残業が減れば人件費や経費などのコスト削減につながりますが、別の問題が発生するケースがあります。たとえば、残業代の減少によって社員の意欲が低下したり、管理職の負担が増えたりする可能性があるでしょう。

残業代が減って社員の意欲が低下する

残業代が減れば、社員の意欲が低下するだけでなく、生活費が不足する問題につながることがあります。住宅ローンの返済や子どもの教育費などの金銭的な悩みを持つ社員を残業代が支えているケースもあることを、理解しておかなければいけません。

管理職の負担が増す可能性がある

残業時間を削減できても、業務量が減るわけではありません。当然、残業代が発生しない管理職にしわ寄せがくるため、休日出勤や仕事を自宅に持ち帰る頻度が増えるなど、これまで以上に負担が増す可能性があります。

解決策:残業を社員に還元する方法を紹介

先述したとおり、残業代の減少は社員の仕事への意欲や作業効率につながる可能性があります。これを防ぐためには、福利厚生の改善や賞与・手当を支給するなど対策をとって社員のモチベーションアップを試みることが大切です。

福利厚生を手厚くする

残業代の還元として、福利厚生を手厚くする方法があります。福利厚生を充実させて社員のモチベーションを高めるためには、社員が利用したいと思える内容の福利厚生を考える必要があるでしょう。

たとえば、人気の飲食店を誘致して社食を充実させたり、スポーツジムや飲食店、宿泊施設で利用できる社員割引を行ったりするのが効果的です。

福利厚生アウトソーシングサービス「まとめて福利厚生」のご案内はこちら

賞与や手当をアップする

残業代が社員の家計を支えているケースも少なくありません。残業代の減少を穴埋めするためには、賞与や手当をアップさせるなど、社員にとって目にみえる形で還元したほうが満足感を得やすくなります。

企業としては、上限規制によって浮いた残業代を社員に還元すれば、社員のモチベーションがアップにつながるのがポイントです。社員の意欲向上によって業務効率の向上も期待できるでしょう。

実際に問題を解決した事例を確認

ここでは、実際に問題解決に至った大手システム会社の事例を紹介します。大手システム会社では、年中無休での稼働が不可欠な業種のため、慢性化した長時間労働の解消が課題とされていました。

経営陣の主導のもと、有給取得率のアップや残業時間の削減目標を達成したチームや部署などに特別ボーナスを支給する、一律で残業代を固定支給するなどの施策を実施したところ、社員の意識改革につながり、業務効率アップのための行動に積極性がみられるようになったそうです。

改正後の残業代の計算方法を確認

改正後は、残業代をどのように計算すればいいのでしょうか。ここでは、具体的な残業代の計算方法について解説します。

残業代の計算1:法定時間外労働の時間を把握する

法定時間外労働時間を把握したうえで計算する方法が最もシンプルでわかりやすいです。

フルタイム勤務の社員の場合は、休憩時間を除いた1日8時間、週40時間を超えた労働時間を出します。それぞれの合計を合算すれば、法定時間外労働の時間を割り出せるという仕組みです。ただし、フレックスタイム制などの労働時間が変動するケースでは使用できないので注意しましょう。

残業代の計算2:法定時間外労働の時給を計算する

次に、時給の計算を行いましょう。「月給(円)÷1カ月あたりの平均所定労働時間数(時間)」の計算式を使用すれば、時給を簡単に計算できます。

ただし、交通費や扶養手当などの各種手当、賞与などは残業代に含まれないため、月給から差し引いておかなければなりません。雇用形態が時給制の社員の場合は、契約書に記載の時給をそのまま使用できます。

残業代の計算3:残業代を算出する

時間外労働時間数、時給の計算が完了したら、「時間外労働の時間数(時間)×時給(円)×割増率」の計算式を用いて、残業代を割り出します。割増率とは、時間外労働で上乗せされる割合のことです。法定労働時間を超えた残業を計算する場合、25%を計算式に当てはめて算出しましょう。

ただし、残業の種類によって割増率が異なる場合があるため、計算前に必ず確認してください。

残業の種類によって割増率は違う

残業代は、上述したように「時間外労働の時間数(時間)×時給(円)×割増率」の計算式によって算出できます。ただし、割増率は残業の種類によって異なるため、該当する残業の種類を確認したうえで適切な割増率を使用する必要があります。

残業の種類による割増率の違いを下表にまとめたので、確認してみましょう。

残業の種類

割増率

法定労働時間を超えた残業

25%

深夜労働

休日労働

35%

月60時間を超えた残業

50%

中小企業の場合、従来は割増率が50%でしたが、改正後は25%での算出が据え置かれています。上記の「業種ごとに中小企業の定義が異なる」の項目で記載した表に該当する中小企業は、残業代を算出する際は割増率25%で計算しましょう。

まとめ

残業の上限規制により、企業における長時間労働の解消につながります。ただし、残業時間を削減するだけでなく、社員への還元についても配慮が必要です。働き方改革に合わせて勤怠管理を効率よく実施するには、クラウド型の勤怠管理ツールの導入や、これを利用するためのスマートデバイス、環境整備を検討しましょう。

LINE WORKS with KDDI と、勤怠管理ツールの連携事例はこちら

KDDI まとめてオフィスでは、柔軟な働き方の基盤となる通信環境の構築・整備や、ビジネス用スマートフォン、タブレット、パソコンなどのスマートデバイス、セキュリティサービスなど、あらゆるソリューションをワンストップでご提供しています。働き方改革推進やテレワークの導入、さらなる快適な環境の実現をご検討中なら、まずはKDDI まとめてオフィスにお気軽にご相談ください。

KDDI まとめてオフィスにおまかせください

カテゴリ:
ラベル:

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。