採用競争が激化する中、給与だけでなく「働きやすさ」は企業選びの基準の1つになっています。しかし、どのような福利厚生が従業員エンゲージメントや定着率の向上につながるのか、判断に迷う企業経営者や人事担当者の方もいるでしょう。福利厚生を導入するだけでは離職防止には結び付かないため、制度の設計が重要です。
当記事では、福利厚生と離職率・定着率の関係、離職率が高くなる主な原因、法定外福利厚生の効果、企業が導入したい福利厚生制度の具体例を紹介します。
従業員エンゲージメント強化には
福利厚生の充実を図ることをおすすめします
1. 福利厚生は離職率・定着率にどの程度影響する?

厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、2023年度の離職率は15.4%で前年度より0.4ポイント上昇しており、依然として多くの企業が人材の定着に課題を抱えています。こうした中、福利厚生は従業員の定着率を左右する要素として注目されています。
マイナビの「24年卒 入社半年後調査」では、新卒社員の55.9%が「就職先を決める上で重要だったもの」に「福利厚生制度に関する情報」を挙げており、「給与や賞与」に次ぐ2位でした。
また、マイナビの「転職動向調査2025年版」では、中途採用者の転職先決定理由として「福利厚生が整っている」と回答した割合が男性18.1%、女性19.2%で第4位となっています。
このように、福利厚生は採用段階で企業の魅力を高める要素と言えます。ただし、採用時に求職者が福利厚生を重視しているからといって、充実した福利厚生制度を設けること自体が必ずしも離職率抑制に直結するとは限りません。
出典:株式会社マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」
2. 従業員の離職率が高くなる原因

従業員の離職率が高くなる主な原因としてまず挙げられるのが、給与や待遇への不満です。給与水準が低い場合だけでなく、「給与と業務内容が見合っていない」「業績を正当に評価してもらえない」など不透明な人事評価制度への不満が離職につながりやすい傾向にあります。また、成長意欲の高い従業員ほど、自身の能力や個性、資格を活かせない環境に不満を抱きやすく、キャリアパスが見えないと早期離職につながる可能性があります。
次に、職場の人間関係の悪化も退職理由として多く挙げられます。特に女性は男性よりも職場の人間関係を重視する傾向が強く、ハラスメントの横行やコミュニケーションの不足が原因で退職に至るケースも少なくありません。育児や介護などのライフステージの変化に柔軟に対応できない状況も離職要因となります。
さらに、若年層では「労働時間や休日などの待遇に不満がある」ことが離職理由の上位です。過酷な労働環境が続くと、離職者の業務負担が残る従業員に集中し、体調不良やモチベーション低下を引き起こす悪循環を生むこともあります。これにより社内全体の雰囲気の悪化や連鎖退職を招き、結果として企業のイメージ低下や採用コストの増加といった経営面の損失にもつながります。
したがって、どれほど福利厚生が整っていても、労働条件や職場環境によっては離職を招く恐れがあります。制度としては存在しても、実際に使用されない福利厚生は離職率改善の効果が見込めません。離職の多くはコミュニケーション不足から発生することを踏まえると、まず健全なコミュニケーションが生まれる心理的安全性が保たれた組織を整えた上で、従業員にとって公平で使いやすい福利厚生制度を導入することが重要と言えます。福利厚生制度の内容は、従業員の生活や安心感を支えるものが望ましいでしょう。
3. 法定外福利厚生は離職率低下につながりやすい?
マイナビの「24年卒 入社半年後調査」によると、新卒社員が「現在の勤務先で充実していると思う福利厚生や勤務制度」として最も多く挙げたのは「通勤交通費の支給」で53.4%でした。一方で、それ以外の法定外福利厚生については充実していると回答した割合が30%を下回っており、福利厚生の不足が不満要因となりやすいことがうかがえます。特に新卒社員は成長意欲が高く、前述のとおりキャリアパスや成長支援制度の欠如が離職につながる恐れがあります。
また、「転職動向調査2025年版」では、中途採用者の応募意欲を高める制度として「退職金制度」「有給取得率向上施策」「社宅・住宅手当・家賃補助」「独自の休暇制度」「在宅勤務時の設備・通信費補助」など、生活の質を高める法定外福利厚生が上位に挙げられています。
こうしたことから、充実した法定外福利厚生の導入は従業員の満足度を高め、定着率向上にも寄与しやすい施策と言えます。ただし、離職防止効果を発揮するには、利用しやすい福利厚生制度を設計する必要があります。法定外福利厚生の導入にあたっては、アンケートなどで従業員ニーズを定期的に把握し、申請手続きの簡略化など従業員にとって利用しやすい方法を検討することが重要です。
出典:株式会社マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」
4. 企業が導入したい福利厚生制度の例

企業が離職率の低下や定着率の向上を目指す上で重要なのは、従業員の生活を支え、安心感や成長機会を提供する法定外福利厚生の整備です。自社で整備するのが難しい場合は、外部の福利厚生サービスを利用することも1つの方法です。ここでは、高い導入効果が期待できる代表的な福利厚生制度の例を紹介します。
4-1. 退職金制度
退職金制度は、従業員の長期的な安心を支える代表的な福利厚生の1つであり、制度の有無が企業の信頼性や採用力にも影響を与えます。
主な制度には「退職一時金」「確定給付企業年金制度(DB)」「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」「中小企業退職金共済制度(中退共)」の4種類があります。それぞれ特徴や従業員にとってのメリットが異なるため、企業規模や方針に沿って適した制度を選ぶとよいでしょう。
4-2. 独自の休暇・休日制度
独自の休暇・休日制度とは、法律で定められていない「法定外休暇(特別休暇)」を企業が自主的に設ける仕組みのことです。代表的な制度としては、結婚や出産、忌引きに利用される「慶弔休暇」、勤続年数に応じて与えられる「リフレッシュ休暇」、体調不良時に利用できる「傷病休暇」、社会貢献を目的とした「ボランティア休暇」などがあります。
法定外であるため内容や賃金の有無は企業が自由に設定できますが、就業規則などで取得条件や申請方法を明確に示し、周知不足による誤解や不公平感を防ぐ必要があります。
4-3. 育児・介護の両立支援制度
産前産後休業や介護休業など、育児や介護と仕事を両立するための制度は、労働基準法や育児・介護休業法によって定められています。これらの法定制度を踏まえ、さらに従業員が安心して働けるよう、独自の支援策を充実させるのも1つの方法です。
たとえば、企業内保育所の整備、ベビーシッター利用補助や保育料の一部負担、復職支援金の支給などが挙げられます。また、短時間勤務やフレックスタイム制度を小学校卒業まで延長する取り組みも増えています。従業員がライフステージに合わせて柔軟かつ安心して働ける環境は、定着率の向上に寄与します。
4-4. 研修・成長支援制度
従業員のスキルアップを支援する福利厚生は、人材育成の一環として効果的です。支援内容は業種や職種に応じて柔軟に設計できます。たとえば、ビジネススキルを学べる研修は若手社員の即戦力化に、英語や中国語などの語学スキル習得を支援する制度は国際競争力の強化に有効です。ヨガや料理教室など、リフレッシュを兼ねた学び支援も人気です。
従業員の成長を福利厚生として支援することで、従業員は自身のキャリアを主体的に描けるようになり、仕事への意欲や生産性の向上が期待できます。結果として離職防止や企業全体の競争力強化にもつながります。
まとめ
福利厚生制度は、企業の生産性や定着率を高める戦略的な施策です。企業が提供できる取り組みは多岐にわたります。自社の業種や従業員に合わせた制度を導入することで、満足度やモチベーションを高め、離職防止や採用力の強化につながります。
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