
採用活動を行っても、なかなか人材が集まらない企業が増えています。近年は、少子高齢化の進行や働き方の多様化、企業と求職者の間に生じるミスマッチなど、さまざまな要因が人材確保を難しくしています。特に中小企業では、賃金格差や労働条件の違いが採用に大きく影響し、人手不足の深刻化が目立ちます。
当記事では、日本企業が人手不足に陥っている主な原因を整理し、特に不足が顕著な業種や、企業が実践すべき人手不足対策のポイントを詳しく解説します。人材確保の課題に直面している経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
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1. 日本企業が人手不足に陥っている主な原因
日本企業では、近年「人手不足」を実感する場面が増えています。バブル期(1990年頃)と比較すると、2023年時点の全産業の欠員率自体はそれほど高くありません。しかし、求人充足率が低下し、採用活動を行っても人材を確保できない状況が続いています。結果として、必要な人員を確保できず業務が滞るケースが増加しているのが実情です。こうした背景を踏まえ、ここでは、なぜ日本企業が人手不足に陥っているのか、主な原因を3つの視点から解説します。
1-1. 少子高齢化が進んでいる

引用:厚生労働省「我が国の人口について」引用日2025/10/30
日本企業の人手不足の大きな要因として、少子高齢化の進行が挙げられます。団塊の世代がすべて75歳を迎えた2025年には、75歳以上の割合が全人口の約17.1%を占めており、日本社会の高齢化は顕著です。
出典:総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)5月確定値、2025年(令和7年)10月概算値) (2025年10月20日公表)」
厚生労働省の推計では2040年に65歳以上が全人口の約35%、2070年には人口が8,700万人を下回り、そのうち約39%が高齢者になると見込まれています。こうした少子高齢化の進行によって労働力人口は減少し、企業が確保できる人材はますます限られ、各産業で慢性的な人手不足が続くと考えられます。
1-2. 企業と求職者の間でミスマッチが起きている
日本企業が人手不足に陥っている背景には、企業と求職者の間に生じているミスマッチがあります。企業が求めるスキルや経験を持つ人材が少ない一方で、求職者にとって魅力的な労働条件や職場環境を提示できていない企業も多く見られます。特に中小企業では、賃金水準や福利厚生面で大企業との差が大きく、人手不足感が強まっています。
実際に、厚生労働省のデータでも、求人と求職のマッチングのしやすさは2010年代以降低下傾向にあり、採用に至らない求人が増加しています。こうしたマッチング効率の低下が、人材確保の難しさを一層深刻化させていると考えられます。
1-3. 若い世代を中心として仕事観が変化している

若い世代の仕事観は大きく変化しており、人材の流動化と多様化が進んでいます。マイナビの就職意識調査では、転職の理由に「給与が低かった」が3年連続で最多となり、経済的安定を求める傾向が強まっています。一方で、女性は「職場の人間関係」を、男性は「会社の将来性・安定性」を重視するなど、価値観の多様化も見られます。
出典:マイナビ「転職動向調査2025年版(2024年実績)」
学生の就職観においては「楽しく働きたい」「生活と仕事を両立したい」といった回答が増加しており、ワークライフバランスへの意識が高まっています。また、「転勤が多い会社」「ノルマが厳しい会社」を避ける傾向も強く、柔軟で安心して働ける環境を求める声が増えています。こうした意識の変化が、企業の採用や定着にも影響を及ぼしています。
2. 人手不足が激しい業種

人手不足が特に深刻化しているのは、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉業などの生活関連サービス分野です。これらの業種では、景気動向にかかわらず慢性的な人手不足が続いており、現場の負担増加し離職率が上昇するという悪循環が課題となっています。
加えて、情報通信業、建設業、運輸業といったインフラや産業基盤を支える分野でも、フルタイム労働者の確保が難しい状況が続いています。特に中小企業では賃金や待遇面での格差が影響し、採用の見通しが立たないケースが多くみられます。
正社員の人手不足割合(%)
| 順位 | 業種 | 2023年7月 | 2024年7月 | 2025年7月 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 建設 | 68.3 | 69.5 | 68.1 |
| 2 | 情報サービス | 74.0 | 71.9 | 67.6 |
| 3 | メンテナンス・警備・検査 | 68.2 | 65.9 | 66.7 |
| 4 | 運輸・倉庫 | 64.3 | 63.4 | 63.9 |
| 5 | 金融 | 60.9 | 61.2 | 60.7 |
| 6 | 人材派遣・紹介 | 58.9 | 49.4 | 60.5 |
| 7 | 家電・情報機器小売 | 44.4 | 52.8 | 59.7 |
| 8 | 精密機械、医療機械・器具製造 | 56.1 | 46.5 | 58.6 |
| 9 | 自動車・同部品小売 | 59.5 | 62.6 | 56.8 |
| 10 | 飲食店 | 66.3 | 59.8 | 55.9 |
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月)」
厚生労働省の分析によると、2010年代以降、企業規模を問わずほぼすべての産業で欠員率が上昇しており、特に「建設業」「宿泊業・飲食サービス業」では中小企業を中心に顕著な上昇が見られます。フルタイム労働者よりもパートタイム労働者の欠員率が高く、1,000人規模の企業では「運輸業、郵便業」、100~999人と5~99人規模の企業では「宿泊業・飲食サービス業」が上昇しているのも特徴です。
これらの業種では、単なる景気変動による一時的な不足ではなく、産業構造の変化や人口減少によって生じた「構造的な人手不足」が進行しており、今後も人手不足軽減までに時間を要すると考えられます。

引用:厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」引用日2025/10/30
3. 企業が人手不足を防ぐ方法とは
人手不足は、企業の存続にも直結する構造的な経営課題であり、「採用が難しい」といった一時的な問題として捉えるべきではありません。労働力人口の減少が進む中で、企業は限られた人材をどのように確保し、育て、定着させるかが重要です。
そのためには、「人材の確保・多様化によって採用の間口を広げる」「労働環境を整備して離職を防ぐ」「業務の効率化と教育訓練で少人数でも成果を上げる」という3つの柱を連動させる必要があります。以下では、この3つの柱に基づき、企業が人手不足を防ぐための具体的な取り組みを解説します。
3-1. より多様な働き手を雇用する
人手不足を軽減するためには、若年層以外の多様な人材に目を向けることが大切です。近年は、出産や介護を理由に離職した女性や、シニア層の再就職支援を行う企業もあり、正社員・フルタイム勤務に限定しない柔軟な雇用体制を整えることが求められています。たとえば、短時間勤務制度やテレワーク、復職制度を活用すれば、家庭と両立しながら働ける人材を確保しやすくなります。
また、外国人材の受け入れも重要な選択肢です。専門スキルを持つ人材を積極的に登用し、多様な文化や価値観を取り入れることで、企業の新しい成長機会にもつながります。副業人材の活用やリモートワークによる地方採用など、物理的な制約を超えた働き方の導入も効果的です。多様な働き手を受け入れる仕組みを整えることが、持続的な人材確保のポイントとなります。
企業が行う子育て支援の重要性や種類、また子育て支援に使える公的制度などについて知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
3-2. 労働条件をよりよいものにする
人手不足を防ぐには、社員が長く働きたいと思える職場環境づくりも重要です。まず給与水準や休日数の見直しなど競合他社よりも待遇を改善することで、採用力の強化だけでなく既存社員の離職防止にもつながります。特に若い世代ほど、給与だけでなく「休暇の取りやすさ」や「ワークライフバランス」を重視する傾向が強まっています。
また、福利厚生制度の充実も大切です。住宅手当や健康支援、リモートワーク制度、育児・介護休暇など、社員の生活を支える仕組みを整えることで、安心して働ける環境が生まれます。評価制度の透明化やキャリア支援など、成長を実感できる制度づくりも効果的です。労働条件を改善し、社員が「この会社で働き続けたい」と思える環境を整えることが、安定した人材確保に向けた重要な要素となります。
以下の記事では福利厚生が離職率や定着率にどれほど影響を与えるのか、また企業が導入したい福利厚生の例などを紹介しています。どのように福利厚生を充実させるべきか迷っている場合は、ぜひ参考にしてください。
3-3. リスキリングを行う
リスキリングとは、社員がこれまでの職務とは異なる分野の知識やスキルを新たに習得し、業務の幅を広げる取り組みを指します。人手不足が進む中で、既存の人材を有効活用し、生産性を高める手段として注目されています。特に、デジタル技術の進展によって一部の業務が自動化される一方で、新しいスキルを必要とする職種が増えており、社内でのスキルの再構築が重要になっています。
また、リスキリングに積極的な企業は、経営者の成長志向が強く、実際に売上高の増加や付加価値の向上につながる傾向が見られます。経営者が率先して学び、社員のスキルアップを支援する体制を整えることで、組織全体の意識改革と持続的な成長を実現できるでしょう。
出典:経済産業省「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」
3-4. 自動化やDXによる省力化・省人化を進める

自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、人手不足に対応するための有効な手段です。紙の書類や押印などのアナログ業務を電子化することで、作業時間やコストを削減し、社員の業務負担を軽減できます。たとえば、契約書を電子署名化すれば郵送や印紙代が不要となり、業務のスピードも向上します。また、AI-OCRやRPAなどの技術を導入することで、データ入力や帳票処理といった単純作業を自動化し、生産性を大幅に高めることが可能です。
生成AIをはじめとするAI技術の活用も進んでいます。顧客対応のチャットボットや、需要予測・在庫管理の自動化により、人手を増やさずに業務の効率化と品質向上を実現できます。DX化とAI活用を同時に進めることで、企業は限られた人材でも持続的に成長できる体制を築けるでしょう。
具体的な生成AIの活用事例やあらためてDXとはどのようなものか知りたい方は、ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。
まとめ
日本企業では、少子高齢化の進行や求職者とのミスマッチ、若者の仕事観の変化などが重なり、人手不足が深刻化しています。特に建設業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉業などでは慢性的な人手不足が続き、労働環境の見直しが急務です。
こうした状況に対し、企業は多様な人材の活用や柔軟な働き方の導入、待遇や福利厚生の改善、リスキリングによる人材育成、DXやAIを活用した業務効率化など、複数の施策を組み合わせて対応することが重要です。これらを総合的に進めることで、安定した人材確保と持続的な成長が期待できます。
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