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【前編】「まなびのミライ」セミナーイベント開催リポート ~現場の視点からICT教育の目指すべき姿と教育改革を考える~

教育・ICT

【前編】「まなびのミライ」セミナーイベント開催リポート
~現場の視点からICT教育の目指すべき姿と教育改革を考える~

2022年11月22日

KDDI まとめてオフィスが教育分野に取り組み始めて5年目になり、「地域を超えた学校同士で会話をする機会がほしい」「他校の事例を教えてほしい」といった声を多数いただいた。KDDI まとめてオフィスで何かできることはないか、と考え、2022年9月22日に「まなびのミライ~学校交流会~」を開催した。
学校行事の多い忙しい時期にもかかわらず、北は青森から、南は鹿児島まで全国各地より52校にご参加いただいた。

今回は、会の内容を前編・後編にわけて内容をお届けする。

目次

はじめに

特別講演:「GIGAスクール時代の『未来の教室』を考える」~教育改革のためのツールとしてICTの活用を~

経済産業省 産業資金課長・ Web3 政策推進室長(6月までサービス政策課長・教育産業室長・スポーツ産業室長)浅野 大介 様

<講演者プロフィール>
経済産業省 産業資金課長・ Web3 政策推進室長
(6月までサービス政策課長・教育産業室長・スポーツ産業室長)
浅野 大介 様

冒頭で浅野氏は、教育とDX(デジタルトランスフォーメーション)について次のように持論を述べた。学校教育は文科省が担当する分野だが、人にとっての『学習』の機会を提供するのは学校だけではない。特にこの国には分厚い教育サービス業の世界がある。そこを所管している経済産業省として、教育サービス業と学校教育現場がインターネットを介してシームレスに連携し、誰もがどこからでも、その人らしく主体的に学べる環境をどれだけ作れるか、という『未来の教室』プロジェクトを2018年から進めてきた。その結果が、教育とDXとを融合させた大きな基盤づくりとして文科省などと進めることになった『GIGAスクール構想』だ。わからないことはとりあえずすぐに調べ、そこから深く考える。子どもたちのこれからの知的活動も、まず"ググれ"、そして考える。だが、その入口にデジタルデバイスがなければそもそも始まらず、深まらず、広がらない。また、個々の子どもたちはその認知特性によって学習スピードも適した学習スタイルも違うはずだ。しかしそこに目をつぶり、同じ教室で同じメニューの教育を同じペースで仕方なく行っていたのがこれまでの近代教育である。今は、EdTechの力を活かして、一人ひとりの子供たちに合わせたトレーニング・メニューの提供が技術的には可能になった。そこで「まずパソコンを1人1台に」と、2019年度から文科省とともにGIGAスクール構想をスタートした。そして「1人1台」が今や当たり前の大前提になり、このようにセミナーイベントまで全国で日常的に開かれるなど風景は一変した。

教育DXとは

教育DXとは、『対面』『オンライン』『オンデマンド』『リアルタイム(ライブ)』という4つの学び方を『組み合わせ自在』にすることではないかと同氏は定義する。限られた時間を有効活用するという意味でも、ビデオやデジタル教材を組み合わせることにより、学校の先生方の働き方改革も進むことが期待できる。

「DXとは、学習者主体で時間・居場所・教材・指導者・支援者を『組み合わせ自在』の学習環境をつくるだけのことであり、この組み合わせ自在にするというのがキーワードです。先生が同じ内容の講義を5つのクラスで5回しゃべる時間があるなら、録画した講義ビデオを見させてから、たっぷりと深いディスカッションに当てるなら、先生も質疑の準備にもっと時間とれますよね」と浅野氏は力説する。

「そもそも、新しい知識を吸収する必要があるとき、先生の講義を繰り返し視聴したり、視聴スピードを上げ下げできるビデオによるオンデマンド学習は学ぶ側にとってもありがたいですよ。自分の目の前で先生がライブ講義をしてくれるよさはあります。しかし、それなしには学べないままだと、その生徒さんたちは、ライブ一辺倒の学校という空間を離れたら自分で生涯学び続ける術も習慣ももたない大人になってしまうのではないでしょうか。そこは『まなびのミライ』の重要テーマなはずです」(浅野氏)

DXといっても『学校がどう生まれ変わるか』のほうに本質があり、『デジタル活用』はそのためのただの道具だ。大きなトランスフォーメーション(X:生まれかわり)のためのちょっとしたデジタル活用(d:ちょっとしたデジタル)なのだから、Dがやたら大げさなものに映る「DX」というよりは、むしろ簡単なデジタル活用に過ぎない意味で「dX」なのではないか、とした。

特別講演の様子

日本の教育において『探求』を可能にするには

講演の後半に入ると浅野氏は、「ところで、今の日本の学校で『探究』は可能なのでしょうか?」と問題を提議した。

「探究学習というのは、『そもそも論』を問うて常識や通説にチャレンジすることを許してもらえる心理的安全性、事柄を抽象化する力、証拠を並べ論理を組み立てる力、そもそもの当事者意識といった4つの条件が揃わないと始まらない。日本の教育はその点が特に苦手なわけだから、乗り越える仕掛けが必要である」というのが浅野氏の見解だ。生徒が検索エンジンで調べられる、そして「目の前の先生以外の誰か」の見解もすぐに手に入れられる環境づくりとしてGIGAスクール構想が活かされることを期待してきたと言った。

「探究学習は、生徒に問いかける立場の先生たちが早く探究に慣れないと深まらないはずです。まず職員室において先生たちが『そもそも論』を口に出せる空気づくりは必須でしょうし、外部のさまざまな人がオンラインを通じて学校教育に日常的に顔を出してくれる、そして学校の常識や文化に『それって、なんですか?』というそもそも論を問いかけてくれる環境づくりがとても役立つはずで、そうなっていけば本望です」と浅野氏は力説して壇を後にした。

~後編 に続く~

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。