オフィス移転は、経営層から現場担当者まで多くの部署が関わる大規模なプロジェクトです。限られた期間で物件の選定や設計、引越し、行政手続きまでを同時進行で進める必要があるため、全体の流れを整理しておきましょう。スムーズな移転のためには平均8カ月〜1年程度の準備期間が理想とされていますが、「6カ月前」は旧オフィスの賃貸借契約で定められる「解約予告期間」であるケースが多く、これを逃すと二重家賃などのコスト超過リスクが発生する可能性があるため、特に注意が必要です。
当記事では、移転の準備から実行、移転後の各種手続きまでを時系列で整理したチェックリストを紹介します。誰が・いつ・何を行うかを明確にし、スケジュールに沿って進捗を管理すれば、スムーズで効率的なオフィス移転を実現できるでしょう。初めて移転を担当する方や複数拠点の統合を検討している企業のご担当者さまはぜひ参考にしてください。
働く「場」の最適化ならKDDI まとめてオフィスにご相談ください
1. 【流れ順】オフィス移転でやることのチェックリスト
オフィス移転は、多くの部門や関係者が関わる大規模なプロジェクトなので、全体の流れを把握し、時期ごとのタスクを整理して進めることが大切です。
一般的に、移転の6カ月前までにプロジェクトチームを発足し、移転の目的や新オフィスの候補地を決定します。続いて、3カ月前までにはレイアウト設計や什器・インフラの手配を進めつつ、施行業者との打ち合わせを重ね、具体的な準備に入ります。1カ月前には現オフィスの原状回復や住所変更のための準備を行います。移転当日は荷物の搬出入や現地で立ち会いを行い、移転後には、登記・行政機関・金融機関など各所への届出を忘れずに行いましょう。
下記に、時期ごとに必要なタスクを整理したチェックリストを用意しました。ぜひお役立てください。
| スケジュール | 新オフィスについてやること | 旧オフィスについてやること |
|---|---|---|
| ~移転6カ月前 | オフィス移転プロジェクトチームを発足する オフィス移転の目的を明確にする 移転先の物件を探す 移転関連の業者を選定する |
旧オフィスの解約予告をする |
| 移転6カ月~3カ月前 | 新オフィスのレイアウトやコンセプトを決める 新オフィスの什器やインフラを手配する 業者との打ち合わせや工事手配を行う |
不要な物品や書類の処分を始める |
| 移転3カ月~1カ月前 | 移転先の施主検査を行う 移転前に必要な各種手続きを進める 取引先への連絡や挨拶の準備をする ホームページやパンフレットなどの住所を変更する |
原状回復工事の日程調整を行う |
| 移転1カ月前~移転の当日 | 全社員へ作業事項や新オフィスのルールを周知する 搬出・搬入に立ち会う |
荷物の梱包やデータのバックアップ作業をする |
| オフィス移転後 | 本店移転登記手続きを行う
年金事務所へ所在地変更書類を提出する 労働基準監督署へ書類を提出する 税務署へ書類を提出する ハローワークへ書類を提出する 市区町村役場に書類を提出する 金融機関・郵便局で住所変更手続きを行う |
旧オフィスの原状回復完了後、オーナーまたは管理会社に引き渡す(鍵の返却) |
2. オフィス移転6カ月前までにやること一覧
オフィス移転が成功するかどうかは、プロジェクト初期の動き方で大きく変わります。移転の目的を明確にし、意思決定の土台を整えることで、スケジュールや費用の見通しが立ち、後工程の手戻りや追加コスト(特に二重家賃など)を抑えることができます。
オフィス移転の準備期間は規模や内容により異なりますが、平均8カ月~1年程度が必要とされており、物件探しを含めると約15ヶ月程度かかるケースもあります。
ここでは、賃貸借契約で一般的に定められる「解約予告期間」である6カ月前※までに完了させておきたい、移転プロジェクトの最重要タスクについて解説します。
※ 解約予告期間は、一般的に3~6カ月前とされています。正しい期間は、現在契約中のオフィス管理元へ直接お問い合わせください。
2-1. オフィス移転プロジェクトチームを発足する
移転プロジェクトを円滑に進めるためには、意思決定の迅速さと現場での実行力を兼ね備えたチーム編成にすることが重要です。責任者は経営層直轄の権限者とし、総務を中核に、情報システム、経理財務、法務、広報、人事、各事業部から人員を選びます。特に、部門横断で調整できる対人スキルを持ち、期限やコストの管理と実行力、数値に基づいて判断できる素養を備えた人材を選ぶと、プロジェクトがスムーズに進みます。
チーム発足後は週次定例と意思決定のルールを先に決め、議事録の様式とタスク管理表を用意します。必要に応じて外部のプロジェクトマネージャー(PM)や設計事務所に参画してもらうと、移転に関する専門性も担保できます。
2-2. オフィス移転の目的を明確にする
判断基準をそろえるため、オフィス移転の目的は定量指標で整理しましょう。オフィス移転のよくある目的としては、増員への対応、採用力やブランド力の強化、生産性の向上、働き方の最適化、コスト最適化、拠点の集約・分散、環境配慮の推進などが挙げられます。
生産性向上を目的とする場合は、「会議室不足の改善」「集中席比率の改善」などをKPIに設定し、採用力強化なら「主要駅からのアクセス時間」「共用部の品質」などに注力するとよいでしょう。目的ごとに「優先度」「必須条件」「望ましい条件」を明確にしておくと、物件選定やレイアウト設計の判断がぶれにくくなります。
同時に、将来的な人員計画やITインフラ方針も関係部門とすり合わせ、レイアウトや回線容量などの前提条件を早めに固めると、後工程の効率化につながります。
2-3. 移転先の物件を探す
物件探索は要件定義、市場把握、内見、条件交渉の順で進めることが基本です。
立地は、従業員の通勤動線や顧客からのアクセス、事業継続計画(BCP)の観点を踏まえて選びましょう。周辺に飲食店や郵便局などがあると利便性が高まります。周辺環境を確認すると同時に、エリアの治安も確かめます。
建物は、耐震性能、電力容量、天井高、空調の稼働時間、セキュリティ体制、床荷重といった基本性能を確認します。加えて、専有部の形状や窓面、共用部の印象、エレベーター台数などもチェックします。
物件を比較検討する際は、複数の仲介会社へ同条件で依頼し、賃料だけでなく原状回復条件やフリーレントの有無、入居可能日を含む総コストで評価することが重要です。
2-4. 旧オフィスの解約予告をする
オフィス移転では新オフィスの準備だけでなく、旧オフィスの対応も必要です。まず賃貸借契約の解約予告期間を確認し、違約金や原状回復の範囲、指定業者の有無を把握しましょう。新オフィスの入居時期と二重賃料の期間を試算し、必要に応じて予告期間や引渡日の調整を検討します。
解約通知は書面で発送し、到達日を記録します。同時に、原状回復工事の見積取得と条件確認を進めます。原状回復工事は多くの場合、賃貸借契約内でビルオーナーから指定された業者に発注が必要と定められています。指定がない場合は複数社から見積もりを取ることで、費用の適正化を図ります。取得した見積書を基に、工期や共用部の使用ルールについて管理会社と事前に調整を行いましょう。解約日からの逆算で搬出計画を作成し、鍵の返却までのスケジュールを決定しましょう。
2-5. 移転関連の業者を選定する
移転に必要な業者は、設計・内装、引越し、回線・ネットワーク、電話、セキュリティ、家具、旧オフィスの原状回復などさまざまな分野があります。業者を選ぶときは価格だけでなく、同規模案件の実績、提案の妥当性、工期順守力、品質管理、アフター対応の有無を総合的に確認しましょう。一度現地に来てもらい、動線や搬出入制約を把握した上で、当日の人員配置やリスク対策まで含めて提案を受けると安心です。
また、業者の利便性と専門性を比べ、社内リソースとの役割分担を明確にします。最終候補には詳細見積と工程表、変更管理ルールの提示を求め、総コストとリスクを踏まえて総合的に判断しましょう。
3. オフィス移転3カ月前までにやること一覧
オフィス移転が3カ月前に迫るこの時期は、新オフィスの設計や準備を本格的に始める実行フェーズです。物件決定後のレイアウトプランニングを開始します。各業者との綿密な連携の積み重ねが、当日のスムーズな移転の実現につながります。ここでは、オフィス移転3カ月前までの準備内容を解説します。
3-1. 新オフィスのレイアウトやコンセプトを決める
新オフィスのレイアウトやコンセプトを決めるにあたり、まずオフィス移転の「目的」に立ち返り、それに合った優先順位付けを行うことが重要です。採用強化なら来客エリアの印象を重視し、生産性向上なら集中と協働の切り替えを設計の軸に据えます。
次に、自社の働き方の実態を見える化しましょう。従業員へのアンケートやヒアリングを通じて、職種別の在席率、会議室の利用傾向、オンライン会議の頻度、来客動線を把握し、必要な席種(固定席・フリーアドレス・集中ブース・小規模ミーティングスペース・プロジェクトエリアなど)を割り出します。この情報を基に、レイアウト計画を立てていきます。
レイアウト計画は、物件選定と並行して移転の4カ月前〜3カ月前にかけて、専門業者と共同で進め、移転3カ月前に入る頃には、計画から具体的な設計書まで落とし込み、さらに什器やインフラの手配に進めます。
通路幅や席間隔、避難動線はビルの規約や安全基準に沿って設定し、将来の人員計画を踏まえて増席できる余裕を残すことが望ましいです。レイアウト案は複数作成し、サンプル席で試用すると判断しやすくなります。最終案には席数内訳、会議室構成、収納量、電源・無線APの配置、遮音や視線対策の方針を盛り込み、図面と要件表をひとまとめにして確定させましょう。
3-2. 新オフィスの什器やインフラを手配する
レイアウトが固まったら、納期を逆算しながら什器やインフラを手配します。特注家具や防音ブースなど納品まで時間がかかるものは早めに発注し、ITインフラは回線開通日を最優先で確保します。インターネット回線や電話回線の手配は、移転の3カ月前、遅くとも2カ月前までには申し込みを済ませておくことが推奨されます。必要な設備は下記を参考にしてください。
| 什器 | デスク・チェア(可動・固定)、ミーティングテーブル、カウンター席、収納(キャビネット・ラック)、ロッカーなど |
|---|---|
| 設備・備品 | 遮音パネル、ブラインド、シュレッダー、複合機、プロジェクター・モニター、ホワイトボードなど |
| ITインフラ | インターネット回線、社内LAN(有線・無線AP)、クラウドPBXまたは電話装置、セキュリティ機器(入退室・監視)、クラウド設定など |
| 生活インフラ | 電気・ガス・水道 |
生活インフラ(電気・ガス・水道)の新規契約手続きは、通常、移転の1ヶ月前〜数週間前を目安に連絡しますが、電気に関しては、移転先で消費電力の増大が見込まれる場合、コンセントや電圧の増設工事が必要になります。こうした増設工事の要否は、内装工事計画の段階(この時期)で確認し、業者との調整を行う必要があるので注意しましょう。
3-3. 業者との打ち合わせや工事手配を行う
オフィス移転を担当してくれる、引越・内装・ネットワーク・原状回復の各業者とともに、最新図面の反映状況や仕様変更の有無、当日の人員配置やバックアップ手順などを決めていきます。業者選定にあたっては、同規模案件の実績や品質基準、工期順守力、引き渡し後の対応(アフターフォロー)までを含めて評価しつつ、費用面も慎重に確認します。
費用の目安は、1坪あたり約40万円(償却のない保証金・敷金を含まない)を起点に考えます。これに加えて、敷金や契約関連で1坪あたり2~10万円、退去側の原状回復で1坪あたり5~10万円、大規模ビルでは1坪10〜20万円程度見込まれます。
ただし、実際の費用はビルの規定や工期、オフィスの状態により変動します。特に、建物の躯体に関わるB工事(ビル指定業者による工事)は、想定外のコストが発生することもあるため、事前に詳細を確認し、納得できる金額かどうかを見極めましょう。
また、この時期は移転後の金銭的な業務をスムーズに開始できるよう、銀行口座や法人クレジットカードの住所変更手続きの準備にも着手しておくと安心です。手続きには書類準備やリードタイムが必要な場合があるので、早めの着手で移転後の業務が滞らないよう備えましょう。
3-4. オフィスの物品や書類の仕分けを始める
3カ月前のこの時期は、主に不用品の洗い出しや廃棄計画の立案、および荷造りルールの策定時期であり、また、物品や書類を最小化する絶好の機会でもあります。
まず備品・在庫・サンプルを「持込」「処分」「売却・譲渡」「一時保管」に分類し、台帳で数量と保管場所を管理します。処分すると決まった家具や書類はリスト化し、専門の産廃業者に見積もりと回収を依頼します。
書類を最小化する場合は、先に保存年限と機密区分に基づいた廃棄ルールを設定します。その後、電子化の対象や方法、費用、スケジュールを明確化し、現場判断の迷いを防ぎます。書類の最小化を成功させる鍵は、トップダウンでのプロジェクト推進と、ルールの早期整備にあります。
ペーパーレス化は、クラウドストレージの導入とアクセス権限の整備、会議資料のデジタル配布、スキャナ運用の標準化から始めると定着します。オフィス移転をきっかけに、ぜひ検討しましょう。
これらの計画に基づき、実際の梱包作業は移転日の2〜3週間前頃から、使用頻度の低い備品や書類を優先して、段階的に進めましょう。業務への影響を最小限に抑えるためにも、計画的な準備が重要です。
4. オフィス移転1カ月前までにやること一覧
移転直前の1カ月前は、実行が一層本格化する時期です。旧オフィスでは原状回復工事の発注と調整を進め、契約上の義務を確実に果たします。新オフィスでは施主検査を行い、設計どおりに仕上がっているかを細部まで確認します。また、取引先への挨拶状や住所変更の準備もこの時期に完了させましょう。
最終チェックと社外周知を丁寧に進めることが、トラブルのないスムーズな移転につながります。
4-1. 原状回復工事の依頼を済ませる
原状回復工事とは、退去時にオフィスを入居前の状態に戻す工事を指し、契約終了日までに完了させる義務があります。工期が延びて退去日を過ぎると追加賃料が発生する場合があるため、移転日から逆算し、1カ月前までに工事業者との契約調整や発注を済ませるのが理想です。なお、実際の工事は旧オフィスから物品をすべて運び出した後(退去日以降)に着手されます。
先の段落でも説明したとおり、原状回復工事の費用相場は1坪あたり5万~15万円程度が一般的ですが、ビルの仕様や内部造作が多いなどの要因によっては、20万円を超える例もあります。また、事業用契約における「特約」の存在にも注意が必要です。特約により通常損耗(経年劣化、日焼け、家具跡など)の修繕も借主負担となっているケースが一般的なので、見落としてしまうと想定外の費用が発生することになります。
原状回復工事における金銭トラブルを回避するためには、契約の確認と、関係各所とのすり合わせにより、適正化を行うことが重要です。
4-2. 移転先の施主検査を行う
施主検査は、新オフィスの内装工事や設備が計画どおりに完成しているかを確認する最終チェックです。施工業者が工事を終えた段階(引き渡し前)で行い、設計図や仕様書と照らし合わせながら、仕上がりに不備がないかをひとつずつ確認します。
重点的に見るべきポイントは、図面との整合性、壁や床の仕上げの精度、照明の明るさ、空調やコンセントの位置、家具の配置バランス、配線やLANケーブルが通行の妨げになっていないかなどです。ドアの開閉や鍵の動作確認、トイレや給湯室の水回りも忘れずにチェックしましょう。
不具合が見つかった場合は、引き渡し前に必ず修正を依頼し、写真付きで是正報告を受けておくと安心です。この段階で不備を見逃すと、入居後に追加費用や業務支障が発生する恐れがあります。検査は複数人で行い、チェックリスト形式で記録を残すと、抜け漏れを防げます。
4-3. 取引先への連絡や挨拶の準備をする
取引先への移転連絡は、信頼関係を保つ上で欠かせないビジネスマナーです。移転のお知らせは、遅くとも移転の3週間~1カ月前までに届くよう、発送準備と手配を完了させます。
まず、新住所・電話番号・FAX番号・代表者名を正確に記載し、送り先リストを整えましょう。通知手段は、社長や部署宛の正式な挨拶状の郵送に加えて、実務担当者へのメール連絡やFAXを併用すると効果的です。
挨拶状では「平素のご厚情への感謝」と「今後の変わらぬお付き合いをお願いする旨」を丁寧に記載します。
4-4. ホームページやパンフレットなどの住所を変更する
住所変更は、オフィス移転に伴う最終調整のひとつです。Webサイトや印刷物に古い住所が残ると、顧客や取引先が誤って旧住所に訪問してしまう恐れがあるため、早めの対応が必要です。
まずは自社の公式ホームページの会社概要、アクセス情報、問い合わせなどの各種ページ、フッターなどに新住所・新電話番号を掲載します。Googleマップの登録情報、SNSアカウント、メール署名、採用ページなども見落としがないよう注意しましょう。また、ホームページ上では「移転のお知らせ」をトップページに一定期間掲示し、来訪者が新オフィス情報をすぐに確認できるようにすると親切です。
印刷物では、パンフレット・名刺・封筒・請求書・契約書類などが対象です。印刷物は発注から納品までに時間がかかるため、デザインデータの修正は早めに行い、旧住所の在庫が残っている場合は、破棄や上書き対応を検討することで、誤使用を防げます。
5. オフィス移転当日まで・当日にやること一覧
移転直前は、準備の最終確認を行う「仕上げ」のタイミングです。荷造り作業やデータの保護を終え、全社員への周知をもう一度確認します。当日は搬出入の立ち会いと現地指示、破損や傷のチェック、鍵の受け渡しまでを丁寧に進めましょう。
小さな抜けが後の手戻りにつながりやすい時期なので、事前に作成したチェックリストを活用しながら、プロジェクトメンバーで協力しながら落ち着いて対応するのが肝要です。
5-1. 荷物の梱包やデータのバックアップ作業をする
荷造りは「安全・軽量・識別しやすい」の3点を意識すると進めやすくなります。精密機器やガラス製品は気泡緩衝材で包み、段ボールの底はH貼りで補強します。重い書類は小さめの箱に八分目を目安に入れ、側面に中身・担当名・設置場所をラベルで明記すると、開梱がスムーズになります。引き出しや可動扉は養生テープで仮止めし、運搬中の飛び出しを防ぎましょう。
データ保護は最優先事項となるので、パソコン(PC)やサーバーは事前にバックアップを取り、電源オフとケーブル抜線は社員側で実施すると安心です。クラウド型のストレージやグループウェアをメインに使っている場合は、端末が万が一破損した時も復旧が早く、バックアップ作業の負荷を軽減できるのがメリットです。
5-2. 全社員へ作業事項や新オフィスのルールを周知する
移転当日までに行うべきことは、個人タスクと全社タスクを分けて明確にしておきましょう。
個人タスクは「梱包締切」「PCバックアップ完了」「個人保管物の処分」などがあり、締切を時系列で提示し、チェック欄付きの一枚資料として配布することで、実行率向上が期待できます。全社タスクは「システム停止時間」「電話・ネットの切替時刻」「来訪対応の一時停止」など、業務影響の大きい事項を優先して周知します。
新オフィスの運用ルールは、就業規則とは別に簡潔に定めます。たとえば、集中ブースの予約方法、オンライン会議のマナー、私物の保管場所や制約、機密文書の取り扱い、廃棄物の分別、災害時の集合場所などはあらかじめ定めておきましょう。初日は掲示物やデジタルサイネージで視認性を高め、1~2週間は定着期間として小さな改善を重ねると、現場に馴染みやすくなります。
5-3. 搬出・搬入に立ち会う
移転当日は、旧オフィスと新オフィスにそれぞれ責任者を配置し、連絡手段を常時確保します。作業開始前に動線と養生の状況を確認し、エレベーターや搬入口の利用時間、近隣への配慮事項などを改めて共有します。搬出作業時はフロアをブロック分けして順番に進め、残置物・廃棄物・搬出物の取り違えがないよう色ラベルで明確に識別すると効果的です。新オフィスではレイアウト図を壁に掲示し、ゾーンごとに受け入れ担当者を配置すると、荷物の設置が円滑になります。
PCや複合機などは通電テストを行い、ネットワーク・通話・印刷など、基本的な業務機能が問題なく稼働するか、「最低限の業務可否」をその場で確認できると安心です。搬入した荷物は、当日にすべてを開梱する必要はなく、初日の稼働に必要な最小限から順に整えるのがコツです。
5-4. 旧オフィスをオーナーや管理会社に引き渡す
旧オフィスの引き渡しは、搬出完了後に原状回復の仕上がりと清掃状態を確認し、鍵の返却をもって完了します。事前に退去チェックリストを用意し、照明、空調、ブラインド、壁・床・天井、コンセント、共用部との取り合いなど、契約上の回復範囲に漏れがないかをひとつずつ見ていきます。
鍵は合鍵も含めて全本数を回収し、立ち会いの上で返却します。セキュリティカードや入退室ログ機器の撤去 / 初期化が必要な場合は、その完了記録も併せて提出すると手続きがスムーズです。
最終的には、検針や郵便の転送手続き、残置物の有無、看板撤去の確認まで終えた上で、引き渡し確認書に署名し、正式な手続きを完了させます。退去の際は管理会社やオーナーとの穏やかなコミュニケーションを心がけ、最後まで丁寧な対応をすることで、良好な関係を保ったまま移転を終えることができます。
6. オフィス移転後にやること一覧
オフィス移転が完了した後も、各種届出や変更手続きが数多く残っています。特に法務局・税務署・年金事務所などへの届け出は、期限が定められているものも多く、対応の遅れが業務や法的手続きに影響する恐れがあります。それぞれの手続きを正確に行い、スムーズに新オフィスでの業務を開始できるようにしましょう。
ここでは、移転後に必要な行政・金融機関への主な手続きを解説します。
6-1. 本店移転登記手続きを行う
会社の本店所在地を変更した際は、法務局で「本店移転登記」を行います。この登記は会社法で義務づけられており、移転後2週間以内に申請しなければなりません。遅延すると、代表者個人に対し過料の対象になることもあるため、計画的に進めましょう。移転の前後で管轄する法務局が異なる場合(管轄外移転)、提出先は「旧所在地」の管轄法務局となるので注意してください。
必要書類は「本店移転登記申請書」のほか、定款の内容によって「株主総会議事録(または取締役会議事録)」などが必要です。登記完了後は、内容を確認するため「登記事項証明書」を取得します。この証明書は後の各種手続き(税務署・年金事務所など)で添付書類として求められるため、あらかじめ複数枚発行しておくと便利です。
登記が完了して初めて、新しい所在地での正式な事業活動が可能になります。
6-2. 年金事務所へ所在地変更書類を提出する
会社が社会保険に加入している場合、移転後は年金事務所に「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」(適用事業所所在地・名称変更届)を提出する必要があります。提出期限は移転から5日以内です。この届出は、健康保険と厚生年金保険の適用事業所情報の変更を同時に行うものですが、健康保険組合(協会けんぽ以外)に加入している場合は、別途組合へ手続きが必要になるため注意してください。
提出先は、移転前の所在地を管轄する年金事務所です。添付書類として本店移転が反映された登記簿謄本が必要となり、変更届の提出後には保険証の所在地欄も自動的に更新されます。電子申請にも対応しているため、オンラインでの提出を活用すれば手続きの効率化が図れます。迅速に対応し、社員の社会保険手続きが滞らないようにしましょう。
出典:日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き」
6-3. 労働基準監督署へ書類を提出する
労働者を雇用するすべての企業は、労働基準監督署に「労働保険名称・所在地等変更届」を提出する義務があります。提出期限は移転から10日以内です。労災保険などの労働保険に関わる変更内容を届け出ることで、適正な保険管理が維持されます。
書類の提出先は、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署です。添付書類として登記事項証明書の写しが求められる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
6-4. 税務署へ書類を提出する
税務署への手続きでは、主に「異動届出書」と「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。「異動届出書」は移転後できるだけ早く、「給与支払事務所等の届出書」は移転後1カ月以内に対応しましょう。
提出先は原則、移転前の所在地を管轄する税務署となります。ただし、移転により納税地が変更になる場合は、「異動届出書」については移転後の所在地を管轄する税務署に提出する必要があるので注意しましょう。
これらの手続きはe-Taxによるオンライン提出も可能です。添付書類は特に定められていませんが、登記事項証明書や新所在地の地図を添えるとスムーズに処理されます。
出典:国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
6-5. ハローワークへ書類を提出する
社員を雇用している企業は、ハローワーク(公共職業安定所)にも「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。提出期限は移転後10日以内で、提出先は移転後の所在地を管轄するハローワークです。
この書類では、会社名・所在地・雇用保険番号の変更などを届け出ます。提出の際には、労働基準監督署で先に提出した「労働保険名称・所在地等変更届」の控えと登記事項証明書の添付が必要です。このため、労働基準監督署での手続きを先に済ませておかなければなりません。
手続き完了後、求人票の内容は自動的に変更されないため、必要に応じて求人担当部署で内容変更手続きを行いましょう。ハローワークはe-Govに対応しており、オンラインでの提出が可能です。労働保険の情報が正しく更新されることで、雇用保険給付の手続きもスムーズに行えます。
6-6. 市区町村役場に書類を提出する
移転により市区町村が変わった場合は、旧住所と新住所それぞれの役場に届出が必要です。提出書類は「法人・事務所等異動届」「特別徴収義務者所在地等変更届」などです。
特に注意したいのが、住民税の特別徴収を行っている場合です。この場合、社員の住民税の徴収・納付先が変更になるため、必ず旧所在地の役所に特別徴収義務者所在地等変更届を提出します。届出を怠ると、税金の納付トラブルが起こることがあります。
また、法人住民税の関係で、市区町村税担当部署への異動届も必要です。都道府県税事務所と同様に、登記事項証明書や定款の写しを求められるケースがあるため、早めに準備しておきましょう。
6-7. 金融機関・郵便局で住所変更手続きを行う
金融機関や郵便局での住所変更も、事業運営に欠かせない重要な手続きです。取引銀行・信販会社・リース会社などへは、登記事項証明書と印鑑証明書を持参して住所変更を行います。オンラインバンキングを利用している場合は、インターネット上で変更できるケースもあります。
郵便局では「転送届(郵便物届出変更届)」を旧オフィスの受け持ち郵便局に提出し、旧住所宛ての郵便物を新オフィスに転送してもらいます。手続きから反映まで3~7営業日かかるため、移転の1週間前までに申請しておくのが理想的です。
さらに、宅配便の配送先登録や保険会社・クレジットカード会社の登録住所もこのタイミングで変更しておきましょう。取引先への請求書・納品書などの送り先を誤るリスクを防ぎ、スムーズに新オフィスでの取引を継続できます。
まとめ
オフィス移転は、単なる住所変更ではなく、組織の成長戦略や働き方の見直しにも直結する重要な経営判断です。移転後に快適で生産性の高い環境を整えるためには、初期段階で移転の目的を明確に定め、目的を軸とした計画立案とスケジュール管理が不可欠です。各フェーズでやるべきことを明確にし、業者・社内関係者・行政への連携を徹底することで、業務を止めずに円滑な移転が実現します。
KDDI まとめてオフィスは移転やオフィスリニューアルに纏わる豊富な知見と、KDDIのセキュアで高品質な通信をはじめとした多彩なソリューションで、お客さまの課題を解決し、よりよい「働く場」の実現をご支援しています。移転やリニューアルをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
| 関連ページ | : | 働きやすいオフィス環境の実現 |
|---|---|---|
| オフィス見直しシミュレーション |
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。








