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オフィスは『活動』をベースに設計しよう。「イトーキ」が考える、成果をあげるための空間づくり

オフィスは『活動』をベースに設計しよう。「イトーキ」が考える、成果をあげるための空間づくり

2022年11月10日掲載(2023年10月31日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

オフィスは『活動』をベースに設計しよう。「イトーキ」が考える、成果をあげるための空間づくり

フリーアドレス制の導入など、社内での働き方が見直されている昨今。どのようなオフィスのかたちが成果につながるのか、頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。
今回、お話をうかがったのは、オフィス空間をはじめ人をとりまくさまざまな空間・環境・場づくりをサポートしている株式会社イトーキ。「活動主体のオフィス」という新たな概念を紐解きながら、生産性を高める空間づくりについて同社のマーケティング統括部統括部長である二之湯弘章氏にお話しいただきました。

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日本のオフィスのスタンダード「島型対向」の課題とは

二之湯氏:
「これまでの日本のオフィスで主流だったのが、島型対向式のレイアウト。これは、机を向かい合わせにして並べて部署ごとに『島』をつくり、端に"ひな壇"のようなかたちで上席が座る配置のことを指します。国内ではおよそ7割以上の企業が、この島型対向式を採用しているそうです。
ただし、このレイアウト手法を採っているのは、世界で見ると非常に少数派。グローバルでは、組織図をそのまま反映したような島型対向式ではなく、フリーアドレスだったり、プロジェクトごとに席が用意されたりするレイアウトが主流です。今後、日本でも島型対向式は見直されていくことでしょう。」

では、島型対向式には、どのような課題があるのでしょうか。二之湯氏は、話します。

二之湯氏:
「業務が複雑・多層化している今、ひとつの課では、仕事が完結されなくなってきています。島型対向式は、『島』の中で仕事を回すことに最適化したレイアウト。隣の課でどのようなことが行われているのかわかりにくい構造なんです。
また、"ひな壇"にいる上司から叱責されると、部署全体にその様子が見えてしまう。そのようなプライバシーの問題もあります。」

よりよいオフィスを考える新たな概念「活動主体のオフィス」

島型対向式が主流の日本。しかし、二之湯氏は、「近年のコロナ禍で、オフィスレイアウトにも変化が起きている」と言います。

二之湯氏:
「コロナ禍でテレワークが推進されたこともあり、『自席をなくして、島型対向式からフリーアドレスに変えればいいのではないか』という議論が多くの企業で起こっています。しかし、一方で『本当に自席をなくしてもいいのか?』という問いも同時に生まれています。
この問題に向き合うときのポイントは、活動をベースに考えること。一体、自席で何がなされていたのか、その中身を洗い出すんです。会議の資料をつくる、メールのやり取りをする、ルーチンタスクを消化する......。自席をなくすか否かではなく、これらひとつひとつの活動をより取り組みやすいかたちに昇華するためにどうすればいいかを考えることが、よりよいオフィスをつくる近道なんですよね。
また、この考え方は、フリーアドレスなどの議論に限りません。例えば、会議室。そこで経営会議を行っていたのか、部下の話を聞いていたのか、アイデアをブレストしていたのか......。これらの活動をベースに考えると、よりよい会議室のあり方が見えてくるはずです。」

二之湯氏が重要だと語る、「活動をベースにしたオフィス」。では、具体的にどのようなオフィスになるのでしょうか。

二之湯氏:
「大切なのは、その企業の中で成果をあげるにあたって、最も大切な活動は何なのかを見極めること。例えば、研究職やエンジニア職などの割合が高い企業の場合、きっと必要なのは静かで集中できる環境。あとは温度管理を自由にできたり、好きな音楽を聴きながら作業できたら、なおいいでしょう。そう考えると、そういう企業では従来の島型対向式はフィットしないでしょうね。もしかしたら、一人ひとりに自室を用意するのがソリューションになるかもしれません。
一方、営業主体の企業で重要なのは、どんなときも連携し合うこと。そうすると、フリーアドレスでは不都合が生じるかもしれないので、近しいメンバーとのコミュニケーションが取りやすい島型対向式が適しているかもしれません。ただ、先ほど述べたようなプライバシーの問題や、一息つきたいときのリフレッシュスペースの確保など、島型対向式の課題を解消する設計もセットで考えるべきではあります。」

また、イトーキでは、このような活動主体の考え方で新たな本社オフィスをつくっています。その名も「XORK」。ここでの成果もお話しいただきました。

二之湯氏:
「XORKでは、人が行き交うコラボレーションスペースやコミュニケーションを交えながら個人ワークを行うことができるスペース、ガラスで仕切られた集中スペースなど、その活動が一番、生産性高く行えるデザインを考え各々のスペースを構築しました。どの場所で、どれだけ時間を過ごしたかをトラッキングしているので、そのデータをもとに自分の働き方を再編集していくことも可能です。会社側がオフィス空間をアップデートすることはもちろん、社員側もそれに合わせて働き方をブラッシュアップしていく流れが生まれればと考えています。
今のところ、社内アンケートでは、『生産性実感は上がっている』という回答も多く出ていますね。」

「活動主体のオフィス」を実現・機能させていくために

今後、活動主体のオフィスが展開されていったとき、果たしてどのような未来が待っているのでしょうか。

二之湯氏:
「きっと経営の思想やあり方を表した、企業理念の映し鏡のようなオフィスが増えていくのではないかと考えています。
これまでの日本のオフィスって、島形対向式の採用率でみてとれる通り、ある意味無個性だったのかもしれません。でも、これからはきっと会社にとってもっとも重要な活動が全面に押し出されたオフィスが生まれてくるようになる。例えば、一人で集中できるスペースも、一人で休むスペースも用意されているし、机には大きなモニターが3つも設置されている......。こういったオフィスは個の力をベースにした成果を重視する企業とわかります。一方で、チームで価値を生み出す企業ならば、島型対向式だけど、みんなが楽しく議論できたり、雑談をしたりするスペースがあるかもしれない。その企業の業種や価値の生み出し方によって、オフィスのあり方も変わってくるのです。」

また、機能を重視した設計面だけでなく、感性に訴える「デザイン」の要素も重要だと二之湯氏は話します。

二之湯氏:
「機能的で仕事がしやすいオフィスがあることは大前提。その上で社員の方々に出社してもらうためには、5感に訴えるデザインも重要です。というのも、居心地のよい自宅から出てくるわけですから、より快適でないと次第に使われなくなってくると思うんです。実際に採用のシーンではテレワークが可能かどうかで応募率が変わってきているといいます。たとえ、出社しなければならなくても、わざわざ行きたくなるオフィスがあるかどうかで全く結果は変わってくると思いますね。」

まさに今、転換が求められているオフィス。最後に、実際に活動主体のオフィスを実践・運営していくときにあたって、どのようなことが重要になるのか。そのポイントをうかがいました。

二之湯氏:
「まずおすすめなのは、モデルケースとなるメンバーを決めて、1日の中でどんな業務をしているのか、タイムスケジュールに落としてもらうこと。次にゴールに向かいそのひとつひとつの業務についてその重要度を議論する。そして、そのメンバー・チームにとって重要な活動を決めていきます。
その工程を営業や設計、総務など部署ごとに実施すれば、ある程度目指すオフィス像が見えてくると思います。

ただ、そういったプロセスを踏んでオフィスをかたちにしたとしても、つくって終わりにしてはいけません。もっとも大切なのは、社員の方々のマインドチェンジ。行うべき活動とスペースを関連づける事の重要性はずっと発信し続けなければなりませんし、『会社にとって、この活動はこうした意味を持つ』という説明も丁寧にする必要があるでしょう。そうしなければ、社員の方々も腹落ちしませんし、結果的に期待していたようなオフィスの使われ方がなされないといった事態も生じてきてしまいます。
『あのスペースは新たな価値を生み出す場所だから、今そこにいる人たちはきっと大事な議論をしているんだろう』『このスペースはとにかく集中する場所だから、今そこにいる部下は資料の最終仕上げをしているのかもしれない』など、その場所で行われる活動が社内のメンバー全体に周知されるようになると、企業全体の生産性も向上していくはずです。」

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