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『カッコよさ』だけではNG!? 目指すオフィスを具体化する方法とは

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建築家が考える、これからのオフィスvol.2

『カッコよさ』だけではNG!? 目指すオフィスを具体化する方法とは

2018年09月25日

建築家の成瀬友梨氏と猪熊純氏に、これからのオフィスデザインの在り方について伺うインタビュー連載2回目。
連載1回目は、オフィスデザインの依頼が増えている現状と背景、さらにオフィス改革を考えるうえで大切となる3つのポイントについてお聞きしました。
今回は、そのひとつである『目指すオフィス(目的・機能)を具体化する方法』がメインテーマです。オフィスの目的は『働ける空間』にほかなりませんが、そこから一歩進めて、『どのように働きたいか』を定め、その働き方を実現するためにはどんな機能を備えるべきか――。お2人の建築家の実績を一例にしながら、オフィス改革のプロセスについてお話しいただきました。

成瀬・猪熊建築設計事務所の建築家:成瀬友梨氏と猪熊純氏

成瀬・猪熊建築設計事務所の建築家:成瀬友梨氏(右)と猪熊純氏(左)

目次

まずはワークショップでのヒアリングやリサーチから

――お2人の実績の中に、グローバルな自動車部品メーカーである株式会社デンソー様の名古屋オフィス・デザインがあります。もともと、どんなオフィスづくりを求められましたか?

猪熊純氏(以下、猪熊)
デンソーさんの場合、発注いただいた段階で大まかな方向性についてリクエストがありました。新たなブランディングの一環として、社外との関わりの活性化と新たな価値創造を目指した、"発想・交流を加速させる"オフィス空間にする、という目的です。

デンソー名古屋オフィス

デンソー名古屋オフィス/社内・社外の人が自由に使えるフレキシブルなスペース。

――では、その目的を達成するためにまず最初に着手したのは、どのような点からですか?

成瀬友梨氏(以下、成瀬)
まず、さまざまな部門・立場の社員の方々から話を伺って具体的な要望を吸い上げることが重要だと考えました。もともとデンソーさんサイドでも9部署からなるプロジェクトチームの発足を検討されていたので、そのプロジェクトチームとのワークショップを行いました。

――ワークショップはどのように行うのですか?

成瀬
まずは社員の方々に、『理想のオフィス』を考えてもらうためのリサーチを行いました。「こんなオフィスにしたい」と、ほかの企業のオフィスなどの画像や特長を事前に収集してもらい、発表してもらうこともありますね。オフィスの写真に限らず、カフェや公共施設の画像なども発表してもらいました。そうすることで、利用者である社員の皆さんそれぞれが理想のオフィスのイメージを膨らませることができるのです。

猪熊
社員の方々は必ずしも皆同じイメージを新しいオフィスに求めているわけではありません。細かな機能はもちろんですが、空間のイメージも少しずつ違います。でも、ワークショップで各自の理想のオフィスイメージを共有することで、それぞれのリテラシーの差が縮まるんですよね。プロジェクト自体が円滑に進むようになると同時に、それまで潜在的だった要望が「こうしたい」と具体的なかたちとなって現れやすくなります。
『自分たちのオフィス』という意識を持っていただきながら、社員の方々に能動的にオフィス変革に参加いただけること、さらには意見を言い合える土台を作ることが具体化への重要な第一歩でした。

――デンソーさんの場合は、『社外との関わりの活性化と新たな価値創造を目指した、"発想・交流を加速させる"オフィス空間』に向けて、どのように具体化を進められたのでしょうか?

成瀬
拠点間に位置するサテライトオフィスでもあるので、オフィスを管理する常駐社員の使い勝手を大事にしながら、誰でも予約せずにピットイン感覚で利用できるようにしたいという視点から具体化がスタートしました。

――ピットイン感覚ということは、特定の席を設けないフリーアドレスエリアということですか?

成瀬
そうですね。フリーアドレスエリアは、異なる部署の社員同士が情報共有できることに加え、社外の取引先の方も使うことができるエリアです。夜間は閉まりますが、日中は自由に、どこまでも入っていけるようなオープンな雰囲気にしています。一方でトップレベルのセキュリティを導入したエリアも確保する必要がありましたし、フリーアドレスエリアと同じフロアに、主に出張者が1人で執務に集中できるようなエリアも欲しいという要望も出てきました。

猪熊
ワークショップを皮切りにして、さまざまな社員の方の意見をヒアリングする機会を重ねていくことによって、最終的には、さまざまな人数に対応するオープンな会議スペースや、クローズドな会議スペースのニーズが見えてきました。最終的にはリクルーティングの一環として会社説明会をしたり、製品の発表会、さらには会議室より大きなスペースで大勢集ってのアイデア会議や部署間コミュニケーションなど、イベントができるスペースも設けたいというところまで目指すオフィスを具体化することになりました。

要望を洗い出し、優先順位を設けて目的を明確化する

――社員の方々の要望を活発に吸い上げて具体化していくと、ずいぶんと盛りだくさんな印象を受けます。

成瀬
そうですね。部署ごとの働き方にフォーカスして、「どんな執務内容なのか」「業務中はどの部署の人とのやりとりが多いか」などのヒアリングを行うこともあります。ただ、いろいろな人から話を伺えば伺うほど、「このニーズとあのニーズ、同時に満たすのは厳しそう」という矛盾点も往々にして出てきます。

猪熊
それゆえ、各所から上がった要望をきちんと整理して、それぞれに「これはマストでやりたい」「これは"できれば"やりたい」といったように優先順位をつけ、クライアントも含めて皆で共有・納得しながら進めていくことが、プロジェクトを円滑に進めるうえでとても大切となりますね。その優先順位は、まずはじめに伺った目的に沿っているかどうか、目的を達成するための手段になっているか、という判断基準によって決められます。

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――まずは意見を集約し、矛盾点が出たとしても、優先順位をつけて目的に沿っているかどうか見極める、ということですね。

猪熊
はい。デザインを手掛ける建築家側が主導となって、まず「こんなオフィスはどうでしょう」とパースなり模型なりを複数みせて「これがいいかも」という進め方では、往々にしてもともとの目的が満たされず、非効率で誰の満足にもつながらない空間になってしまいがちです。そうではなくて、クライアントと建築家サイドが一緒になって目的を明確化していくことが、現在のオフィス空間づくりにとって大切になると感じています。

成瀬
さらに現状の課題やニーズだけでなく、"将来的なこと"をオフィス変革プロジェクトの初期段階で踏まえておくことも大切ですね。たとえば、現在のオフィスに大きめのキャビネットがあるとします。「これ、現在どのくらい使用していますか?」と伺って「あまり使っていない」となれば、新たなオフィスでは導入しないことになります。しかし、1つのキャビネットの有無だけで話を終えるのではなく、会社の方針として今後ペーパーレス化を図っていく計画があるかどうかという点についてクライアントと作り手側が共有することも大切です。その後のデザインに関わっていくことになりますから。

次回予告

オフィスを変える目的を明確化し、具体的なデザインへの落とし込みが始まります。次回は事例をもとに、『効率』と『多様性』を備えたオフィスづくりについてお届けします。

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